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「あ、もうこんな時間だ」
そう言うと、瑞月は時計を確認した。
「ほんとだ。もう補習授業終わってるね」
『なら、我はそろそろ帰るとしよう』
ファイティンは立ち上がると、自身の周りに魔法陣を展開させた。
『ではまた会おう、我が主よ』
そう言って、ヒュン。と姿を消す。
「グリフォンも、また来るからね」
『キュイ、キュイーー』
瑞月に撫でられ、グリフォンは嬉しそうに声を上げた。
2人して並び、体育館を後にすると、フラン達と合流する為に、足を進めた。
「楽しかった。また今度は皆で来たいな」
「そうだね」
補習授業が終われば、一緒に来る事が出来るようになる。
たわいも無い会話をしながら、2人は、合流場所まで向かうーー
「!」
その前に、ルナマリア達は、灰色の服を着た、タマの家来達に、周りを囲まれた。
「ほんと、懲りないね」
(タマの家来に囲まれるのも、これで何回目か…)
ルナマリアは魔法で杖を出した。
「そうやっていい気になってられるのも今のうちだ!いいか!大人しくしていないと、後悔することにーーー」
「攻撃魔法」
会話もそこそこに、問答無用で攻撃魔法をぶっぱなすルナマリア。
家来達は、一瞬で撃沈し、その場に黒焦げ(表現)で伏せた。
「よし、おしまい」
「……相変わらず凄いね」
容赦無いルナマリアの攻撃を後ろで見ていた瑞月は、黒焦げになった(表現)家来を見渡しながら、呟いた。
「?これ、何だろ」
見渡していた瑞月は、キラリと光る物を見付けて、拾い上げた。
赤い花の髪飾り。
「これ……ヨウナの!?」
見覚えのある赤い花の髪飾りは、ヒロインであるヨウナが身に付けていた物。
「……」
ルナマリアは、瑞月から髪飾りを受け取り、ジッと見た後、無言でスタスタと、黒焦げ(表現)になったタマの家来達の元に向かった。
「よいしょっと」
杖を上げ、ガンッ!!と、勢い良く、倒れている家来の顔間近に突き刺す。
「ひっ!!」
朦朧としていた目が、悲鳴とともに思わず見開き、家来は恐る恐る、上を見上げた。
「ヨウナをどうした?」
笑顔だが、瞳の奥は全く笑っていない。
「っ!だ!だから大人しくしてないと後悔する事になるって言おうとしたのに!てめぇが人の話も聞かずにぶっぱなすからーーー!!」
「へぇ?後悔?面白いね、させて見てよ」
氷点下まで凍り付くような、笑みを浮かべる。
「……もう早目にギブアップした方が良いと思うなぁ、僕」
完全に怒っているルナマリアを見て、瑞月は親切にも忠告した。
「っ!ま!待て!いいのか?!聖女様は今!ベンジャルラレン様と一緒なんだぞ?!俺達に手を出せば!聖女様はただではすまないんだぞ?!」
「へぇー。じゃあ、手を出した痕跡を消さなきゃ駄目かな」
「はぁ?!」
「ルナマリア、ちょっと落ち着いて」
魔法を次いでぶっぱなそうとしていたルナマリアを、瑞月が両脇を抱えて制止した。
「それって、ヨウナを連れ去る事に成功したって事?」
ルナマリアを宥めながら、横たわったままの家来に向かい尋ねる瑞月。
「そ!そうだ!ベンジャルラレン様にかかれば!この程度容易な事だー!」
この際、大分手こずっていたように見えたのは黙っておく。
「フランやジュリアス、レンも一緒だったのに?君達にあの3人を倒せるとは思えないけど」
この場には、その3人の姿も見えない。
「あいつ等なら、聖女と一緒に連れて行かれたよ!今頃!ボコボコにされて、ベンジャルラレン様に逆らった事を後悔してるだろうよ!!」
「……ふぅん」
平静を装っているが、瑞月自身の背後からは(しばくしばくしばくしばくしばくしばくしばく)の副音声が聞こえる。
「フラン達が黙って連れていかれる?信じられない」
少し落ち着いたルナマリアは、魔法をぶっぱなすのは止めにしたようだが、杖は手に持ったまま、何かあれば直ぐに息の根ーーいや、対処出来るようにし、家来に向かいあった。
タマは攻略対象なだけあって良い腕をしてるが、攻略対象4人相手で、こてんぱんにされたばかり。
瑞月1人減っているとはいえ、3対1でも、タマに勝ち目があるとは思えない。
「君達は雑魚いし」
家来が何人加勢に来た所で、そんなに何かが変わるとは思えない。
少なくとも、ルナマリアには関係無い。
「誰が雑魚だ!!」
「毎日毎回こてんぱんにしてるのに、何で雑魚だと認められないの?逆に尊敬する。悪い意味で」
「黙れ!!!」




