兎達を狩る
腹拵えも済んで、いい感じにエネルギーが生まれ、活力が漲って来たので、そろそろレベリングに励もうと思う。
昨日は、西の方に歩いて強い兎が居たから、今日も西に向かおうかな。それに、東から来る兎は毎回西に仕留めた獲物らしきを咥えて行くし。
じゃあ、そうと決まればすぐにでも向かおう。
はい、あれから30分後に兎6体に囲まれている西条由紀ですどうも。
いやー。人気者ってこんな感じなんだなー。
…………………恐怖なんですけど!?
この量の血走った目をしている凶悪兎に囲まれるとか!!これは練習どうこう言ってる場合じゃないなぁ。
仕方ない。静電気で一気に片を付けるしかない。
特に、あの他の兎より傷が多くて、二回り程大きいボス兎に要注意だ。
あれ歴戦の個体だよね?間違いなく歴戦の個体だよね!?他の兎と違って冷静にこっちを観察してるもん!戦い慣れしてるよ!
「牽制でくたばってくれても良いんだよ…!微風!微風!微風!!」
風壁を習得したと共に、何故か威力があがったっぽくて、何故か発射数が1から2に増えた微風で牽制する。
迫り来る風の刃を自慢の爪で切り裂こうとする取り巻き兎達。それを見て鼻で笑ったように反応してから、するりと避けたボス兎。
他の取り巻き兎達は爪ごと頚を跳ね飛ばされて直ぐに絶命したようだった。だが、ボス兎は不敵な笑みを浮かべて飛び掛かってきた。
「静電気!」
電気のエネルギーを脚と腕に集中させて、速度と攻撃力の上昇を行い、振り下ろされたボス兎の爪を弾く。
よろけたボス兎に追撃を入れようと地面を蹴って飛び上がり、回し蹴りを入れようとするも、ボス兎の脚が私の脚を受け止め、押し返す。
とんでもない力に驚きつつも、私は攻撃の手を一切緩めない。
「一発食らっとけー!」
「ギュアオォ……!」
拳の乱打の対応に切り替えたボス兎の隙を逃さずに意識外に追いやっていたであろう掴みという選択肢で攻撃を通す。
岩のように硬い毛皮の反撃に顔を顰めつつ、私は握る手の力を更に強めて、ささくれだった木の表面にボス兎を叩きつける。
そしてボス兎を木の表面から引き剥がすと、明後日の方向へとボス兎を勢いよく投げ飛ばす。
しかしボス兎は、通り過ぎに切り裂いた木の破片を掴み、それを足場にしてこちらに向かってくる。
なんです!?あの化け物!到底私が勝てると思わないんですけど!あ、でも少しあの余裕げな顔に焦りが滲んでる。やったー。
とはいえ、ボス兎の身体能力はやはり私よりも圧倒的に強い。静電気の力の1つである流れる微弱な電流もまるで効いていないようだし。
やはりここは新しい力。試してみるべきだと思うんですよ。………ね?風壁先生。