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「おはよ、ジュリアス」

「!ルナか…おはよ」


乱暴に椅子を引き、座ると、ジュリアスは大きな欠伸をした。


「昨日寝てないの?」

「……夜行性なんだよ」

「っぽいね」

朝はとても苦手そうだ。


「おはようございます、ルナマリア」

レンは、ルナマリアに向かい挨拶すると、そのままルナマリアの前の席に座った。


「おはようレン。ジュリアスを連れて来てくれてありがとう、お疲れ様」

「いえいえ」


労りを込めて、ルナマリアがお礼を述べると、レンは小さく微笑んだ。

キャー。と、後ろからまた黄色い声が小さく聞こえた。

イケメン2人がまた増えたのだから、それは盛り上がるだろう。


「うるせぇなぁ…」

「駄目ですよ。問題を起こさないように、モモ先生に忠告されたばかりです」

ただ、ジュリアスには雑音に聞こえるらしく、ギロリと、女の子達を睨み付けるが、即座にレンが注意した。


「凄い…飼い慣らしてる…!」

「誰が飼い慣らされるか!!」

率直な感想を述べたのだが、ジュリアスには不服だった。


「ルナマリアは昨日は良く眠れましたか?」

「うん、ばっちり」

夜には体力が無くなるので、ルナマリアは基本早く眠りにつく。

(そう言えば、ミスティアお嬢様の姿が見えないな…もしかして、もう追放されたのかな…)




ガララ。

そうこう話をしていると、1人の少女が、ひっそりと教室の中に入って来た。

1人、席次表を確認し、席に座る。


栗色の髪につけている赤い花の髪飾りに、綺麗な青い色の瞳。

その少女に、ルナマリアは見覚えがあった。



(ゲーム《リアリテに舞い降りた聖女》ヒロイン、ヨウナ!!)



背中越しで見るヒロインの体は小さくて華奢で、守ってあげたくなるような、儚げな表情!!


(……あんな1人の女の子に、私は全、攻略対象を押し付けようとしてたのか……)

実際にヒロインを見て、急に罪悪感が押し寄せた。



「ルナマリア?どうしたんですか?」

急に黙ってしまったルナマリアを心配して声をかけるレン。


「……女の子を危険な目に合わせるのは、本当に駄目な事だと思うの……」

ルナマリアは、視線をヒロインから戻すと、レン、ジュリアス、2人に、真剣な表情で訴えた。


特殊な力を持つヒロインを人身売買しようとしたり、借金返済の為に危険なダンジョンに送り込んだり……。

絶対にしてはいけない!!!


「?そうですね」

「…お前…また何か失礼な事考えてんだろ」

レンは素直に肯定し、ジュリアスはルナマリアの思考を理解し、睨み付けた。







***



モモとカザンの誘導で、ルナマリア達は教室から、先程のグラウンド、その広大な設備の中の、コンクリートが引かれた陸上競技場に

案内された。


「競技場?」

(なんでこんな所で?)


ルナマリアは周りを見渡した。

とても広い円周、様々な競技の道具。

生徒達の前には、学園の関係者が、ズラッと勢揃いしている。



「では皆!今から入学式を執り行うぞ!」

日本の学校とは異なり、整列などはしておらず、各々が好きな場所にいたが、カザンの大きな声で、生徒達が一斉に前を向いた。


皆に注目される中、1人の老人が、ゆっくりと生徒達の前に立った。



「ほっほっ。皆の衆、入学おめでとう。

無事に入学された事を、嬉しゅう思う。わしは《センダル》。一応、この学園の責任者を任せれておる立場じゃ」



最高の人材を集め、育成するリアリテ学園最高責任者。

白髪の、白い長い髭を生やした、小柄な老人。


「20年ぶりの開校となるが、今回の生徒は豊作揃いだと聞いておる」

「20年ぶり?」


「リアリテ学園は優秀な者達が集まった時に開校されるので、毎年生徒が入学してくる訳では無いんですよ」

ルナマリアの疑問に、即答えてくれるレン。


「だから先輩・後輩がいないんだ…」


年齢層がバラバラなのも、ただその時期に招待された者達で構成されているからなのだと、納得する。



「わしは預言するーーこの中の誰かが、きっとこの世界を救う事になる。と」

センダル校長の言葉に、一斉に生徒達はザワついた。


「センダル様は、特殊な力、未来を見通す、預言の力をお持ちの方です。センダル様の預言のお言葉は、強い重みが有ります」


最早ルナマリアが何も聞かなくても、レンは進んで説明してくれるので、とても助かる。

ゲームでの戦闘中の長々続くうんちくは本当に邪魔だったけど、今は本当に感謝。


(センダル校長の預言は正解)

ヒロインは、選んだ攻略対象と共に、魔王を倒し、この世界を救う。



「だが、これはただの預言じゃ。本当にそうなるかは、主等の今後の行動次第ーーー精進せよ」

センダル校長は鋭い目付きで、言い放ち、生徒達はゴクリと、唾を飲み込んだ。




「では、本題じゃ。

この学園の創立の歴史から、まずは話して行こうと思う。1番最初はーーー」

先程の重い空気から一転、センダル校長はペラペラと、学園創立までの長い道のりから始まり、今に至るまでの運営、卒業生の活躍、今後期待する事などを、話し始めたーーー。




***


1時間後ーーー。


「そもそも、この学園は特別な作りで出来ておりーー」


2時間後ーーー。


「わしが何故最高責任者になったかと言うとーー」





(誰か止めてーー!!!)


永遠に続く長いセンダル校長の話に、ルナマリアは心底願った。


(そう言えば、校長先生の話って、長かったよね…)

昔を懐かしむが、それでも、長過ぎではないかと思う。


「もう飽き飽きしてきたよ…」

「くそ…やっぱりサボれば良かった」

瑞月(みづき)も疲れを隠さずに、呟き、ジュリアスも後悔を口にする。


そんな中、真面目なフランとレンは、特にレンは、しっかりとセンダル校長の話を聞き入っている。



「校長ぉーそろそろ止めとかないと、日が暮れるわよー」

朝から入学式が始まり、センダル校長の話だけで2時間、時間が経過している。


「おや。もうそんな時間か?」

「うむ!そろそろ生徒も限界だろう!」

まだ話し足りなさそうなセンダル校長を、モモとカザンが止めてくれたので、ルナマリアは心底感謝した。












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