何時だって油断は大敵
「さぁ!実験台となりたまえー!白兎!」
「キュ…!」
じりじりと距離を詰めていく私をキッと睨みつける白兎。
私が一歩踏み出せば、白兎は二歩下がる。
そんな時間が、数秒間続いた。
「ええい!逃げるなー!微風!微風!!」
「キュオッ!?」
2つの風の刃を生み出して、白兎の脚を斬る。
そして蹌踉けた隙を逃さずに急接近し、喧嘩パンチを白兎の腹にお見舞いする。
帯電した拳が白兎の腹に当たると、ビリビリと白兎に電流が流れる。
そうして更に鈍った白兎は、慌てて爪を振りかぶるも、時既に遅し。
二発目の拳によって意識を刈り取られた白兎は地に倒れたのだった…!
「ギュッ……」
「キュォォォ………!!!!」
白兎がやられ、残るは灰色兎のみとなる。
その灰色兎は、体全体から赤色のオーラが立ち上っていて、心なしか一回り大きくなっていた。
そして、灰色兎の方へと向き直り、拳を構える。これで臨戦態勢────。
ガゴォォォォンン!!!!!!!!
灰色兎が地面を蹴った。ただそれだけの行為。それなのに、地面には特大のクレーターが出来ている。
更に、灰色兎が、最初倒した兎よりも、格段に速くなっている。
そして、攻撃力が尋常では無いくらいに上昇している。
「ギュォォア……」
「お怒りですかそうですか……!?」
「ガギュルルルル!!ゴヴァッ!」
一瞬にして私の背後へと移動すると、灰色兎はその鋭利な爪を振りおろし、私を斬り殺さんとする。
ガンッ!!!
だが、灰色兎の攻撃は私を護る謎の力によって弾かれる。だが、ポイントが大分減らされたようだった。
「体力の数値いくつ!?」
急いでステータスを開き、すぐさまに体力のステータスを確認する。
これ怠ったら死ぬ…!
体力 70
「…!!!!」
「ギュオア!!!」
一気に10も減らされた。
その事実に気付くと急に恐怖が心を支配した。あと7回攻撃を喰らえば、恐らく死ぬだろう。
だが、そんな恐怖に支配されていれば、本当になすすべ無くこのままやられるだろう。油断したばっかりに。
それは、凄く悔しい。
せめて、もっとマシな理由で死にたい。
今は、死ねない。
「キュロロロロロロロ…………」
灰色兎は私を嘲笑っているようだった。
それが、物凄く頭に来てしまって。
私はステータスの魔力の値を確認する。
魔力総量 5
かなり心許ない数値だ。
魔法使い曰く、微風が使用魔力3で、静電気が5。あと一回だけ、どちらかの魔法が使える状況。
まだ切れる様子の無いスタティックエレキは使わずに、ウィンドで牽制しつつ格闘を仕掛けて、なんとか押し込むか…。
でも、それだと先に私がやられるだろう。
何故なら、私はただの女子高校生だからだ。
確かにファンタジーな補正で兎を狩れているが、所詮は安全と文明の元ぬくぬく育った人間。
野生を生き抜いているこの兎達とは決定的な何かが違うのだ。
だが、私は今、生きるためにこいつを乗り越えなければならない。
その為の力はある。
「覚悟しなさい!灰色兎!貴方も倒して、私の住宅の材料にしてあげるわ!」
「ギュォォア!!!!!!」
私結構ヤバい事言ってる気がする!!