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「守護魔法」
次から次へと襲ってくる魔物の攻撃を、飛行魔法+守護の魔法で阻む。
「もーいい加減にして欲しい…」
いつまでも続く平行線に、ルナマリアは疲れてきた。
(攻撃魔法さえ使えれば簡単なのに…)
フランの予測通り、ルナマリアの実力があれば、この程度の魔物なら軽く殲滅出来る。
それなのに、攻撃魔法を禁止され、出来ない現状がもどかしい。
「タマー、早く倒してよー」
「やかましいわ!平民が王である俺様に指図するな!!」
すぐ近くで魔物と戦いを繰り広げているタマに向かい、急かすように言うルナマリアに、タマは怒鳴り返した。
「もー使えないなぁ」
「貴様!絶対に後でしめる!覚えておけよ!」
怒りのまま、タマは魔物を槍で一突きし、倒した。
(それにしてもーー)
ルナマリアは、ギャギャー下で騒ぐタマを無視して、周りを見渡した。
(あんまり数減ってないな)
リアリテ学園は、優秀な逸材でも、入学の許可をするので、発展途上者も沢山いるのは知っていたが、実際、戦闘に不慣れな者も沢山いて驚いた。
守りながら戦闘しているので、どうしても戦闘経験者も、本来の力を出し切れていない。
(守護の魔法……皆に使っていいのかな?いや、でも一応ペア決まってるしな)
本当に危険そうな時には使用し助けてあげているが、実は真面目なルナマリアは、ここでもペアの取り組みをしっかり守っていた。
「おい!いい加減この俺様を守れ!その位俺様の役に立て!」
しかし、当のペアであるタマの事を守るのは止めた。
どれだけギャンギャン吠えようとも、ルナマリアは見向きもしなかった。
ゆっくりだが、着実に魔物の数は減っている。
特にレン+ガンダル、瑞月+イマルペアの組み合わせが速い。
実力者同士、他生徒を守りながらも、敵を殲滅していっている。
「頑張れーレン、ガンダルさん、瑞月、イマルー!」
空の上から呑気に応援するルナマリア。
「ルナマリアはん、呑気やなぁー」
「……ルナマリア、攻撃する気無いよね」
そんなルナマリアの声援を受けながら、イマル、瑞月は魔物と応戦を続けた。
「きゃあ!フランさん!!」
「!」
そんな中、ヨウナの悲鳴が聞こえ、パッと振り返ると、ヨウナを背に、フランの腕から、血が滴り落ちた。
先の肩からの出血が、腕にまで垂れたのだろう。
「血がーー!もう逃げましょう!」
「いや、大丈夫だ。この程度、かすり傷だ」
入学前、冒険者として旅をしていたフランは、勿論、魔物との戦闘を経験していて、その際、大怪我を負った事もあった。
その時に比べれば、この程度の傷、フランにとってはかすり傷。
「そんな……血がこんなに出てるのに……」
だが、冒険者で無い、ただの村娘だったヨウナにとっては、大怪我に分類される。
「いや、本当に……」
「私の…せいで…私の……為に…!」
「いや、ヨウナのせいではーー」
「私が……傷つかないように……かすり傷だなんて……嘘までついてくれて……!」
「いや、本当にこの程度の傷なら、後で治療すればーー」
実際、僧侶のいない辺境ならまだしも、学園には専用の僧侶もいて、尚且つ、回復魔法の使えるルナマリアや、錬金術師のレンもいる。
勿論、痛みは伴うし、怪我をするのは良くない事だが、何度も言うが、冒険をしていたフランにとっては、かすり傷に分類される。
「ごめんなさい、ごめんなさい…!」
「えっと……ヨウナ?本当に俺は大丈夫だからーー」
だが、いくら否定しようと、フランの言葉はヨウナには届かない。
「私……フランさんの……力になりたい……!」
ギュッと、ヨウナは祈るように目を閉じ、手を組んだ。
ーーーーーーーー
ピコンッ。
『聖なる力、発動します』
「あ」
ルナマリアは、発動されたゲームの機械音に、思わず口を開いた。
ヨウナの体から魔力とは違う不思議な力が溢れ、7色の光となり、フランの体を包む。
『対象者フランーー聖なる力、光の加護を授けます』
「聖なる力ーー俺に?」
突然の聖女からの聖なる贈り物に戸惑うフランだが、それでも、自身の中に突如現れた力の使い方を、ルナマリアの時の同じように、理解出来た。
『ガルルルル!!!』
襲い来る数匹な狼の魔物。
ヒュッッッ!!!と、フランは剣を魔物に向かい振るった。
『ギャンッッッ!!!』
すると、フランの剣から光が走り、光の刃が、魔物達を一斉に消し去った。
「これ…が…」
普段、魔法が使えない筈のフランが繰り出したのは、剣技に光の魔法を組み合わせた強力な技。
(あーあ…)
ルナマリアには、フランの光の技には、勿論、見覚えがあった。
ゲームで、ヨウナがフランを選んだ際に授けた聖女の贈り物。




