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その中でも、ゲーム中最も仲が悪く、喧嘩?戦闘?をしていたのが、フランと瑞月だった。
「……あの二人、どこで毎日殴り合いしてるんだろ……」
「……どこをどう見たら、そんな風にルナマリアは思うのでしょうか?」
仲良さそうに会話をしているフランと瑞月を見ながら言うルナマリアの台詞に、隣で聞いていたレンは、ルナマリアにしか見えない景色に戸惑いながら、尋ねた。
ピタッ。
教室に入る前、ルナマリアは足を止めた。
「ルナマリア?」
急に止まるルナマリアに、4人も振り向き、止まる。
「……魔力」
「え?」
教室の中から、微力な魔力を感じて、ルナマリアは入口を見上げた。
「古典的な手だね…」
ルナマリアは、4人を通り越すと、扉に手をかけた。
ボスッッ!!!
扉を開けた瞬間、黒板消しがルナマリアの頭上に落下し、チョークの粉が宙を舞う。
白く染まった髪や制服を、パッパッと払う。
「ルナマリア!大丈夫?」
心配して駆け寄る瑞月とレン。
「…てめぇ等…」
フランとジュリアスの表情は、怒りに染まっていた。
「ルナマリアちゃん…!」
そんなルナマリアを心配そうに見つめるヨウナの姿を見付けると、ルナマリアは、にっこりと微笑んだ。
「いつまでも調子乗りやがって、ただじゃーー」
ドスの効いた声でクラスメイト達を睨み付けるジュリアスを横切り、スタスタと歩くルナマリア。
そのまま、1人の男子生徒の前まで行くと、ピタッと止まった。
「あぁ?何か用かよ?」
魔法使いと思わしい男子生徒は、ニヤニヤと笑いながらルナマリアに尋ねた。
男子生徒の周りにいる生徒達も、クスクスと、ルナマリアを馬鹿にするように、この状況を楽しんでいるように笑う。
「いえーーただ、やり返そうって決めたので」
「は?」
次の瞬間、ルナマリアはガンッッッ!!!!とその男子生徒の机を思い切り蹴飛ばした。
「!なっ、何しやがるー!」
一瞬、呆気に取られたが、そのまま、怒り任せにルナマリアの襟元を掴み掛かろうとした所で、ルナマリアは魔法で杖を出した。
「束縛魔法」
「!?う、嘘だろ?!」
白い光がロープとなり、魔法使いの男を捕縛する。
一生懸命脱出しようと試みるも、身動きが一切取れず、もがくばかり。
「触ろうとしないでよ。気持ち悪いーー」
冷たい目で、冷たい言葉で、言い放つ。
それは、今迄のルナマリアの態度は全く違い、クラスメイト達は一様に凍り付いた。
「私、制服汚れちゃった。どうしたら良いと思う?」
抑揚の無い声で、無表情で尋ねる。
「どっーーどうーー」
蛇に睨まれた蛙のように、真っ青になる顔色。
「責任取ってよ。貴方でしょ?したの」
魔法を使い、黒板消しを天井から、ルナマリアに落とした。
なんて無駄な魔法の使い方なんだと、心底ルナマリアは思った。
「ねぇ、早く」
「ど、ど、どう。した、らーー」
「それをルナに聞くの?されたのはルナなのに?自分で考えられないの?馬鹿なの?」
容赦無く詰め寄る。
「じゃあ私が答えてあげるね。私の目の前からとりあえず消えてよ」
「え?え?え?」
ふわぁ。と、魔法で捕縛されたまま、宙に浮かぶ。
生徒はそのまま、窓の外に運ばれた。
「や!やめてくれ!待って!嫌だ!!殺さないで!!!」
ガタガタと震えながら泣き叫ぶ男子生徒。
「失礼な。殺さないよーー多分」
「多分?!」
「絶対」
そう答えると、ルナマリアは笑顔で手を振った。
「バイバイ」
「へ?ーーーぎゃぁぁぁああああ!!!!」
ジェットコースターの様に、地面に落下して行く。
「おい!大丈夫かー?!」
慌てて何名かが窓の外を覗き込むと、地面には泡を出して気絶している男子生徒の姿があった。
ーーーガッシャアアアンンンッッッ!!!!
教室に視線を戻すと、魔法で次々と机をぶっ壊して行くルナマリアの姿。
「ひぃ!」
「どく?それとも、一緒に木っ端微塵になる?」
机の上に座っていた女子生徒に、真顔で尋ねる恐怖の内容。
「ど!どくから!どくから止めて!」
慌てて机から離れる。
「破壊魔法」
ルナマリアは魔法を放ち、数ヶ所の机を一斉に破壊した。
「はーい。授業始めるわよー」
暫くして、教室にモモが入室する。
「あらー派手に散らかしてるのねん。さ、席につきなさーい」
教室の惨状に一言、感想を述べると、モモは何事も無かったように、授業を始めようとする。
「!先生!こんなっ!良いんですか?こいつがやったんですよ?!」
「そうよ!私達何もしてないのに!」
教師が来た事への安心感からか、やっと口を開くいじめっ子達。
ここぞとばかりに、ルナマリアを指差し、糾弾する。
「んー?好きにすればぁ?」
「「「は?」」」
「何度も言ってるけどぉ、教師は基本、揉め事にはノータッチなの。自分達で解決しなさぁい」
今迄、自分達がして来たイジメにも、教師は何も対処しなかった。
それは、反対になっても、同じ。
「まーでも、授業にあんまり支障をきたすのもあれだから、物品破壊は程々にして欲しいわん」
「はーい。分かりました」
モモの台詞に元気良く返事をするルナマリア。
そのまま、ルナマリアは自分の席に向かい、机の中を見た。
「ひっ!」
その際に聞こえる小さな悲鳴。
机の中には、画鋲や、落書きされたノートや、腐った果物等が撒き散らされていた。
「わー。昨日より酷くなってるー」
率直な感想。
ルナマリアは、チラリと、悲鳴を上げた生徒達を見た。
「ち、違っ!」
否定をしても、もう遅い。
「次は体育かー楽しみー」
にこやかに述べるルナマリアの台詞が、怖い。
「……えっーと……良かったのか、な」
「流石ルナ…」
「ルナマリア、格好良いー!」
「いや、少しやり過ぎでは…?」
攻略対象達は、そんなルナマリアの行動の変化に驚き、ただ、立ち尽くしていた。




