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「とりあえず、ヨウナ達、どこへやったの?」
本題はそこ。
どう言った経緯で連れて行かれたかは分からないけど、やるべきことは、ヨウナ達をあの最低最悪モラハラ残念男から救い出す事。
「馬鹿か!こんな扱いされて、はい教えます!なんてなる訳ねーだろーが!!」
本来、ヨウナ達を人質とし、ルナマリア達も連れていこうとした。もしくは、今までされた鬱憤を晴らす為に、ここでボコボコにしようとしていたのかは分からないが、何にせよ、人質を盾にしようとしていたのに、聞く間も無く魔法を浴びせられ、言いたい放題馬鹿にされる。
「まず人の話聞けや!!顔見てすぐ魔法ぶっぱなすんじゃねーよ!」
「聞くだけ無駄だと思って…」
「ああ?!」
毎日毎回変に喧嘩を売られたら、またか。とも思う。
「は!言っとくが、こんな事されちゃあ!俺達は絶対に教えねーぜ!後悔するんだな!!」
ヨウナ達の居場所を教える気が無いと、ハッキリと拒絶する。
「成程」
ルナマリアは納得すると、杖の先端に魔力を集めた。
「なら、話したくなるように頑張って説得するね」
「ひっ!」
冷ややかな笑顔が怖い。
「ルナマリア、良いよ。僕がやるから」
そのまま、家来の胸倉を掴み、呪文を唱えようとした所で、瑞月はニッコリと、満面の笑みで、そう言った。
***
「はっは!俺様に逆らうからこうなるんだ!」
気分良さげに、高笑いしながら言い放つタマ。
首都アールレン内にある、何処かの倉庫の中。
「くっ…!」
タマの前には、傷付けられ、横たわるフラン、ジュリアス、レンの姿。
その周りには、沢山のいつもの灰色の服を着たタマの家来と、それとは別に、震えている、小汚い姿をした少年少女の姿があった。
「ぁ…あ…!」
1人の少年が、泣きながら、傷付くジュリアスに向かい、心配そうに手を伸ばすと、ジュリアスはそれを払った。
「止めろ…!余計な事すんな…!」
「あ…でも…っ!」
「おい!そこの奴隷!何をしてる!俺様に買われた奴隷の分際で!!」
ギャンギャンと吠えると、タマは指を鳴らした。
「!う、うわぁぁあああ!!!」
指を鳴らされたのと同時に、頭を押さえながら、その場でのたうち回る少年。
「主人に逆らう事がどうゆう事なのか、思い知れ!!」
「おい!止めやがれ!このクソ野郎っ!!」
傷付く体に鞭打ち、立ち上がるジュリアス。
「ふん!俺様に命令するな!」
タマが目配せすると、家来達はジュリアスを殴り、蹴りつけた。
「ぐっ!!」
抵抗せず、痛みに顔を歪める。
その様子を見ながら、タマは呆れながら、言葉を吐いた。
「酔狂なもんだ。こんな、たかが奴隷の為に、良いようにしてやられるとは」
「良い買い物をしましたね」
「全くだ。アールレンに来た早々、奴隷を買っておいて正解だった」
ジュリアスが入学式前日にぶっ潰した人身売買の組織から購入した奴隷の事。
タマは、この奴隷達を盾に、フラン達をボコボコにした。
「ジュリアス…!」
「止めろ…!」
同じく、傷だらけのフラン、レンは、ジュリアスがやられているのを見て、必死で、体を起こそうとしたが、動けないでいた。
「あははは!良い気分だ!あれだけ俺様に楯突いたんだ!この程度で済むと思うなよ!」
ドサッと、その場に倒れ込むジュリアス。
「後でもう1人の男と、あの生意気な女も一緒に!いたぶってやる!」
瑞月、ルナマリアは、連行して来て、一緒に痛め付けるつもりだったらしい。
実際は、話を最後まで聞かなかったルナマリアの手に寄って、家来がいつもの様に痛め付けられただけで終わっている。
「さぁ!聖女!お前もこうなりたくなかったら、俺様の物になれ!」
そう言いながら、ヨウナの首に着けた首輪の紐を引っ張るタマ。
「痛っ」
痛みで顔を歪めるヨウナ。
タマは、そのまま、ヨウナの頭を押さえ付け、地面に擦り付けた。
フラン達の様に痛め付けられてはいないが、彼女の首には、金に光る首輪が装着されていた。
「お前は俺様のもんだ!俺様の為に力を使い!俺様の為だけに生きる!分かったらーー忠誠の意味を込めて、この俺様の靴を今すぐ舐めて、綺麗にしろ!」
靴をヨウナの顔の前に差し出すタマ。
「っ…ぅ…」
(ごめんなさい……私のせいで……皆さんが…!)
ヨウナは、ボロボロになったジュリアス達を見、涙を流しながら、ゆっくりと、顔を靴に近付けた。




