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普通の学校は教師が間に入るものだが、この学園では違う。と、ハッキリ断言される。
「そんなっっ!」
「ここでは自己責任。あのねぇ、殆どの生徒が冒険者で、優秀だってだけで入学させてるような場所よ?」
優秀であれば、性格に難アリだろうが、裏社会出自だろうが、関係無く入学出来る。
「問題が起こらない訳無いじゃないん。イジメなんて、まだ可愛いものよ」
実際、目の前の攻略対象達の方が、ゲームではヒロインに酷い事をやってのける。
人身売買しようとしたり、暴力を振るったり、斬りつけたり、暴言を吐いたり、ストーカーしたり、危険なダンジョンに放り込んだり……やりたい放題、酷い事をする。
「同じ冒険者同士なんだし、自分達で解決しなさい」
ハッキリと突き放される。
「……1人、ルナマリア以外にも、イジメに合っている生徒がいますが……」
と、レンはヨウナの事を指した。
彼女は、モモの言う冒険者には当てはまらない。
「そうねー。それは可哀想よねん」
ヨウナはただの村娘出身で、ルナマリアとは違い、深く傷付いているように見える。
ただの村娘には、冒険者を相手取り、立ち向かう事は出来ない。
「彼女の事は、おいおい考えるわー」
「そんな悠長な…」
「リアリテ学園は命の危険も付き物だって、入学の案内にも記載されてたでしょー?イジメくらい、本来、自分で対処して貰わなきゃねぇん」
ルナマリアは面倒がって読んでいないが、ここリアリテ学園は、授業の演習と称し、戦闘訓練や、何か外で問題が起き、依頼が来たら、対処にも行く。
ある程度の配慮は行うが、その中には、危険な魔物の退治の依頼も、ある。
長いリアリテ学園の歴史では、生徒が死亡した例も存在する。
ゲームでは、戦闘に負ければ、ゲームオーバー。
ただ、それはゲームだから、ロードすれば済むが、現実では違う。
「……貴方達、ルナマリアちゃんの事を言いに来たなら、それは大きな余計なお世話よん」
「どーゆー意味だよ?」
はぁー。と、モモは大きなため息を吐いた。
「ルナマリアちゃんって、黙ってやられるタイプなのん?」
「黙ってーー」
モモの言葉に、4人はルナマリアの過去の行動を思い返した。
襲い来る魔物は勿論、悪党パーティ、清香先生、ミスティアお嬢様。
降り掛かる火の粉を容赦無く、ルナマリアは払い除けてきた。
「ルナマリアちゃんは優秀な魔法使い」
それは彼女と行動を共にした者なら、誰もが理解する。
「そして、自分が害あると判断したものには、全力で立ち向かうタイプでしょん?」
フラン達には意味が理解出来無いが、前世ではパワハラやセクハラを訴えたりと、前世から戦っている。
「今、ルナマリアちゃんをイジメてる子達なんて、ルナマリアちゃんからしたら、対した事の無い相手なのよん。ルナマリアちゃんにとっては、相手にする価値も無いの」
彼女にとっては、取るに足らない相手。
「私達の力なんて必要としてないのよ、ルナマリアちゃんは」
やる気になれば、彼女はすぐに、いつでも、どこででも、立ち向かう事が出来るのだからーー。
モモの言葉に納得したのかは不明だが、攻略対象達は、教師がイジメについて何の対処もしないと分かり、そのまま、職員室から立ち去った。
「……真面目ねん」
「うむ!いじめっ子達は自分の立場に気付いていないな!」
出ていった攻略対象達を見ながら、モモとカザンは言った。
間違い無く、この学園で最も優秀な者達の一角が、ルナマリアとその攻略対象達なのだ。
「まともに立ち向かって適うはずないのに、馬鹿よねぇん」
今は見逃して貰っている立場だと言うことを、いじめっ子達は全く気付いていない。
正しく、自分の実力と、相手の実力を判別出来ていない。
「ああ!彼等を本気で怒らせても、いじめっ子達に勝ち目は無いのにな!」
律儀に教師に助けを求めて来たが、教師は、自分達で何とかしろ。と言った。
教師は手を出さない。助けない。
それは言い換えれば、相手にも当てはまる。
「教師が手を出さない事を、きっとあの子達が後悔する事になるわー」
「うむ!」
モモ達はそのまま、何も気にせずに、通常の業務ーーモモはお酒を飲み、カザンはスクワットを始めた。
***
次の日、朝。
いつもの様に朝食を堪能し、ルナマリアは教室へ向かう。
「おはようございます、ルナマリア」
「おはよう、レン、ジュリアス」
後ろから声をかけられ、振り向いて挨拶する。
朝から爽やかなレンと対照的に、不機嫌オーラMAXのジュリアス。
「今日も朝からご機嫌だねー」
「…嫌味かよ…」
朝の弱いジュリアスにとって、登校は毎日が戦い。
「お母さんにもっと感謝しなきゃ駄目だよ」
そんなジュリアスを毎日起こし、登校まで根気よく声をかけ、連れて来てくれているレンの姿は、保護者ーー母親に見える。
「母親になった覚えはありませんが……毎日、朝が弱いのに、ジュリアスは本当に凄く頑張っていますよ」
毎朝ジュリアスの面倒を見るのは大変だろうに、笑顔でジュリアスを褒める。
「………」
いつもなら何か反論しそうな所だが(『うるさい』『子供扱いすんな』)、ジュリアスは言葉を飲み込んでいた。
本人も迷惑をかけているのは重々承知しているのだろう。
「おはよう、ルナマリア」
「ルナマリアー!おはよう」
次いで後ろから、フランと瑞月の姿が見えた。
「おはよ。あれ?今日遅いね」
いつもフランと瑞月は、ギリギリに教室に到着する3人と違い、早目に教室にいる。
「僕が忘れ物しちゃって。フランには先に行っても良いって言ったんだけど、待っててくれたんだ」
「まだ十分間に合うしな。気にしないでくれ」
フランと瑞月も、同室同士、仲良くしているようだ。
「…殺伐としている空気、どこ行ったんだろ…」
ゲームでは攻略対象全員、仲が良かった印象が無い。
どちらかと言えば、血みどろの仲の悪さのイメージ。




