女騎士『そんな装備で大丈夫か?』
「どうしたんだい?君。そんな装備で大丈夫か?」
「…ん?」
少し暖かくて柔らかい、春の香りを孕んだような風が通り抜けた。
そして目の前にはやけに露出度の高いコスプレイヤー。俺寝てる間にコミケにでも来たのか?でもこんな時期にそんな…。
「えっ、と。誰ですか…?」
「こっちが聞きたいよ、君がこんな場所で寝ているからだろ。ここは戦闘区域。生身の君がいて良いところじゃないよ。」
「…む……っ?!!?」
俺は全てを理解した。異世界に転生したんだ。転生というかトリップというかもう何でも良いけどそういう事だ。もう夢でも良いしなんなら夢だと思っている。何度も妄想したこの状況、楽しむしかない。
「とりあえず危ない、私の馬に乗るんだ。」
そこには現実世界で見た事のないような色をした筋骨隆々の大きい馬がいた。
蹴られたらひとたまりもないな。そもそも馬なんて乗った事無いし、暴れ出したらどうすんだ。
「あ、いや、平気です。馬よりも自転車派なんで…。」
「…?君は異国人か。ジ…テンシァなんて動物聞いた事がない。」
「あ、はい。そうですね、厳密に言うと違いますが。」
ヤバい、普通に人見知りを起こしている。アニメで見る転生主人公すげえな。あんなコミュ力俺にはない。普通に緊張している。初対面の女性と話すなんて…。
このままどっかに連れてかれる間、それなりの時間がかかると思うが何話せばいいんだよ。
「君面白いな、気に入った。」
その女騎士?は柔らかく微笑んで俺を見つめた。この数分間で気に入られるなんて都合が良過ぎる。あまりにも俺に都合の良過ぎる世界に来てしまった。しかし、この先どう転ぶかは誰にもわからない。
「遠慮せずに乗るといい。」
彼女は俺をひょいと抱き抱えると馬に乗せた。腕力どうなってんだ。いや馬怖え。