接近戦特訓開始84
教室内は、タマが暴れたお陰で、少し壊れている箇所があるのだが、カザンは周りを見渡し、生徒を確認すると、壊れている箇所は気にも止めなかった。
モモと同様、問題児が集う学園の教師のスルースキルは高い。
ゲームでも、攻略対象同士の喧嘩で、教室が半壊になった事もあったので、これくらいでは動じないのかもしれない。
「今日から生徒全員揃った事だし!本格的に体育の授業を行って行くぞ!皆!ドーム型の施設に全員集合だ!」
「ーーちっ」
カザンの台詞に、タマは舌打ちをしながらも、槍を閉まった。
退学すれば祖国から追放される今、流石のタマも、授業の妨げをするのは避けたいのだろう。
何せサボり過ぎて退学の危機に迫っている。
タマは乱暴に扉を開けると、廊下で待機している家来を引き連れて、施設に向かった。
「ルナマリア、大丈夫ですか?」
直ぐに、前の席のレンが心配そうに尋ねる。
「うん。怖かったぁ」
「…嘘付け」
ルナマリアの台詞に、隣の席のジュリアスがジト目でルナマリアを見た。
ジュリアスの目からは、一切、ルナマリアが怖がっている様に見えず、どちらかと言えば煽っているようにも見えたからだ。
「ホントだよ。顔面踏みつけられたらどうしようってドキドキしてた」
「ーーー今回は本当にやりそうだからムカつくな」
いつもなら、誰がそんな事するか!とか、訳分からない事言うな!っと反論するのだが、タマに関しては、実際にやりそうだと、ジュリアスも思った。
「皆も気を付けた方が良いよー。私だけじゃなくて、皆の事も、タマは報告されてると思うから」
家来に逆らったのは、ルナマリアが筆頭だが、他攻略対象者達も、含まれる。
「好都合だ……万倍返ししてやる…!」
「出来るだけ、争い事は避けたいんですけどね」
好戦的満々で答えるジュリアスに対して、レンは平和的な答えを言った。
***
ドーム型の施設ーーー
ブスッと立つタマ避ける様に集まる生徒達。
先程泥水で汚れた制服は綺麗な物に変わっているので、どこかで着替えて来たのだろう。
「今までろくに授業に出なかったのに、こうやって真面目に授業に出るとゆう事は、国の追放は本当に避けたいんだな」
フランは、少し離れた場所にいるタマを見ながら、言った。
退学覚悟で授業をボイコットしていたタマだが、祖国からの退学となれば国を追放するとの通告に、今迄とは打って変わって真面目に授業に出るようになった。
噂によると、入学実力テストも1人、きちんと受けたらしい。
「成績は良かったらしいよ。体力も学力も、魔力も平均はあるんだって」
どこからか話を聞いた瑞月が、補足する。
「てかさー、一国の皇子様がさ、リアリテ学園に留学してくるのは分かるよ?ここって凄い有名な学園だからさー」
国内外問わず、この世界で有名な学園。
「でも、退学したら国外追放。なんて、普通皇子様に通告する?王位継承者なんでしょ?大切にされるもんじゃないの?」
「我儘放題で見放されてたって話だがーーレンは何か知らないのか?」
人間辞書の異名(勝手にルナマリアが命名しているだけ)を持つレンに、フランが尋ねた。
「そうですね……砂丘の国ハロゲン。
前国王が大変優秀な方で、荒れ果てた国を、1代で軌道に乗せたと、本で見た事があります」
元々小さな国で、内乱などが起きていたが、それをおさめたのが、前国王。
だが、その前国王は、若くして世を去ってしまった。
「今の国王は?」
「あまり良い話を聞きませんね。詳しい内情は流石に出回っていないので知りませんが……確か、タマ様の弟が若くして国王に即位している筈ですよ」
「弟?」
「はい。実際、政を行っているのは、母親みたいですが」
タマの年齢が17歳なので、弟と言えば、もっと若くなる。
「うーわ。なんか色々ややこしそー」
兄であるタマを押し退けて弟が即位したのは、皇子であることに強い拘りを持ち、いずれ王になると吠え、権力に固執しているように見えるタマには、大変な屈辱だと、まだ少ししか関わっていないのに、手に取る様に理解出来る。
「私なんかより、ルナマリアの方が、良く彼を知っているような気がしますが……」
と、レンはルナマリアを見た。
ルナマリアは、家来達ですら知らなかった、退学すれば国外追放の情報を知っていた。
それ以外も、所々、彼を良く知っているような、そんな発言が聞かれる。
「いち、にー、さん、しー」
しかし当のルナマリアは、最近は机の上での座学が多かったのも有り、久々に体を動かす授業の前に、準備運動で体を動かしていて、何も話を聞いていなかった。
休憩時間中にタマと一波乱あった後とは思えないくらい通常運転の
ルナマリアに、ある意味感心する。
「よし!では、今日は武器使用有りの接近戦に向けた特訓を行う!」
カザンが、大きな声で発言する。
「接近戦かぁー」
魔法使いであるルナマリアは、どちらかと言うと得意では無いが、魔法を駆使し、そつ無くこなす。
「因みに、原則!魔法は禁止だ!」
「えー。じゃあ無理かなぁ」
魔法を使えないルナマリアは、体力も素早さも握力も、何もかもが平均以下。最下位爆走中。
これには、ルナマリアだけで無く、他の魔法使いや僧侶からもブーイングが湧く。
「安心しろ!魔法使いや僧侶は別メニューだ!」
普通の魔法使いや、特に攻撃に参加しない僧侶からしたら、例え魔法が使えたとしても、接近戦なんて大変酷な話。
「非戦闘型の特殊枠も本来は別メニューだがーー今年の特殊枠は全員戦えると見なし、参加とする」
特殊枠である瑞月、レンは戦えるし、他特殊枠数人も、強さの違いはあれど、武器を携帯している。
ヨウナも、鎖という変わった武器を使用していた。
「大丈夫?」
接近戦での特訓のワードに、緊張しているヨウナに、ルナマリアは声をかけた。




