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どこからどう見ても、仲良く一緒にいるようにしか見えないイマルからすれば、嘘をついているように思えない真剣な表情で、何故そう言い切れるのか、心底不思議になる。
「分かってないなぁ」
「多分、分かってないのはルナマリアはんのほーやでーっと、言うてる間に、お仲間の1人が皇子はんとバトってんでー」
イマルの指した方には、殺意を込めた攻撃を繰り広げるタマに、それを剣で受けるフランの姿。
「あらー」
「まーペアやったさかいなぁー」
心底自分で無くて良かったと思ったが、タマのペアはフランが選ばれた。
今回は訓練であって、対戦では無い。
体を慣らすのが目的であって、誰も本気で戦えとは言っていない。
そもそも、殺すのは厳禁なのに、殺意を込める所から間違っている。
「止めようか?」
杖を向けようとするが、それをイマルが止めた。
「大丈夫でっしゃろ。カザンはんも、力量を見極めてペアにしてるみたいやし」
確かに。
戦闘に不慣れなヨウナには、同じ戦闘に不慣れな特殊枠の生徒をあてがっているし、それぞれが、訓練になる様に、レベルを合わせてペアを作っている。
「フランはんなら、皇子はんを止められると思っての事や」
その言葉通り、フランはタマの槍をしっかりと止めている。
(力は互角ーー)
本当に危険なら、流石にカザンが止めるだろう。
「心配してまんねんなー」
即、戦いを止めようとしたルナマリアに、イマルは茶化すように言った。
「当たり前だよ。フランは残念戦闘狂ネガティブイケメン男だけど、私の大切な友達だもん」
「……ルナマリアはんには、一体何が見えてんの?」
フランの人物像とは全く異なる発言に、イマルは今度こそルナマリの思考回路は意味不明だと確信した。
「そこまでだ!!」
カザンの発言で、生徒達の動きが止まる。
「ーーくっそっ!」
大量の汗を拭いながら、タマの言葉を吐き出した。
「良い動きだったな」
同じく、汗をかいているフランは、ペアだったタマに向かい、握手を求め、手を伸ばした。
「!うぜぇ!平民クセに!俺様と対等だと思うんじゃねぇ!」
その手を強く払い除けるタマ。
「そうか、すまない」
だが、特に気にした様子も無く、フランは素直に頭を下げた。
「くっ!」
そのまま、タマはドーム型の施設から早々と去り、タマの後を、お付の家来達も急いで追った。
「お疲れ様フラン」
「ルナマリアこそ、おつかれ」
少し息は乱れているが、怪我はしていない。
フランの様子を確認し、ルナマリアはホッと息を吐いた。
「皇子様、本当に強いんだねー」
同じく、フランとタマの戦いを見ていた瑞月が、感想を述べる。
「ああ。筋が良いし、多分、きちんと訓練を受けていた形跡があった」
「意外ー」
剣の訓練とか真面目に受けていなさそう。が、率直な感想。
「瑞月こそ、ペアの相手を怖がらせていただろ?」
「あはっ。そんなつもりはなかったんだけどねー」
瑞月は同じ武器の弓士とペアになっていたのだが、魔物使としてグリフォンを呼び出していた。
瑞月に仕えている魔物とは言え、急に大きな魔物が目の前に現れたら、魔物使に免疫の無い身からすれば、恐怖の対象だろう。
「ちゃんとグリフォンには帰って貰ったよ」
その後は、弓だけで特訓を行った。
元々、和の国ツキナリで、弓で狩りをしていた事もあり、中々の腕前。
「取り敢えず、もう疲れたから、帰って寝たいや…」
久しぶりの体育で疲れた。
いや、いつも眠たいし疲れているが、本当に疲れた。
ルナマリアは大きな欠伸をしながら、ドーム型施設から退出したーー。
数日後ーーー。
再度、同じ授業が行われた。
「ふん!」
「守護魔法」
ガンダルの斧の攻撃を、守護の魔法で防ぐルナマリア。
今回のルナマリアのペアはガンダル。
「この手の魔法は、こう攻撃するのが効果的ですかな?」
「……多分」
冷静に分析するガンダル。
授業を真面目に受け、魔法使いとの戦いに備えて、守護の魔法対策をしている。
弱点を聞かれても、答えるメリットはルナマリアには無い上、感覚でしているので、弱点も何も分からないので、適当に答える他無い。
「ルナマリア殿のような、優秀な魔法使いと授業をご一緒出来るなど、光栄至極だ」
「いやいやいや、恐縮です」
だが、比較的穏やかに、何の問題も無く、ルナマリアは授業の時間を過ごしていたーーー
「死ねぇぇー!!!!!」
ーーーだが、その背後からは、物騒な台詞と、大きな破壊音が響き渡っている。




