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ルナマリアの机の中は、画鋲や、落書きされたノートや、腐った果物等が撒き散らされていた。
「そ、それは僕じゃないぞ!第一、証拠が無いだろ!」
誰が犯人なのか。
それはルナマリアも分からない。
「だから?」
「何?!」
「犯人探し必要?証拠っている?疑わしきを全員罰していくだけだけど?」
只でさえ面倒臭いのに、いちいち犯人なんて捜していられない。
「なっ!それなら無実の人間がー!」
「加担してる時点で連帯責任でしょ。いじめっ子同盟にいちいち気なんて使わないよ」
今までの刑罰とかなら、証拠や犯人探しが必要だったが、ここは学校で、証拠や犯人が見付かっても、学園は何の対処もしてくれない。
それなら、好きにさせて貰う。
学園では、問題の対処は生徒同士に委ねている。
「先生は介入しないみたいだし、好きにさせて貰うよーーー楽しみだね、これからーー後悔させてあげるね」
ルナマリアは冷たい表情のまま、笑みを浮かべると、阿呆馬鹿男の捕縛魔法を解いた。
「……こんなっ!落ちこぼれの女なんかにっっ!!」
一切懲りていない阿呆馬鹿男は、そのままルナマリアに掴みかかろうと手を伸ばす。
「はい、もうやめましょうね」
それを、いつの間にか下に降りて来ていたレンが、間に入り止めた。
「!お前ーーレンか!!!」
「??え、はい。レンですが…」
「お前が…!学力テスト1位のレンか!!!」
言わずと知れた頭脳明晰なレンが、リアリテ学園で1位の学力の持ち主。
急に自分に詰め寄られ、困惑するレン。
「お前みたいな優秀な奴が!何でこんな落ちこぼれ共を庇う?!お前はこちら側の人間だろ!」
未だ自分が優秀だと信じて疑わない阿呆馬鹿男。
「私は全く優秀では有りません。だから、学園に通っているんです」
「ーーは?」
「少しでも力を手に入れたくて、学園に入学しましたーーー少しでも、追い付きたい人がいるので」
レンはチラリと、ルナマリアを見た。
「私程度の実力で優秀だなんて……恥ずかしいので、次からは言わないで頂けると幸いです」
真面目に全否定する、学園1位の実力の持ち主。
「ーーち、ち、ちくしょーー!!!!」
阿呆馬鹿男は、泣きながら、その場から走り去った。
「あ、あれ?私、何か失礼な事でも言ってしまいましたか?」
「ううん。私じゃなくてレンが言った方が効くみたいだし、助かったよ」
泣かせてしまった事に戸惑うレンに、ルナマリアはお礼を述べた。
ルナマリアが何を言っても何をしても、自分が優秀でルナマリアが落ちこぼれと一貫していたが、レンの発言には直ぐに心が折れていた。
彼には、テスト等の結果が全てなのだろう。
「さて、後は1人ーー」
ルナマリアは、最後の一人に視線を移した。
「貴方はいじめっ子…の仲間じゃ無かったよね」
学園の中では、歳上に見える30歳の男性は、ガタイが良く、背中には斧を背負っいる。
最初から、先程までの騒動の間も、彼は1歩もその場から動かなかった。
「私はガンダル……斧士、冒険者の端くれだ」
背中から斧を手に取ると、ガンダルは構えた。
「名のある大魔法使いとお見受けする。是非、お手合わせ願いたい」
「別に名のある大魔法使いじゃないですけど…」
ガンダルだけは、いじめっ子達に加担する事無く、1人、全ての戦いが終わるのを待っていた。
ーーールナマリアと純粋に対峙する為に。
「ペアは?」
「ご心配には及びません。ちゃんと、おります故」
「……成程」
(戦いにおいて、奇襲は効率的)
一緒に行動し、姿を見せておく必要は無い。
ガンダルは戦いに慣れていて、先程までの阿呆馬鹿チーム達とは違い、実力者である事が分かる。
(本当は戦いとか面倒だから心底断りたいんだけどなー)
しかしこれは授業。
逃げてもおいかけてかくるかもだし、何より、大変断りずらい。
「………………分かりました」
(沈黙が長かったな……戦うのが面倒なんだな)
長い長い沈黙の理由を、フランは的確に分析した。
「よし、行こうヨウナ」
「は、はいっ!」
こうなった以上、正々堂々、ペア同士で戦う。
他のチームはそれぞれ戦闘をある程度終わらせていて、自然と、ルナマリア達の戦いを見守る形になった。
「いざ尋常にーー参る!」
重たい斧を地面で引きづりながら、ルナマリアに向かう。
「守護魔法」
キィンッッーー!!!
斧と光がぶつかり、火花が散る。
「うおぉぉぉおおお!!!」
パキィィインンッッッ。
「!」
ルナマリアの光の守護魔法が打ち破られる。
ルナマリアは、魔法を使用し、体を逸らせながら、後ろに引き、距離をとった。
「……破られたのは初めてです」
「至極光栄だ」
目の前で行われる、ハイレベルな戦いに、生徒達の視線が釘付けになる。
(さて、どうしようかな)
ルナマリアは、ガンダルを見ながら思案する。
彼は強い。
ルナマリアの保護魔法を力でぶち破った。
「行くぞ!!」
思案している間にも、攻撃の手は次から次へと襲い来る。
魔法を使い、ガードしながら、避けて行く。
「ルナマリアちゃん…!」
心配そうにルナマリアを見つめるヨウナ。
そんなヨウナに忍び寄る、1つの影。
「!きゃあ!!」
「!ヨウナ」
ヨウナの悲鳴に気付き、意識がそちらに向かう。
それを、ガンダルは見逃さなかった。
「うぉぉおお!!!」
一瞬で詰め寄り、大きく斧を振り回す。
「ルナマリア!!」
周りで見学していた攻略対象達は、思わず、ルナマリアの名前を叫んだ。
「中守護魔法」
先程のとは違う、更に強い白い光が、壁となり、ルナマリアの前に現れる。
ギイイイィィィィンッッッ!!!
守護魔法に阻まれた斧は、その衝撃で破損し、欠片かパラパラと散った。
「ーーお見事」
ガンダルは、壊れた斧を見ながら、賞賛の言葉を口にし、戦いの手を止めた。




