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「うーわぁ。マジかいなおっさーん」


ヨウナの傍、彼女に銃を向けたまま、ド派手な帽子を巻いた細身、18.9歳と思われる男は、ガンダルが戦えなくなった様子を見ていた。

ヘラヘラと笑っているその表情からは、言葉とは違い、焦っている様子は見られない。

「ごめんなぁお嬢ちゃん」

謝罪しながら、ヨウナに向かい銃を連発する。


「きゃぁああっ!!」


ヨウナに施されたルナマリアの守護の魔法により、ヨウナに到着する前に、弾は光の壁に阻まれ、衝撃が走る。

普通の銃とは違うその弾は、格段と威力が強く、何回目かで、光の壁は破れ、粉々に消えた。


だが、その間に、トコトコと歩いてきたルナマリアが、2人の元に到着した。



「君はガンダルさんのペアの人?」

「せぇーかいやでお嬢ちゃん!わいはイマルや!よろしゅーな!」

「イマル……職業をお聞きしても?」


戦闘中に職業を明かす事は普通は無いが、ここ学園では、自己紹介で職業を明かす風習がある。


「よー聞いてくれた!ワイは暗殺者やで!」

「……暗殺者!」

ド派手な帽子に、ド派手な服に、騒がしく陽気な喋り方。随分ド派手で明るい暗殺者がいるものだと、ルナマリアは感心した。


「おっさんは殺られてもーたけど」

「殺してないからね」

「あんはん、もう魔力切れかけてんのちゃう?」

「……」

「図星か?あんだけバンバン魔法使ってたんや。最後に大きな守護の魔法もつこうたみたいやし、魔力切れを起こしてもしゃーないわ」

ルナマリアの沈黙を肯定ととり、話を進めるイマル。


「これはペア戦!つまり!ワイがヨウナちゃんを倒せば、ワイらの勝ちや!」


ルナマリア達の勝利の条件は、ヨウナを守り切る事。

ヨウナの守護の魔法を破った今、魔力切れを起こしているルナマリアは、新しく守護の魔法を使えない。


「恨まんといてな」

イマルは、再度、ヨウナに銃を向けた。


「っ!」

「……ヨウナ、降参していいよ」

ルナマリアは、銃を向けられ、怯えるヨウナに向かい、淡々と言った。


「い、いいんです、か…?」

「いいよ。別に凄い勝ちたい訳じゃないし」


ルナマリアの目的は、自分とヨウナをイジメて来たいじめっ子達をとりあえずボコボコにして、イジメなんて二度としない。と、思わせる為の序章を開幕する事。


「イジメなんて、これから先の人生で一生したくない。って思わせてあげないと。ね」


満面の笑みで告げるルナマリアの台詞に、聞いていた、いじめっ子達は全員、鳥肌が立った。


「およー。ほんまにええんか?随分呆気ないなー」

拍子抜けしたように、イマルが言う。


本来、面倒くさがりで、しんどいのが嫌で、戦うのを避け、ぐーたらしたいのがルナマリアの本質。

ガンダルのあの正々堂々とした戦いの申し込みを断るのは空気的に忍びなく受けたが、本当はとても断りたかった。


「こいつなら断っても、うわー。めっちゃラッキーやん、うほー。で、終わるやろ」

「ルナマリアはん、心の声聞こえてんでー」

冷めた目でイマルを見ていたら、思わず考え事が口に出てしまった。



「…っ!」

すると、それまで大人しくしていたヨウナが、ビュッと、自身の服の袖から、鎖を、イマルに向けて放った。


「およ?」

「ヨウナ?」

簡単に避け、少し、距離を置くイマル。

ルナマリアも、驚いてヨウナを見た。


ヨウナの武器は鎖。鎖を、ムチのように使い、相手を攻撃する。


(初期設定のヨウナの攻撃力はとても低い)

何せ元はただの村娘。



「わ…私…ずっと、ルナマリアちゃんに守って貰ってばっかりだったから……せめて……私も、戦って、負けます…!」

今のヨウナが、冒険者であるイマルに勝てる筈が無い。

傍から見ても、カタカタと震えていて、怖がっているのが、分かる。


「マジかー弱いもんイジメは好かんのやけどなー」

「………」

(戦わないと……駄目か……)

ルナマリアは、そんなヨウナを見つめながら、遠い目を浮かべた。



「ルナマリア!心底面倒臭いって顔するんじゃない!」

フランは、そんなルナマリアに、離れた位置からツッコんだ。




諦めて杖を構えるルナマリア。

「あー、やっぱ戦っちゃうかぁー?」

「ヨウナ1人を戦わせる訳にはいかないよ」

ルナマリアの参戦に、ヘラヘラと笑いながら尋ねるイマル。

2人はそのまま、ヨウナを無視し、臨戦態勢に入った。


「…ルナマリアちゃん…!」

結局、なんの力にもなれない自分に、落ち込む。



(ルナマリアちゃんは、私が傷つかない為に、降参を勧めてくれたのに……!)

←違う。戦うのが面倒臭かっただけ。

(私の為に……戦いを止めようとしてくれたのに……!)

←違う。戦うのが、ただただ面倒くさかっただけ。

(私の覚悟を受けて、また、戦うことを選択してくれた…!)

←良い様に捉えすぎ。

ルナマリアは心底面倒臭い表情を浮かべていた。



ルナマリアは、こんな落ちこぼれな自分を、守ってくれた。

必要としてくれた。

励ましてくれた。


(私……ルナマリアちゃんの……力になりたい……!)


ギュッと、ヨウナは祈るように、目を閉じ、手を組んだ。



ーーーーーーーー



ピコンッ。

『聖なる力、発動します』


ヨウナの体から、魔力とも違う、不思議な力が目に見えて沢山の結晶となり、溢れる。


「なんやぁこれ!?」

見た事も無い光景に、戸惑いの声を上げるイマル。

それとは対照的に、ルナマリアは落ち着いていた。


「…これが…聖なる力…」

ルナマリアは、ゲームの画面で、この力を見た事があるから。


リアリテに舞い降りた聖女ーーヨウナだけが使える、特別な力。

結晶は、ヨウナから離れると、ルナマリアの周りに浮かんだ。






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