ベンジャルラレン編77
ヨウナが誰を選ぶのかは未だ分からないが、誰を選んでも、結構悲惨な駄目男達との壮絶なイベントをこなさないといけない。
(本当にごめんね…でも頑張って!!)
ルナマリアは心の中で心底応援した。
(でもこれでーーー私の役目はほぼ終わりかな)
聖女として覚醒し、皆に知れ渡った今、攻略対象者達は、ヨウナに付きっきりになる。
これからは、ヨウナと、攻略対象者達を見守れば、それで良い。
ルナマリアはただ、学園生活をのんびり過ごせば良くなるのだ。
(…わーい。嬉しいな…)
願ったり叶ったりのはずなのに、どこか寂しいと思うのは、攻略対象者と関わり過ぎてしまったからなのか。
「……明日から、誰とご飯食べようかなー」
他に一緒に食べる相手は思い浮かばないが、ただ、ポツリと呟いた。
(いや!でも自由でのんびり!ぐーたら!いいな!)
ルナマリアは一瞬で気持ちを持ち直した。
「ルナマリア!」
「!」
1人、輪の中から離れたはずなのに、名前を呼ばれ振り向けば、そこには、フラン、瑞月、レン、ジュリアスの姿があった。
「お疲れ様!すっごい格好良かったよ!」
満面の笑みで賞賛する瑞月。
「……最初からボコってやれば良かったんだよ」
「ジュリアスは、ルナマリアがイジメられてるのを、本当に心配していたんですよ」
「ちょっと黙ってろ!」
ぶっきらぼうに言うジュリアスに、レンが追加で補足する。
「やっぱり、ルナマリアは凄いな」
優しい笑顔を浮かべるフラン。
「………」
「ルナマリア?」
何も答えず、黙って自分達を見つめるルナマリアを不思議に思う4人。
「えっと…どうしたの?ヨウナはあっちだよ?」
ルナマリアは、聖女として輪の中心にいるヨウナを指さした。
「?そうだね」
「皆さんに囲まれて、大変そうですね」
それがどうしたの?と、我関せずの瑞月にレン。
「ちっ!現金なヤツらだぜ…」
「まぁまぁ、仕方ないよ。聖女の出現は本当に珍しい事みたいだからね」
今までヨウナをイジメていた奴等が、手のひらを返したように、愛想を振り撒いている姿に、ジュリアスは舌打ちし、フランはそれをフォローした。
「……これは……」
聖女の力に全く興味の無さそうな4人。
「牽制タイム…?!」
ルナマリアは、はっ!と、思い付いたように言った。
「牽制…タイムですか?」
「また何言ってんだ、ルナ…」
意味の分からない事を言い出すルナマリアを、揃って、呆れ、突拍子も無い思考を用心する。
(今ヨウナの所にいても、自分をアピール出来にくいし、何より!同じ攻略対象同士で、牽制し合ってるのね!!)
案の定、全く違う解釈をする。
「ルナマリア、もし誤解があるなら、解いておきたいんだが…」
「大丈夫。私、すっごく冷静だよ」
フランの切実な訴えを、即、一掃する。
(うん。全員を一気にヨウナの所に押し付けるのも、申し訳無い…か、流石に)
顔だけが取り柄の性格に難アリ攻略対象者を、可憐で優しいヒロインに押し付けるーーー。
正直、やろうとしてたけど、今はヨウナとも出会ってしまい、本当に優しくて、守ってあげたい!って思う可憐な女の子だと思ってしまった今、流石に罪悪感が沸く。
(本当にイベントに進んでしまった時は、私なんかでは助けにならないだろうから、無理だけど)
相変わらず、自己評価は低い。
(普段くらい、暴力や暴言、人身売買、ヒモ、ストーカークソ男達の魔の手から、ヨウナを守らなきゃ!……少し。なら!)
面倒臭がりなので、そこは少しで。
「……ルナマリア、また、凄い失礼な事考えてる気がする……」
「ああ。激しく同意だ」
1人、表情をコロコロ変えながら思いふけるルナマリアに、瑞月もフランも、頭を抱えた。
***
男子寮、1階ーーー。
普通の寮の部屋とは違い、模様替えされているような、豪華絢爛な部屋。
「何?聖女が現れただと?!」
その部屋の中、豪華なソファに1人偉そうに座っている男が、自分に仕えている家来の報告に、大きな声で反応した。
「そうか…!くっくっ。これは良い!聖女の力を手に入れれば、俺様の野望に大きく近付くぞ!」
「はい、ベンジャルラレン様」
家来にベンジャルラレンと呼ばれた男は、見目17歳程の美男子で、白いターバンを黒い髪に巻き、褐色の肌をしていた。
リアリテ学園の制服を着用しているが、ほぼ原型を留めていない程、リメイクされていて、装飾品をこれでもかと、ジャラジャラと身に付けていた。
「これでこの俺様!このベンジャルラレン=マグネシス=タマ=ハロゲン様が!我が祖国の王になれると言うものだ!はっはっははは!」
ベンジャルラレン=マグネシス=タマ=ハロゲン
それは、このゲーム《リアリテに舞い降りた聖女》の攻略対象者の1人ーーー。
ルナマリアに出会わなかった、攻略対象。
「聖女は俺様の物だ!道具に意思なんて必要無い!即刻、俺様の前に献上しろ!抵抗するなら、痛め付けても構わん」
「はっ!」
ベンジャルラレンの命令に忠実に頷く家来。
「くっくっくっ。楽しみだなぁ。逆らうようなら、躾が必要だ」
そう。
最低最悪の残念イケメンしかいないゲームの、本来の姿のままの、正真正銘の攻略対象者。
「まずは自分の立場を分からせる為に、床に這いつくばって、靴でも舐めさせてやるか」
救いようの無い、クズなのである。




