67
ルナマリアはトコトコと倒された自分の机の方まで歩くと、よいしょと、机を元に戻した。
「フラン、ありがとー」
そのまま、机の中身を拾ってくれているフランにも笑顔でお礼を言う。
「いや!そんな悠長な…!もっと怒っていいんだぞ!一体誰がこんなーー」
「いーよいーよ。きっと風か何かで倒れだけだよー」
犯人探しをしようとするフランを、軽く止める。
ルナマリアはパラパラとノートを捲った。
「うわ!落書きだ」
ルナマリアのノートは、所々切り刻まれていたり、赤いペンで出ていけ!や、死ね!等の文字。
そう。
ルナマリアはがっつりイジメられていた。
「いいのか?!」
「うん」
ただし、当の本人は一切気にしていないらしく、どこ吹く風。
「はーい。なぁにぃ?もう授業始まるわよー席に戻りなさーい」
いつもの間にか教室に入ってきたモモが、パンパンと手を叩きながら言うと、ルナマリアは大人しく席に座った。
渋々、フランも瑞月もレンも、着席する。
「さ、授業を始めるわよん」
そのまま、一限目の授業が何事も無かったように、始まったーー。
***
「ねぇ!ちゃんと先生に言おうよ!」
昼休憩。
いつもの様に攻略対象者軍団とルナマリアでお昼をとる。
本日は食堂では無く、校舎の屋上。
寮には厨房も設置されていて、生徒は自由に使う事が出来、今日はフランがルナマリアにお弁当を作ってくれていた。
「何を?」
パクパクと箸を動かしながら、瑞月の言葉に疑問符で返すルナマリア。
「イジメに決まってるでしょ!」
大きな声で返答する。
「えーいーよ。面倒臭いし」
「そう言う問題か…?」
当の本人のルナマリアが拒否するのを、フランは呆れながら見た。
入学試験の、お昼休憩から、ルナマリアは一部の女子、男子生徒数名に、イジメを受けるようになった。
無視から始まり、聞こえる悪口に、物を盗まれたり、落書きされたり。
初めは無視程度だったが、最近はエスカレートして、今日は机まで倒され、1部破壊されていた。
「あ?ーー何か今日あったのか?」
「大丈夫。何も無いから」
案の定遅刻して朝の出来事を知らないジュリアスに、即、否定する。
以前、落書きされたノートをジュリアスに見られた際、『……殺す……』と殺意を露わにされたので、暴走されたら堪らない。
これに関しては皆同じ意見なので、ジュリアスの前では黙る他無い。
「大丈夫だよ。私、イジメられるの慣れてるもん。ね、瑞月」
「慣れない方が良いよ、それ」
昔、瑞月の所でも、瑞月ファンクラブにイジメられた事があった。
あれは操られていただけで、発端は清香先生だったけど。
「一応、やり返してるよ?」
無視、悪口は流してるが、盗まれたり物は取り返してるし、水を掛けられそうになったら魔法で反対にやり返してるし、机はーーーまぁ元に戻せば良いだけだし。
前回と同じ様に対応している。
魔法だと気付かれないように。
だから、ルナマリアが何かしているとは、いじめっ子達も気付いていない。
ルナマリアは、優秀過ぎる程の、魔法使いである。
魔力の制御を完璧にこなす為、同じ魔法使いでも、ルナマリアの魔力に気付けない。
魔力量のテストを、高価な水晶玉を破壊しない為に、ほんの少しの魔力で対応した。
だからこそ、クラスメイトは、ルナマリアが優秀な魔法使いであると、気付いていない。
寧ろ、自分達より遥かに劣っていると思っている。
そんなルナマリアが、飄々と、何も気にしていないような涼しい顔で、イジメを躱しているのが面白く無いのか、徐々にやる事か大胆になってきている。
「本当に大丈夫なんですか?」
レンが心配そうに、尋ねる。
朝から聞いていたのは、この事だったのかと、納得。
「うん。心配してくれてありがとう」
悪口の内容は、『何の力も無い癖に』『学園に相応しくない』『落ちこぼれ』等、テストの様子を見て、学力・体力で最下位!だった、ルナマリアに対しての評価から来るもの。
それに、魔力も少ないと勘違いされ、特殊な力も無い。
(確かに、ルナはこの学園に相応しく無いもんね)
相変わらず、自分を優秀だとは全く思っていないルナマリアは、悪口の内容は正しいと感じていた。
優秀な者しか入学出来ないリアリテ学園に自分が入学出来たのは、何かの手違い、何なら、女神様のコネ入学では無いかとすら疑っている。
(そんな人が同じクラスメイトだったら、嫌になるものなのーーかな?)
と、仕方無いか。と、納得した。
たまに聞こえる、『なんであんな女が、チヤホヤされるの!』『ずるい!』は意味が分から無いが。
「ーールナマリア、助けが必要になったら、ちゃんと俺達を頼るんだぞ」
「うん、分かった。助けが必要になったら、頼るね」
フランの言葉に、ルナマリアは笑顔で頷いた。
***
放課後ーーー。
ルナマリアは寮に戻る前に、甘い物でも食べて帰ろうと、食堂に寄り道をしようと、校舎を1人、歩く。
いつもなら放課後は寮に戻るまで、誰かと一緒に行動する事が多いが、今日は皆用事があるとどこかに行ってしまった。
真っ直ぐに寮に戻る事を勧められたが、『私、誰かにやられたりしそう?』と、聞くと、何も言われなくなった。
別に命を狙われている訳では無いのだけど……。
(いつかリンチ?とかされるのかな?)
寄って集って1人の生徒をいじめる。みたいな、ドラマとかである展開。
流石に暴力ふるわれ出したら、痛いのは嫌だし、ハッキリとやり返すけど……。
(出来れば波風立てず、ゆるーく過ごしたいんだけどなぁ…)
そんな風に考え事をしていると、中庭の方に、1人の女子生徒の姿が見えて、ルナマリアは立ち止まった。
「ヨウナ?」
それは、このゲームのヒロイン、ヨウナだった。
中庭の池に、靴を脱ぎ、足をつけて、何かを探している。




