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一斉に狼の魔物達が、解放された扉から飛び出る。
「今日は討伐依頼のあった魔物の群れが対戦相手だ!しっかり始末を頼むぞ!」
ガッハッハッと大きな口を開けながら豪快に笑うカザン。
「いや!そんなの聞いて無いし!」
「嫌ぁあ!!」
「いきなり魔物と戦闘なんて!横暴だ!」
何も知らされていなかった生徒達は、口々に悲鳴や文句を上げる。
ここリアリテ学園は、死者が出る事がある位、大変過酷なもの。
だからこそ、優秀な者しか入学出来ないし、卒業はステータスになる。
「……」
ルナマリアは、杖を持ち、警戒しながら、辺りを見渡した。
(成程。良く考えられてる)
始めは、いきなりの魔物の登場でパニックになっているが、落ち着ついてくると、皆、対応出来始めている。
魔物のレベルはそこまで高くないし、それに、よく見れば、戦闘に不慣れな者は、戦闘に長けている者とでペアを組ませている。
「行けるか?ヨウナ」
「は、はい!頑張ります!」
ヨウナのペアはフランで、フランはヨウナを守りながら、ヨウナもまた、特訓して来た武器を使用し、援護している。
(…私も、イマルやガンダルが良かったなぁ…)
下手に死者を出す気は無いようで、そこは安心するが、それでも、ルナマリアは納得していない。
攻撃魔法さえ使えれば自己完結出来るのに、何故あえてペアを組ませたのか……。
『グルルルル!!!!』
真後ろから襲い掛かる狼の魔物。
「守護魔法」
ルミナリエは、杖を向けると、呪文を唱えた。
白い光が、狼の魔物の攻撃を塞ぐ。
「まぁ……怪我しないからいいか」
ルナマリアはすぐに切り替え、前向きに捉えた。
ルナマリア自身、成績に拘る方では無いので、例え魔物を倒せなくても、さして問題は無い。
自分の身をただ守っていれば良いのだ。
「めっちゃ楽じゃん…」
そう考えると、別に悪くない気がしてきた。
始まる前、念押しで、無関心、干渉なし、距離を取る。を言ったし、向こうも、脆弱な力など必要無いと突き放したのだから、文句は無いだろう。
(よし。授業終わるまで、守護の魔法でやり過ごそう)
そう心に決め、高みの見物と、どこかに休める場所は無いかと、1人、その場を離れようとするーーー
「おい!どこに行く気だ?!」
ーーーのを、タマがガシッと肩を掴んで止めた。
「え?いや……ちょっと休もうかな。と」
「ふざけるな!平民が王を差し置いて休もうなど、1000年早いわ!」
(ええぇぇぇぇええーー!!!!)
「……私如きの、脆弱な力など必要無いのでは……?」
「平民は王を守る義務がある!」
「あ、そうですか…」
(ねぇよ。そんな義務ーー!!!)
と、心の中で壮大につっこむも、腐ってもペア。
ルナマリアは大きな大きな溜め息を1つ吐くと、仕方無く、守護の魔法をタマにもかけた。
「このノロマが!もっと早くすればいーんだよ!」
「はーい」
もう相手にしたくないルナマリアは、適当に相槌を打った。
だが、流石は攻略対象者。手際良く魔物を倒していく。
「ふん!雑魚が!!見たか!平民!!」
「とーっても凄いでーす」
心の籠らない拍手でお出迎えする。
「貴様……いちいちムカつくな!!」
「えぇ?こんなに頑張ってるのに…」
ルナマリアからすれば、とても頑張って、平和的に時間が過ぎる様に努力している最中なので、心の底から心外。
「ふん!まぁいいーー所で、貴様が、唯一、聖女から聖なる力を与えられた奴らしいな」
「……」
(やっぱり聖女の力が目当てか)
ルナマリアは、鋭く睨むタマの視線から目を逸らさず、ただ、何も答えなかった。
「貴様如きが聖女の力を手に入れられると思ったら大間違いだ!おこがましい!平民の底辺の女如きが、図々しいにも程がある!!聖女の力は、俺様のような高貴な存在こそが相応しい!」
「……」
(マジでぶっ飛ばしたいなー)
ここでぶっ飛ばしても良いのだが、何度も言うが、一応、攻略対象なのである。
ヨウナが選び、一緒に魔王を倒すパートナーに選ばれる可能性がある。
「何でこんな最低最悪の男を好きになれるんだろ…」
(うわー。笑わせてくれますねー!高貴って言葉の意味知ってます?レン(人間辞書)に聞いてみます?)
「あぁ?!?!」
「ごめんなさい。つい、思ってる事を正直に口に出してしまう癖がありまして」
心の声と口に出た言葉は逆だが、どちらにせよ失礼な言葉しか言っていない。




