99
「ーーー中範囲攻撃魔法」
激しい光の氷柱が、激しく、タマ、家来を襲う。
「なっ?!?!」
タマは間一髪避けるが、その他大勢の家来達は、殆どが氷柱にやられ(生きている)、倒れ込んだ。
「ヨウナ、はいこれ。落し物」
飛行魔法を使い、空から降りて来たルナマリアは、赤い花の髪飾りを、ヨウナに手渡した。
「ルナマリアちゃん…!」
(マジで危なかったーー!!!俺様モラハラ残念イケメン男の初手!靴舐めさせ事件まで間一髪だったー!!!)
感極まるヨウナに、焦りのままに心で絶叫するルナマリア。
恐ろしい事に、これが本物の攻略対象なのだから、恐ろしい。
こんな恐怖で最低最悪の攻略対象を全員、ヨウナ1人に押し付けようとしていたと、本気で反省する。
でも実際目の辺りにして、本気で関わり合いになりたくない!と、再確認出来てしまった。
「貴様…!俺様の家来達はどうした?!言いなりにならないなら!死んでも場所を教えるなと伝えていた筈だ!!」
見ず知らずの奴隷の子供の為に言いなりになる気がしれないタマは、ルナマリア、瑞月がどちらに転ぶか分からず、言いなりになるなら連れて来て、フラン達同様に痛め付け、言いなりにならなければ、来させるなと命令していた。
「えーーと、こちらです」
ルナマリアは、チラリと、視線を向けた。
その視線の先にある光景を見て、タマは口をあんぐりと開けた。
「瑞月様、こちらでございます。お足元お気をつけ下さい」
「瑞月様、あちらが、愚主のタマでございます」
至れり尽くせりで瑞月に尽くす、タマの家来達。
「あーうん。あ、ねぇ、僕疲れたから、椅子になってよ」
「かしこまりました」
即座に四つん這いになり、人間椅子になる家来。
瑞月は、人間椅子になった家来に、足を組みながら腰掛けた。
「あのようになっております」
「何でそうなった?!」
ヒュルルルン。と、タマの目の前に急に現れる、黒い物体。
「なっ!?」
「トロン、魅力」
瑞月の呼びかけに、トロンは口を大きく開け、超音波を放った。
「っ!小賢しい!!」
が、腐っても攻略対象者、トロンの魅力は、効果が見られなかった。
瑞月のもう1匹の魔物使している魔物 トロン。
魅力を使う、近距離の空間移動の力を持つ魔物。
「そのヘンテコな魔物の力かー!!」
「こんな可愛いトロンに向かってヘンテコとかやめてよねー。ね、こんなにトロン、可愛いのに」
『ア、リ、ガト!ミヅキ』
トロンと無事契約してから、仲良く関係を築けているようだ。
「皆親切丁寧にこの場所教えてくれたよー」
家来達はさして強く無い。寧ろ雑魚いので、簡単に魅力にかかった。
魅力されれば、意のままに動いてくれる。
「トロンがいてくれて良かったー。私、拷問とかした事無かったから、程度が分からなくて困ってたんだぁ」
てへぺろ。並に軽く言うルナマリア。
「少しでも早く場所が見付かって良かったよ」
瑞月は笑顔で答えた。
ルナマリアは、杖を頭上に掲げると、呪文を唱え、杖を地面に下ろした。
「中範囲回復魔法」
地面を伝い走る光が、フラン達の傷を癒す。
「なっなっなっ!?回復、魔法っ?!しかも、中範囲だと?!」
僧侶でも無い魔法使いが回復魔法を使える事、それも、レベルの高い僧侶しか使えないと言われる中範囲の回復魔法。
何だかんだ、タマ本人は、ルナマリアの魔法を、守護の魔法しか見ていなかったので、きっちり見るのは、これが初。
「だ!だがな!例え傷が治った所で、俺様には奴隷契約があるんだ!!!」
タマはそう言うと、左手をかざした。
左手からは、青い光の魔法陣が浮かび上がっている。
「こいつ等は奴隷契約のせいで、俺様に逆らえば激しい痛みに襲われ、のたうち回り!最後には死ぬ!俺様に逆らう事は出来ないんだ!いいか!?こいつ等を守りたいなら、黙って俺様の言う事を聞き、素直にズタボロにされーーー」
「解除魔法」
即座に杖をかざし、奴隷契約という名の呪いを解くルナマリア。
「人身売買や奴隷契約は犯罪だよー」
「ななななな?!解除魔法?!?!奴隷契約をも解除する程の力の?!?!」
ことも無さげに言い放つルナマリアに対し、驚きまくるタマ。
「解除魔法って実は凄い高度な魔法らしいね」
「ルナマリアが自然に使うので、忘れてしまいそうになりますよね」
傷の癒えたレンが、瑞月の隣に立ち、同意する。




