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「最初の方に比べれば、これでもまだマシになった方なんだがな」

廊下から聞こえるタマの金切り声を聞きながら、フランは答えた。



そう。

初日はこれ以上に酷く、タマはあのまま槍を抜き、教室内で乱闘騒ぎになった。


幾らタマが優秀だろうと、こちらも優秀な攻略対象が4人がいる。


勿論、1体4では適うわけも無く、ルナマリアが参戦するまでも無く、タマは敗れた。

(家来は乱入したが、相手にもならない)



冷静な頭で普通に考えれば、戦う前から適う筈が無いと撤退するものだが、沸点が低く、怒りに身を任せるタマは、その激高のままに、突っ走る。

そして、コテンパンにされる。

これを、3日続けた。




流石に4日目からは、戦闘に発展する事無く経過している。


3日過ぎた後に、モモに

『いー加減にしなさいよん?ほんと、怒るわよん?』

とボロボロになった教室を前に、ニコニコと笑顔で言われたのが、逆に怖かった。







お昼休みーーー。




「話には聞いていましたが、よく退学になりませんね」


いつもの様に、フラン、ジュリアス、瑞月(みづき)、レン、ルナマリア、ヨウナで食堂で食事を取る中、レンは和食のご飯を箸で食べながら、話した。



(もしタマが退学になるなら、攻略対象者全員退学になります)


最低最悪イケメン残念男が集うこのゲームでは、攻略対象全員が問題児。

心の中でルナマリアは静かに思った。



「優秀であれば結構誰でも入学させるし、校則を何回も破らなければ、後は死なない限り卒業出来るんだよね」


サンドイッチを頬張る瑞月(みづき)から物騒な単語が出て来たが、そこはスルー。



「……あれだけ痛め付けてやったのに」

初日の乱闘で誰よりもタマをボコボコにしたジュリアスは、箸でハンバーグを口に運んだ。



「兎に角、このままじゃ、ヨウナも気が休まらないだろう?」

「そ、そうですね…」

フランの問いに、ヨウナは力無く頷いた。


無理も無い、毎日毎日繰り返される、求愛ーー道具になれと言われる勘違い野郎の相手は、さぞ疲れるし、恐怖でしか無い。



「皆さんにご迷惑をかけてる事が……一番、気掛かりで……本当に!毎日助けて頂いて、本当に感謝しています!」



目の前に置かれたパスタに手を付けす、頭を下げるヨウナ。


「大丈夫大丈夫。ヨウナを巡る血みどろ奪い合いは、ストーリー上、絶対通る道だから」

「す、ストーリー??」

「深く考え無いほーがいーよ?ルナマリア、たまに訳わかんない事言うから」


ラーメンを啜りながら言う、いつもの意味の分からないルナマリアの台詞に、瑞月(みづき)は慣れた様にスルースキルを発動した。




「このまま諦めてくれるといいんだが…」

カツ丼を食べながら、フランは希望を呟いた。



(絶対に有り得ない)



これはルナマリアだけで無く、全員が思っているだろう。


タマはこの程度では、聖女の事を諦めないと。



(私が少しストーリーを変えてしまったから、この後どうなるのか、私も分からないし、覚えてない)



本当はあのまま家来に連れていかれた先が、ヨウナとタマの初対面で、そこでタマはヨウナに意味不明な屈辱(前代未聞のヒロインに靴を舐めさせたり、暴力を振るったり)を受けさせ、自分の命令に逆らえばこうなると、恐怖を植え付けた。



だから、ゲームではタマの誘いをヨウナは断らなかった。


完全な恐怖政治!!独裁者!!!



(ヒロインを奪い合う事は、誰を選んでも絶対!だったから、そう珍しくは無いんだけど……)


注意 ルナマリアは、攻略対象者がヨウナを守っているのを、ヒロインの奪い合いだと解釈している。




(私達が邪魔する以上、タマは何か仕掛けてきそうな気がする)


このまますんなりと諦めてくれれば、どれ程良いか。





「あ、いたわん」


そんな事を考えながら、ラーメンを食べ続けていると、後ろから声が聞こえ、振り向いた。



「モモ先生?どうしたの?」


「ルナマリア、瑞月(みづき)。貴女達、人目につきにくい広い場所を貸して欲しいって言っていたでしょう?」



人目につきにくい広い場所。

それだけ聞くと、何で?と思われるが、それにはちゃんと理由がある。



「はい。とれたわよん。グラウンドの奥に、今は使われてない体育館があるから、そこを使ってん」

そう言って、モモはルナマリアに体育館の鍵を手渡した。



「ドーム型施設が出来てからから使われなくなったんだけど、広さは中々よん」

「ありがとうモモちゃん!」

満面の笑みでお礼を言う瑞月(みづき)


モモは鍵を渡すと、そのままその場を去った。









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