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『グルルルルル』
ルナマリア、タマも例外無く、狼の魔物に囲まれる。
「ふん!俺様に楯突くなんて愚かな!おい、平民!さっさと守護の魔法をかけろ!」
ルナマリアに向かい、大変偉そうに命令するタマ。
「……守護魔法」
ルナマリアは、杖を構えると、呪文を唱えた。
『ガァァアアアア!!!!!』
襲い来る魔物。
だが、守護の魔法がかけられていると思っているタマは、平然とその場に突っ立っていた。
「ん?うわぁぁああああ!!」
ーーだが、異変に気付き、寸前の所で、タマは魔物の鋭い爪の攻撃から逃げた。
「なっ!なっ!!貴様!守護の魔法かけてねぇな!このノロマ!さっさとかけろって言っただろーが!!!」
「嫌に決まってるでしょ。絶対、何か仕組んだのはタマのクセに。何で私が守らなきゃいけないのよ」
さっきの態度からしても、俄然怪しい。
何故魔物をけしかけた張本人を守らなくてはいけないのか。
絶対守らない。
「このクソあま…!」
「何とでもどうぞ」
決裂です。
本当はもう立派な大人(25歳)なのに、フランのような大人の対応が出来なくてすみません。
魔物が襲い来るのを、ルナマリアは守護の魔法が防ぐ。
「くそ…高みの見物をするつもりだったのにー!!」
タマは、舌打ちしながら槍を取り出すと、仕方なく魔物と対峙した。
「えいっ!」
ヨウナも頑張って、練習中のヨウナの武器、先の尖った鎖を使い、魔物を攻撃する。
鞭のようにしなり、狼の魔物に当たるが、対して効果は無いようで、ギロリと、ヨウナを睨み付けた。
「っ!」
「下がれ、ヨウナ」
怯むヨウナに変わり、ペアであるフランが前に出る。
「あ、ありがとうございます」
こちらのペアも、ヨウナを守りつつ、フランが敵を撃破する。
「!フランさん、怪我をーー!」
フランの肩から、出血が見え、ヨウナは心配で声をかける。
「なんて事は無い。かすり傷だ」
「…でも…」
フランは、ヨウナだけで無く、他の生徒達の事も守りながら戦っている。
負担は多い。
(私が……もっと、強ければ……)
ルナマリアの様に強ければ、フランは自分を守らなくてすみ、怪我を負わなかったかもしれない。
(私の性…!フランさんは、必死で、私を守ってくれているのにーー!!!)
ヨウナは、ギュッと強く、思い詰める様に、目をつぶった。
「それにしても……」
フランは、周りを見渡した。
当初よりは減っているが、まだ魔物は、大分残っている。
「大勢の敵相手だと、魔法使いがいる方が効率的だな」
「そう…ですね」
フランの台詞に、ヨウナも同意する。
魔法使いは、その実力により、広範囲に攻撃の魔法を放てる為、大量の魔物を相手にする時は、とても重宝される。
接近戦は苦手とする魔法使いだが、パーティを組む時は、前衛が後衛である魔法使いや僧侶を守りながら、戦って行くのが主流。
だが、今は接近戦メインの授業で、魔法使いと僧侶は別に魔法の授業を受けている最中なので、ここにはいない。
いるのは、何故かいるへっぴり腰の魔法使いの男←未だに名前が出ていない。と、ルナマリアのみ。
へっぴり腰の魔法使いの男は、論外。
戦力にならないが、ここには、優秀過ぎる魔法使いのルナマリアがいる。
(ルナマリアなら、もう魔物を殲滅していてもおかしくないと思うんだが……)
ルナマリアと初めて出会った時でさえ、強力な魔法を使い、森を吹き飛ばした。
その力を持ってすれば、容易い。
しかし、未だに魔物の数が思うように減らない。
(まさか、タマに何かされてーーー!!!)
ルナマリアのペアはタマ。
フランは、急いでルナマリアの姿を目で探した。
「あ、あそこ!ルナマリアちゃんです!」
ヨウナも同じ事を思ったようで、先にルナマリアの姿を見付けたヨウナは、そちらに指を指した。
特に変わった様子無く、どちらかと言えば涼しい表情で、空に浮かびながら、淡々と守護の魔法を使い、身を守るルナマリアの姿。
「良かった……ルナマリアちゃんが無事で…」
タマに何かされている様子も無いので、ホッと息を吐く。
「……いや……まさか、ルナマリア、攻撃魔法を使って無いのか…?」
明らかに緊急事態的に、強い魔物が襲って来ているにも関わらず、ルナマリアは授業前、教師に言われた攻撃魔法禁止を律儀に守っていた。
「いや!変な所で真面目だな…!」
普段、何を仕出かすか分からないルナマリアだけに、真面目に言いつけを守っている事象に、フランは思わずツッコんだ。




