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ヨウナが聖女だと発覚し、早1週間。



「おはようございますヨウナ様!」

「今日も良い天気ですね!ヨウナ様!」

ヨウナが教室に入るや否や、以前までと打って変わって、イジメてた生徒も、傍観していた生徒も、揃って駆け寄り、笑顔で挨拶する。

「お、おはようございます」

ヨウナは戸惑いながらも、ペコりと小さく頭を下げた。




「……露骨過ぎない?」

クラスメイトの変わり様に、ルナマリアの席に集まっていた瑞月が、呆れながら呟いた。


「まぁ、イジメが無くなったのは良い事だ」

同じくルナマリアの席に集まっていたフランが、瑞月の台詞に答えた。



結局あれから、ヨウナへは勿論、ルナマリアに対しても、イジメは無くなった。

懲りずに学年3位の魔法使いの男は、いまだルナマリアに張り合ってくるが、それは数に入れない事にする。


ルナマリアは思う存分、実力差と、こいつ逆らったらやべー奴だと言うのを見せ付け、ヨウナは聖女であった事実から、イジメでは無く、聖なる贈り物が欲しいクラスメイト達の媚びを受ける事になった。



「大変そう…」

あれだけ毎日毎日、ずっとずっと、傍で誰かに付き纏われる事を思うと、ルナマリアには耐えられない。逃げる。

ヨウナはとても優しいので、イジメていた相手にも、分け隔てなく接している。


「聖女の贈り物は、今は消えてるんですか?」

前の席にいるレンが、ルナマリアに尋ねた。


「うん。あの一日で消えちゃった」

気付いたら消えていた。

ヨウナの力はまだまだ未完成だし、そもそも、あの力は、ヨウナと心を通い合わせる事で、力を最大限引き出せる。


(それが攻略対象達には、伝わらないんだよねー)

初めは無理矢理自分の物にしようとしたりする。

無駄なのに。


ルナマリアは、じっと、攻略対象者達を見た。

「ーー聞きたくないけど、どうした?」

あまり良い事を考えていなさそうなのを理解した上で、フランは尋ねた。



「嫌がってる女の子を、無理矢理自分の物にしようとするのは、駄目な事なんだよ?」

「知っているが?!」

「知っててするの?!」

「する訳無いだろう!」


安定で失礼な事を言い出すルナマリアに、フランは大きな声でツッコんだ。


「ルナマリアって僕達の事何だと思ってるんだろ……僕、誤解される要素なんて無いのになージュリアスと違って」

「おい」

自分の容姿を可愛さ抜群だと理解している瑞月は、目付きが鋭く、ヤンキー風のイケメンのジュリアスと比較した。



「誤解ですよ。この前も、様子を見に来た部下の方にお子さんが産まれたそうで、可愛いぬいぐるみの玩具をそっと忍ばせてーー」



「マジで止めろ!ぶっ殺すぞ!」

お見通しのレンに善行を暴露され、ジュリアスは大きな声で叫んだ。


「うっわ。典型的なツンデレなんだ」

「はぁ?何だそれ」

「ルナマリアが使う単語ですよ。普段は冷たい態度ですが、時折優しい態度を見せる人の事を指す単語だそうです」

「よしーーこっち来いてめぇ」

「きゃあージュリアスが怒ったぁ!ルナマリア、助けて!」


ふざけながら、ルナマリアの背中に隠れる瑞月。



「また怒らせちゃったの?駄目だよ。ムカついたからって人身売買だけは止めてね」

「しねーわ!」

2人のやり取りに、瑞月のケタケタとした笑い声が聞こえる。




何やかんや、この1週間は、ただただ、穏やかな日常が続いていたーーー。





ガラガラッッ!!

唐突に、教室に現れる、灰色のターバンで顔を隠した、首から足まである長い灰色の服を着た男女2名。



「失礼します」

スタスタと迷うこと無く、不審者2名は、ヨウナの前まで進んだ。


「ヨウナ様ですね?」

「は、はい」

怯えながらも、頷くヨウナ。


「私どもの主がお待ちです。一緒に来て頂けますか?」

「え?えーと、今から授業が始まるので…」

急なお誘いに戸惑いつつも、ヨウナは断った。





「何あの人達…」

ヨウナとは少し離れた場所にいるルナマリア達も、突然現れた得体の知れない人物達に、怪訝な表情を浮かべた。

一言で言うと意味不明で、不審者丸出し。


「あいつ等…」

そんな中、1人ジュリアスだけが、不審者に心当たりがあるのようで、口を開いた。


「知っているんですか?」

「……部下が要注意人物だって言ってた奴の家来だ」

レンの問いに答えるジュリアス。

入学式の時、確かにそんな事を言っていた気がする。


「もしかして、入学式から1度も教室に来ていないんですか?」

該当する人物の姿を、今まで1度も見た事が無い。


「来てねーな」

入学式から今までずっと、試験も受けず、授業も受けない。


「えーいいなぁー」

「……それは、学園に入学する意味があるのか?」

見当違いなルナマリアの感想は兎も角として、フランの意見は正しい。



普通の学校とは違い、校則が緩いと言っても、ある程度の規則はある。

寮で生活する事。首都から離れる際や、長期で休む時は学園の許可がいる事。

余りにも校則が破られると、退学処分となる。


今のフラン達は、学園で真剣に学びたいと意欲的に通っているが、休んでも休んでも卒業出来るのなら、(ゲームでの)問題児軍団の攻略対象達が、まともに授業に出席する訳が無い。




「どっかの国の王族関係者で、特別に留学して来たんだとよ」

「…王族…関係者…?」

部下が調べ上げた情報を話すジュリアスの言葉に、ルナマリアの表情が歪む。


(やばい…動悸がしてきた…)

すっかり忘れていた人物を思い出し、目眩もする。


「へぇー、王族なんだ。凄いなぁ。名前は何て言うの?」

「長すぎて覚えてねぇ」

瑞月の問いに、ジュリアスはハッキリと言い切った


「えー」


「…タマ…」


ルナマリアは、ボソッと呟いた。


「ああ?そう言えば、タマってなんか言ってたな……ルナ、知ってんのか?」

「会った事は無い」

出来れば一生会いたくなかった。








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