入学式61
「そんなつもりは……たまに口走っちゃってたりしてるのかな」
完全には否定出来ない。
取り乱したり、無意識に口に出してしまっている事がある。気がする。
「たまにーー?」
「もしかして、私、結構あるの?」
無意識なので、あまり自覚が無い。
「久しぶりの学校生活かぁーちょっと面倒…」
瑞月は、和の国ツキナリで、魔物使の為の学校に通っていた。
「俺は学校自体が初めてだ」
対して、フランの育った村は小さく、学校そのものが無かった。
「私も……凄い久々だなー」
今世では勿論学校に通っていないので、前世にまで遡る。
勉強も運動も苦手で、良く先生に怒られていた気がする。
「学校とはどんなものなんだ?」
「僕の通ってた学校は魔物使を育てる為の学校だったけど、ここって色々な優秀な人を集めてるらしいから……でも基本、冒険者が多いって聞くし、体を動かしたりする事が多いんじゃないかな。知らないけど」
「あはは。何だそれ」
「……」
普通の男子生徒っぽく会話している2人を、ルナマリアは黙って見つめた。
(意外と仲良くしてる…?)
ゲームでは殺伐とした雰囲気だったのに。
どちらが魔物を殺すかで、1度、本気の乱闘騒ぎになり、ヒロインが止めるという意味の分からないイベントもあった。
本校の門を潜り、中に入ると、そこには広大なグラウンドがあった。
「凄…和の国の比じゃない位広いね」
グラウンドにはプールや、小さな森、草原、砂地、山など、様々な場面を想定された設備が整っている。
そのまま、グラウンドを抜けると、校舎が見えて来た。
3階建ての、グラウンドに対しては小さいが、立派な建物。
「先輩とか今日何してるんだろーね」
「リアリテ学園は僕達の学年しかないよ」
「そーなの?」
(そう言えば、先輩・後輩なんて、ゲームには登場していなかったな)
「ルナマリア……本当に学園に入学する気無かったんだな」
何一つ学園の事を知らないルナマリアに、フランは深くため息を吐いた。
「そう言えば、ジュリアスとレンは?」
ルナマリアはキョロキョロと2人の姿を探した。
こう言った時、レンがいれば、聞かなくても人間辞書としての力を発揮し、色々説明してくれそうなもの。
「入学式をサボろうとしたジュリアスを、レンが朝から説得して、急いで準備をしていたが、まだ来ていないようだな」
「…レン、優しいもんね」
問題児を見捨てない優しさを持ち合わせている。
ちなみに、ジュリアスとレンも相部屋。
どんな人でも見捨てない優しいレンなら、口の悪いジュリアスを任せても一安心出来る。
ちなみにこの2人の部屋は、1部のファンからは金がめつ部屋と呼ばれていた。
悪どい商売で金集めをしていたジュリアスに、借金返済の為に金をとことん欲するレン。
「あら、いらっしゃーい」
そのまま校舎へ入ると、中には教師やら生徒やら、職員やら、人が大勢いて、その中で、モモが3人を迎えた。
「おはようございますモモ…先生」
今日からこの学園の生徒で、モモは教師なのだから、この呼び方が正解だろう。
「ふふ。おはよう」
ウィンクをして返事を返すモモ。
前と変わらない、生足を出している若々しい格好で、色気たっぷり。
実年齢が50代とは全く分からない。
「モモ先生は人間なんですか?」
「結構失礼な事聞いてるよ、ルナマリア」
ルナマリアの、本人は至って真剣に尋ねている内容に、隣にいたフランは呆れたように口を開いた。
「こー見えて人間なのよん」
「凄いですね。美の秘訣って何なんですか?」
真剣に興味がある。
「うふふ。それはまた今度ねぇん。今は教室に案内するわよ」
階段を上がり、先に進む。
「はい、ここよ。時間まで大人しくしてねー。問題、起こしちゃ駄目よ」
「分かりました。ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、お礼を言うフラン。
そのまま、モモと別れると、ガラッと、瑞月が先頭で教室の扉を開けた。
教室の中は普通の基準よりかは広く設定設定されていて、机も椅子も、安っぽくは無く、しっかりしている。
流石は最高峰の学園。
「わぁー懐かしい」
「な、懐かしいの?」
「いや、絶対初見だよな?」
ゲームでの画面で身に覚えがあるルナマリアに対して、瑞月もフランも、それぞれつっこんだ。
ガヤガヤと。
騒がしかった教室が、3人が入室して来た事で、女子生徒を中心に、1層、騒がしくなった気がする。
黒板に書かれた席次表を見て、ルナマリアは窓枠の1番後ろの席に着いた。
フラン、瑞月達は前の方で、席は離れてしまった。
(後ろの席ラッキー)
この感覚は、前世でも変わらない。
窓枠で、外も見れるし、とても最高な席。
1人、気ままに窓の外を見ていると、後ろに立っていた女の子達の声が聞こえてきた。
「ねぇ、あの人達格好良くない?!」
「ねー!冒険者かしら?卒業したら、私とパーティ組んでくれないかしら?」
「きっと学者よ!私は、一緒に研究したいわ!」
成程。
女子生徒を中心に騒がしくなったのは、フランと瑞月のイケメンを見たからか。と、納得する。
確かに、顔立ちは整ってるし、何度も言うけど顔は良い。
ゲームでもキャラデザは良かった。
性格が最低最悪なまでに終わってるだけで。
(いいなぁ。私もキャーキャー言いたい!ときめきたい!)
普通、イケメンを見たら、格好良いし、キャーキャー言うし、心臓がドキドキするのに、攻略対象者だと思ってしまえば、何も思わなくなってしまう!!!
「はぁ…」
ルナマリアは深くため息を吐いた。
ーーーガラッッッッツ!!
乱暴に、教室の扉が開く音がして、教室中の視線が集まる。
「ジュリアス、もう少し優しく開けましょうね。扉が壊れてしまいますよ」
「……いちいちうるせぇな、お前……」
先程のジュリアスと違い、丁寧に扉を閉めるレン。
ジュリアスは席次表を確認すると、ルナマリアの隣の席に向かった。




