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「体育館?何をするんですか?」
「グリフォンに広い場所で過ごして欲しくて、モモちゃんにお願いしてたんだ」
グリフォンは今、学園の中の厩舎のような場所で過ごしている。
体の大きいグリフォンには、普通の厩舎より広いとはいえ、とても窮屈で、過ごしにくそうにしていた。
「ほら、グリフォンって魔物だから、まだ可愛さを理解出来ない、柔軟な考え方の出来ない木偶の坊が多いでしょ?だから、人目につかない広い場所を探して貰ってたんだ」
笑顔で毒を吐きまくる瑞月。
大半の魔物は凶暴で人を襲う為、害の無い魔物に対しても、一緒くたにしてしまい、好意的な人は少ない。
「瑞月は分かったけど、ルナマリアは?」
「私?私もたまにはファイティン呼ばないと、怒られる気がして……」
ルナマリアと契約している守護神獣ファイティン。
実は位が高く、女神などに次いで、妖精・精霊達よりも偉い。
そんな守護神獣を従えていると知れたら、騒ぎになるのは目に見えているので、ルナマリアも瑞月と同じく、人目につかない広い場所を望んでいた。
「守護神獣……とても興味があります」
未知なるものへの好奇心からか、目をキラキラさせるレン。
「今度会う?」
「いいんですか?」
「うん。ファイティンも怒んないと思う、多分」
ルナマリアに敵対している者に対しては冷たいが、比較的常識獣?なので、大丈夫だろう。
「なら今日の放課後早速皆で行こうよ!」
「あ…でも、私…」
瑞月の提案に、1人、ヨウナは目を伏せた。
「そっか、ヨウナ補習組だっけ」
昨今の実技の授業にて、まだ実力が伴わない者に対して、本日より補習授業が開催される事になっており、ヨウナはその中に含まれた。
「ヨウナが補習なら、待ってるよ」
(食堂で珈琲とお菓子でも貰って、ゆっくり待とう)
タマがヨウナを絶賛狙っている最中なので、今ヨウナから目を離すのは大変危険。
(攻略対象だから本当は恋を応援しないといけない……それは分かってるのに……)
どうしても目の前でヨウナが辛い目にあっているのを、見過ごせないまま、気付けば、完全に保護している。
(何とかオブラートになんないかな…少しでも!)
ルナマリアは強く願った。
「居残りの授業なら俺達も参加するから、ルナマリアと瑞月は体育館に行ってきたらどうだ?」
「!フラン達も?」
ルナマリアは俺達に含まれる、フラン、ジュリアス、レンを見た。
彼等の実力は証明されていて、補習が必要だとは思えない。
「俺とジュリアスは、モモとカザンから、特別に講師として参加を頼まれたんだ」
剣の腕に長けているフランと、短剣、そして、スピードに長けているジュリアス。
2人なら、他生徒の見本となり得る。
「えー、ジュリアスが教えられるのー?」
「行くの?珍しいね」
「……俺だって行きたくねーよ」
フランは兎も角、ジュリアスが人に何かを教える姿を想像出来ない
瑞月。
ルナマリアに至っては、補習に参加する事自体が奇跡だと思った。
「カザンに毎日頼み込まれていたからな」
「…くそ。あのおっさん、しつけぇんだよ」
大きな声で満面の笑みで頼み込むカザンの姿が容易に想像出来る。
「レンは?」
「私は、進んで補習授業を受けたいと申し出ました」
流石真面目一直線。
自分から進んで補習を受けるなんて……ルナマリアには考えもつかない。
「皆さんに比べれば、私はまだまだ戦闘に不慣れですからね」
錬金術師になってからは、錬金術で作った爆弾や薬を使用し、ギルドで討伐依頼も請け負って来たので、戦いを経験していない訳では無いが、他攻略対象とは違い、錬金術や学業を優先して来たので、戦闘はまだまた、他の攻略対象者と比べると差があった。
「偉いなぁ…。私は寮に戻っていち早く休みたくなるのに…」
「そんな事言いながらも、ヨウナの事は守っているのが、ルナマリアの良い所ですね」
「……………私、頑張ってる!」
レンの言葉に、自身の行いを振り返ったルナマリアは、目をキラキラさせながら、自分自身を認めた。
ともあれ、ヨウナの傍には、フラン、ジュリアス、レンがいる。
「なら、たまにはファイティン呼んでおこうかな」
「グリフォン、広い場所に移れて、喜んでくれるかな」
お言葉に甘えて、ルナマリア、瑞月は、放課後、補習が終わるまでの間、体育館で過ごす事になった。




