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「まだまだ話したり無いんじゃが」
「また次の機会にしましょーねん」
そう言って、モモはセンダル校長を後ろに下がらせた。
「よし!では、今からが本番だ!」
変わって、カザンが前に立つと、生徒達に大きな声で話した。
「本番?」
首を傾げるルナマリアに、攻略対象者全員が、ルナマリアを見た。
「まさか、知らないのか?」
「だ、大丈夫?」
「……マジかよ」
「ルナマリアなら、大丈夫ですよ」
「え、何?」
全く検討も付かないルナマリアは、4人の反応に一気に不安になった。
「リアリテ学園!入学実力テストを始めるぞ!!」
「入学実力テスト??」
カザンの言葉に、ルナマリアはポカンとしながら、ただ、言われた言葉を復唱した。
リアリテ学園名物、入学実力テスト。
授業が本格的に始まる前に、それぞれの実力を確認する為に行われる、武術、勉学、魔法、特殊枠の4つに構成されるテスト。
「きちんと事前に知らされている筈だぞ」
「そ、そんなのあったっけ?」
「ルナマリア、ちゃんと手紙読んでる?寮にも張り紙されてたよ」
フランも瑞月も、心配そうにルナマリアに声をかけた。
手紙はきちんと読んでいないし、寮の張り紙も一切見ていない。
「学園側も、今の実力を測りたいだけですし、気負いする必要は無いと思いますよ」
意図を正確に把握し、伝えるレン。
「……サボってる奴もいるしな」
ジュリアスは周りの生徒を見渡しながら、告げた。
「知り合いでもいるの?」
「知り合いじゃねーよ。ただ……部下が要注意人物って、調べて来た奴がいねぇ」
先生の個別情報を調べてたり、生徒を調べてたり、何故?
弱味でも握って、下僕にでもしようと思って調べてるのか?
「何かの役に立つかと思って、部下が調べて来ただけだ!」
「私、今、声に出てた?」
「顔が物語ってんだよ!!」
どうやら言いたい事が顔に出てしまっていたらしい。
口に出してはいなかったので、セーフ。
「はいはい。ルナマリアちゃん達はこっちよ。クラスは別々でテストを行うわ」
今回、100人近くが招集され、クラスは3組に分類された。
ルナマリアがいるのは、ヒロイン、攻略対象者達がいる、メインのクラス。
「このクラスの最初は武術……体力測定よ」
他2クラスは、それぞれ魔法測定、学力測定の為、陸上競技場から離れ、残されたのはルナマリア達のクラス。
「体力測定…!」
体力が呆れる程無いルナマリアからしたら、地獄の時間の始まりで、この場から逃げ出したい衝動に駆られた。
(聞いてない聞いてないー)
ゲームでこんなのあったっけ?
んー。と頭を捻らせると、ポンッと、手を叩いた。
「あった気がする…」
ゲームではプロローグの部分で一瞬で終わっていたが、今から実力テストですー!頑張らなきゃー!みたいな流れあったような気がする。
こんなの、忘れるに決まってる。
てか覚えてない。
「ゲームみたいに一瞬で終わってくれればいいのに…」
終わった後に、ヒロインのステータス画面が開けるようになる仕組みだったのを、今、思い出した。
「よし!では準備は良いか?!」
カザンが手を上げ、振り下ろすと、スタートラインに立っていた生徒達が、ゴールに一斉に向かい走り出す。
「うむ!まぁまぁだな!次!」
男女関係無く4人1組で順序よく走り出す。
ちなみに、この制服は普通の制服とは違い特注で、動きやすく、防御にも優れている耐久性ばっちりな物なので、着替えはしていない。
女子生徒はちゃんと下にスパッツも着用している。
「よし、次!」
生徒に冒険者が多いからか、皆、一様にスピードは速く見えるが、その中でも、群を抜いて目立った存在がいた。
「よーい!ドンだ!!」
カザンの合図と共に、一斉に走り出す。
その中で、まず抜きん出たのは、ジュリアスで、盗賊なだけあって、流石、速い。
だが、そんなジュリアスに後半、並ぶのはもう1人、フランだ。
「ゴール!OKだ!素晴らしいぞ!よし、次!」
「っ、はぁっはぁっ」
「はぁっ、速いな、ジュリアス」
お互い全力を出し切ったのか、息も絶え絶えで、フランはジュリアスに話しかけた。
「っ、くそっ!」
スタートは圧倒的にジュリアスが有利だったが、後半、失速したのも有り、フランが追い付いた。
「自分がまだまだだと思い知ったよ」
が、最後の最後、届かなかった。
「この学園に来て良かった。俺はまだまだ強くなれそうだ」
「……ふん」
スピードに自信があったジュリアスは、まさか追い付かれるとは思っておらず、悔しそうに、ギュッと拳を握り締めた。
クラスメイトの中でも、2人は抜きん出て優秀。
「流石だねー」
そんな2人に、ルナマリアは離れた所から賛辞を送った。
「僕は全然、駄目駄目だったールナマリア、慰めて?」
可愛く上目遣いでおねだりする瑞月。
「よくゆーよ。全然平均だったじゃん」
攻略対象者の中では、レンが1番下で、平均より下。
「やっぱり、皆さんには敵いませんね」
レンは爽やかな笑顔を浮かべながら、汗を拭った。
「よし、次!」
「そろそろじゃない?ルナマリア」
「行ってらっしゃい」
瑞月、レンに送り出され、嫌々、スタートラインに立つ。
(なんか本当に学校思い出すなー)
前世でもこんな事した気がすると、スタート直前に懐かしんだ。
「よし!スタートだ!!」
手が振り下ろされる。
ルナマリアは、一生懸命、駆け出したーーー。
結果、最下位だった。
「ぜぇ、ぜえっぜえっ」
「大丈夫ですか?ルナマリア!」
思い切り肩で息をするルナマリアを、レンが心配し、水を差し出す。
「落ち着け、呼吸を整えてー」
「ぜぇはぁぜぁはぁっ」
フランの声は届かない。
「……ルナ、そー言えば体力無かったな」
のんびり生きるのが信条なので、普段走ったりなんてしないで生きている。
「昔より体力無いかも…」
前世の方がまだ動けていた気がする。と、ルナマリアは今の体の限界を噛み締めた。




