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ルナマリアはトコトコと倒された自分の机の方まで歩くと、よいしょと、机を元に戻した。


「フラン、ありがとー」

そのまま、机の中身を拾ってくれているフランにも笑顔でお礼を言う。


「いや!そんな悠長な…!もっと怒っていいんだぞ!一体誰がこんなーー」

「いーよいーよ。きっと風か何かで倒れだけだよー」

犯人探しをしようとするフランを、軽く止める。


ルナマリアはパラパラとノートを捲った。

「うわ!落書きだ」

ルナマリアのノートは、所々切り刻まれていたり、赤いペンで出ていけ!や、死ね!等の文字。



そう。

ルナマリアはがっつりイジメられていた。



「いいのか?!」

「うん」

ただし、当の本人は一切気にしていないらしく、どこ吹く風。



「はーい。なぁにぃ?もう授業始まるわよー席に戻りなさーい」


いつもの間にか教室に入ってきたモモが、パンパンと手を叩きながら言うと、ルナマリアは大人しく席に座った。

渋々、フランも瑞月もレンも、着席する。


「さ、授業を始めるわよん」

そのまま、一限目の授業が何事も無かったように、始まったーー。






***


「ねぇ!ちゃんと先生に言おうよ!」


昼休憩。

いつもの様に攻略対象者軍団とルナマリアでお昼をとる。


本日は食堂では無く、校舎の屋上。

寮には厨房も設置されていて、生徒は自由に使う事が出来、今日はフランがルナマリアにお弁当を作ってくれていた。


「何を?」

パクパクと箸を動かしながら、瑞月の言葉に疑問符で返すルナマリア。


「イジメに決まってるでしょ!」

大きな声で返答する。


「えーいーよ。面倒臭いし」

「そう言う問題か…?」

当の本人のルナマリアが拒否するのを、フランは呆れながら見た。



入学試験の、お昼休憩から、ルナマリアは一部の女子、男子生徒数名に、イジメを受けるようになった。



無視から始まり、聞こえる悪口に、物を盗まれたり、落書きされたり。

初めは無視程度だったが、最近はエスカレートして、今日は机まで倒され、1部破壊されていた。


「あ?ーー何か今日あったのか?」

「大丈夫。何も無いから」


案の定遅刻して朝の出来事を知らないジュリアスに、即、否定する。

以前、落書きされたノートをジュリアスに見られた際、『……殺す……』と殺意を露わにされたので、暴走されたら堪らない。

これに関しては皆同じ意見なので、ジュリアスの前では黙る他無い。


「大丈夫だよ。私、イジメられるの慣れてるもん。ね、瑞月」

「慣れない方が良いよ、それ」


昔、瑞月の所でも、瑞月ファンクラブにイジメられた事があった。

あれは操られていただけで、発端は清香(きよか)先生だったけど。


「一応、やり返してるよ?」

無視、悪口は流してるが、盗まれたり物は取り返してるし、水を掛けられそうになったら魔法で反対にやり返してるし、机はーーーまぁ元に戻せば良いだけだし。

前回と同じ様に対応している。

魔法だと気付かれないように。

だから、ルナマリアが何かしているとは、いじめっ子達も気付いていない。



ルナマリアは、優秀過ぎる程の、魔法使いである。


魔力の制御を完璧にこなす為、同じ魔法使いでも、ルナマリアの魔力に気付けない。

魔力量のテストを、高価な水晶玉を破壊しない為に、ほんの少しの魔力で対応した。

だからこそ、クラスメイトは、ルナマリアが優秀な魔法使いであると、気付いていない。

寧ろ、自分達より遥かに劣っていると思っている。




そんなルナマリアが、飄々と、何も気にしていないような涼しい顔で、イジメを躱しているのが面白く無いのか、徐々にやる事か大胆になってきている。


「本当に大丈夫なんですか?」

レンが心配そうに、尋ねる。


朝から聞いていたのは、この事だったのかと、納得。

「うん。心配してくれてありがとう」



悪口の内容は、『何の力も無い癖に』『学園に相応しくない』『落ちこぼれ』等、テストの様子を見て、学力・体力で最下位!だった、ルナマリアに対しての評価から来るもの。

それに、魔力も少ないと勘違いされ、特殊な力も無い。


(確かに、ルナはこの学園に相応しく無いもんね)


相変わらず、自分を優秀だとは全く思っていないルナマリアは、悪口の内容は正しいと感じていた。


優秀な者しか入学出来ないリアリテ学園に自分が入学出来たのは、何かの手違い、何なら、女神様のコネ入学では無いかとすら疑っている。


(そんな人が同じクラスメイトだったら、嫌になるものなのーーかな?)

と、仕方無いか。と、納得した。


たまに聞こえる、『なんであんな女が、チヤホヤされるの!』『ずるい!』は意味が分から無いが。



「ーールナマリア、助けが必要になったら、ちゃんと俺達を頼るんだぞ」

「うん、分かった。助けが必要になったら、頼るね」

フランの言葉に、ルナマリアは笑顔で頷いた。







***




放課後ーーー。


ルナマリアは寮に戻る前に、甘い物でも食べて帰ろうと、食堂に寄り道をしようと、校舎を1人、歩く。


いつもなら放課後は寮に戻るまで、誰かと一緒に行動する事が多いが、今日は皆用事があるとどこかに行ってしまった。


真っ直ぐに寮に戻る事を勧められたが、『私、誰かにやられたりしそう?』と、聞くと、何も言われなくなった。

別に命を狙われている訳では無いのだけど……。


(いつかリンチ?とかされるのかな?)

寄って集って1人の生徒をいじめる。みたいな、ドラマとかである展開。

流石に暴力ふるわれ出したら、痛いのは嫌だし、ハッキリとやり返すけど……。


(出来れば波風立てず、ゆるーく過ごしたいんだけどなぁ…)


そんな風に考え事をしていると、中庭の方に、1人の女子生徒の姿が見えて、ルナマリアは立ち止まった。



「ヨウナ?」



それは、このゲームのヒロイン、ヨウナだった。

中庭の池に、靴を脱ぎ、足をつけて、何かを探している。





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