『この村で一番モテるのは俺ではなかったようです\(^o^)/』
エリーが俺の腕を例の怪力で引っ張る。ヤバイヤバイ、スーツがちぎれる。ただでさえボロボロだっつーのに。もしかして俺一生この服で生きて行くのか。
エリーも服が大破寸前で色々と危ない事になっているが…、本人も気にしてないならいいか。
中に入ると見た目より広く、味がある。俺が想像してたRPGなんかの酒場をそのまま再現したようでテンションが上がる。
本当に酒樽が積まれてんのか、村の荒くれ者が何とかやるやつだよな。
何人かもう先に飲んでいるようで、奥には人だかりが出来ている。
その中心には一際目立つ長身の男。ギリシャ彫刻みたいな整った顔をしていて正直直視できない。
村中の女性を取り巻きにしているかのようなモテっぷりだ。俺とは住む世界が違う。
その男はこちらに気がつくと白い歯をキラつかせながら笑顔を見せた。
「やあ、エリザベート。久々だね。見ない間にまた美しくなってる。」
「そうだな、ビクター。…、前は…今より美しくなかったという事か?
「そんなわけが無いだろ〜う!いつでも最高の輝きを見せている君じゃ無いか。」
「そ、そうか…。」
この男、やり手だ。かなりの。あのエリーさんが照れている。俺が言うと気持ち悪くなるセリフを当たり前のようにツラツラと。
「ところで、そちらのおチビさんは誰かな?」
「彼はアルテミス。例のモンスターを討伐したんだ。彼の呪文でな。」
「ぁ、え?俺も一応日本人男性の平均身長くらいはあるんですけどね、やっぱりこの世界だと皆高身長なんでそう見えるだけかも知らないですね。でもまあ日本では平均くらいなんでおチビでは…」
「元気が良いね、君はこの村に平穏を齎してくれた英雄だ。皆アイツを恐れて村の外に行く事ができずライフラインが瀕死状態だったのさ。本当にありがとう。」
「いやまあ、それほどでも…。」
ビクターと呼ばれるその男。俺は苦手なタイプだ。仲良くできそうもない。別にこれは嫉妬ではない。俺よりモテてるやつがいるから自信を無くしている訳ではない。
『おチビ』と言われた事が未だに引っかかっているだけだ。人の見た目に軽々しくあれこれ言う奴は大抵ろくでもないからな。
とは言え表向きには友好的な態度で接するのが社会人としての常識だ。
彼のキラースマイルを愛想笑いで返した。