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生き残っている僧侶の女が、悲鳴混じりに声を上げる。
「諦めんな!ならあっちをーー!」
そう言い、標的とされるのは、ヨウナ。
「っ!」
ヨウナは、自分に向けられた視線に、恐怖で息を飲んだ。
「ヨウナ」
そんなヨウナの手を、ルナマリアは優しく握る。
「大丈夫。あんな阿呆馬鹿チームに、可憐で可愛いヨウナを指1本触らせないよ」
「ルナマリアちゃん…!」
涙を溜めながら感動の声を上げるヨウナ。
「イチャイチャしてんじゃねー!!!」
剣士の男が、剣を振り下ろしながら、2人に立ち向かうーー
「止めろ」
それを、フランが喉元に剣を突き付けながら、止めた。
「さっきから寄って集って2人の女性相手にーー恥ずかしく無いのか!」
「恥ずかしかねーよ!あんなの女じゃねー!化け物だ!!」
「失礼だな…」
転生してからの容姿は、自分で言うのも何だが、結構可愛いと自負しているので、納得いかない。
「ルナマリアは可愛いよ!見る目無いな!どこに目を付けてるんだよ!!」
頭上から怒りながら声を張り上げる瑞月。
グリフォンは炎を口から出すと、1人、まっ黒焦げ(生きてます)にし、戦闘不能にする。
「な、何よ!何であんな化け物女なんかに、良い男が群がるのよ…!」
最初にルナマリアを無視し始めた女性の1人は、ルナマリアを化け物女と命名したようだ。
良い男は、攻略対象達を指す。
初めは、実力も無いのに良い男をはべらしているように見えたルナマリアが気に食わなくて、無視を始めた。
それが実際は、強くて、容姿も良くて、文句の付けようが無い。
「それはそれでムカつく…!」
結局、ルナマリアが気に食わなかった。
それが理由で、ルナマリアの実力がどうこうのは、あまり関係無かったのだろう。
(ふん、何よ!男はね、結局、私みたいに、か弱くて、守ってあげたくなるような子が好みなのよ!)
僧侶の女性は、周りを見渡し、1人手持ち無沙汰にしているジュリアスを発見すると、擦り寄った。
「ねージュリアス君!私、ルナマリアにイジメられてるの…!助けて、くれるよね?」
上目遣いでおねだりする。
「……」
ジュリアスは冷めた目で僧侶の女を見ると、スっと短剣を取り出した。
(やったぁ!やっぱり男って単純よね!)
「ありがとうジュリアスーーく、ん?」
ヒュっと、ジュリアスの投げた短剣が頬を掠り、髪がひと房切り落とされる。
「ざけんな……ルナにいちいち、ちょっかいかけやがって……殺されてーのか?」
「ひぃ!!止めっ!降参!降参します!!」
ジュリアスの本気の迫力に押され、僧侶の女は一目散に退散した。
「くっそぉ!僕の華麗な魔法捌きが効かないなんて!」
教室でルナマリアに窓から放り落とされた魔法使いの男は、まだまだ諦めておらず、何度もルナマリアに魔法を放ち、都度、防御の魔法に阻まれる。
「ふん!大方!何かズルでもしてるんだろ?!じゃないと、この大魔法使いの僕がこんな雑魚みたいな扱いを受ける筈が無いからな!」
「…逆に凄いな…」
これだけ魔法を叩き潰しているにも関わらず、ブレないその姿勢に感動する。
「だがこれはどうだ!僕の最高にして最強の魔法だ!行くぞ!雷よ、我の元に来、その力を示しーー」
「長いよ」
「へぶし!!」
スコーーンと、魔法で光をぶつけるルナマリア。
「何するんだ!僕の華麗な詠唱タイムを!!」
「本当の戦闘でそんな訳分からん時間を守ってくれる敵なんていないよ」
隙だらけだし、長いし、魔法を使うって宣言しちゃってるし。
意味が分からない。
「なんだと!僕は優秀なんだぞ!僕は学力テストでも3位の成績を残したんだ!」
鼻高々に自慢する。
「凄ーい」
鼻高々に自慢する男に、ルナマリアはパチパチと素直に拍手した。
「お前は最下位だろ!?無能なんだよ!落ちこぼれだ!」
「はぁ」
「分かったらさっさとこの学園から去れ!お前等みたいな落ちこぼれがいたんじゃ、この学園の価値が下がるってもんだ!」
ビシッと決めたように言う。
「…落ちこぼれ…」
隣のヨウナは、阿呆馬鹿男の言葉に落ち込んだようで、目を伏せ、悲しみを浮かべる。
ルナマリアは、そんなヨウナを見た後、阿呆馬鹿男に向き直した。
「黙ればーか」
「はぁ?!この僕が馬鹿?!」
「優秀がなんぼのもんよ。例え優秀でも、人を見下す権利、あんたにある?無いよね?格好悪ー」
「なんだと!」
「捕縛魔法」
呪文を唱えると、またも、白い魔法の縄が、阿呆馬鹿男の体を捕らえる。
「おい!またかよ!離せ!」
「君、もう2回も私に殺されてるね」
これが実践なら、間違い無く殺されている。
「弱いね」
「僕は弱くねぇ!」
「まだ言う?相手の実力も測れない。阿呆で馬鹿な、落ちこぼれのくせに」
ルナマリアは、自分に向かってきたーーイジメて来た奴等全員に向かって、言った。
「落ちこぼれはイジメて良いんだよね?」
「当たり前だ!」
(((もう止めろ馬鹿ーー!!!)))
既にルナマリアや他の攻略対象にやられたイジメっ子達が、圧倒的な実力差を見せつけられているにも関わらず、空気を読まずに肯定する阿呆馬鹿男を心の中で止める。
「そっか。なら、ルナもイジメようかな」
にっこりと笑顔で宣言する。
「ーーは?」
「落ちこぼれはイジメて良いんでしょ?なら、私に負けた全員、落ちこぼれだよね?楽しみだなぁー」
ダラダラと、いじめっ子達が冷や汗を流す。
「ふざけんな!なんで僕達がお前ごときにイジメられなきゃいけないんだ!!」
「何でやり返されないと思うの?自分達は大丈夫だとでも?」
「当たり前だ!」
「じゃあ、その考え方を後悔するまで、徹底的に遊んであげる」
机を蹴り、水をかけ、鞄を池に捨て、ノートをぐちゃぐちゃにして、実践訓練はズタボロにする。
「……」
(結構面倒臭いな…)
やる事が多いな。と、ルナマリアは思ったが、徹底的にやり返すと決めたので、とりあえず、やられたらやり返そうと決めた。
「今日は…机の中めちゃくちゃにされたから…」




