『俺氏、奇跡的な力で死亡フラグ回避してしまうwww』
光が止んだと思うと次は砂埃に包まれる、咽せながらも目を凝らすとあの巨大なバケモンは地面にひれ伏せて息絶えていた。
この時俺は確信した、異世界チート系主人公になってしまったと。
「…君!!何者だ!!この敵を一発で倒すなんて…!!」
例の女騎士は砂埃の中から張り裂けんような大声で話しかけてくる。
「…いや、何すかね?転生主人公の特権的な…うまく説明できないんですけどなんか出しちゃいましたね。」
「…記憶喪失の旅人、君はもしかしてすごい勇者なんじゃないか!!」
血だらけのまま興奮してペラペラ喋る彼女に先程のポーションを飲ませる。少し回復したようだ、傷跡が少し発光してみるみる癒えていくのが見える。魔法みたいだ。
「もう少しこちらへ寄ってくれ。」
「え?あ、はい。」
女騎士は俺の頭を例のものすごい力でグイと引き寄せて頬にキスをした。
「私はお前に惚れたぞ、私を守った男なんてそうそういない。私はいつも誰かを守ってばかりだった。」
突然の事にどう反応すればいいかわからず固まってしまう。こういうのを軽くあしらっている諸々の男主人公すげー。
「…あの、気持ちは嬉しいんですけど。そもそも初対面だしまだここのこと知らないので、そんな事より色々教えてもらえたらなーって。」
「色々…教えて欲しいのか?やけに積極的じゃないか。」
出たよ、ほらこの勘違いパターン。勘弁してくれよ、ただでさえ女絡みないのにどう答えればいいんだよ。
「強いて言えば自分の歩むべき人生の正解について教えて欲しいです。」
「それは私といることだ、それ以外あるか?」
「…そうなんすかね。」
厄介な事になってしまった、俺が強過ぎるあまりに。今までの俺は弱過ぎるあまり厄介ごとに巻き込まれていたが、強過ぎるのも楽ではない。
「これからシュトーレ村に向かう、勇敢な君を歓迎しなくてはな。ほら、馬に乗れ。私の腰をちゃんと掴むんだぞ。」
「なんかもうどうなるか想像つくんで行きたくないですけど、腹減ったんで行きますか。」
「よし!出発!!いざシュトーレ村へ!!」
最初に比べると無駄にテンションの高い女騎士に振り回されながら馬に飛び乗った。あのポーション、アルコールでも入ってんのか?
今、何も考えられない俺はとにかく落馬しないよう祈ることにした。