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(マジか…)
ルナマリアは手紙を持ちながら、がっくしと肩を落とし、落胆した。
「ーーーこれって、入学拒否出来たりしますよね?」
ルナマリアは真顔でモモに尋ねた。
「出来るけどん…あれを見てもそんな事言うのん?」
モモが指差した先には、攻略対象者一同の姿。
「やったぁー!良かった!ルナマリア、僕達と一緒に学園に通えるんだね!」
「本当に良かったですね、ジュリアス」
「…っ!五月蝿い!」
本当に嬉しそうに、歓喜の声を上げている彼等を見てから、再度、モモはルナマリアを見た。
「本当に良いのねん?」
「ゔっ…!」
なけなしの良心が痛む。
「ねぇ、もう1つの手紙も読まないのん?」
鞄の奥底には、2枚の手紙があった。
「ルナマリア君は手紙を読まないのか?!あまり良くないぞ!」
「間違いないです…」
後で読もうと仕舞っておいたつもりが、そのまま忘れて3年。
もう1枚の手紙も、感覚からして、3年前に来た物だと推測する。
(最早いつ届いたかも覚えてない…)
手紙なんて、書く相手も、書かれる人もいないから、すっかり失念していた。
(てゆーか、私に手紙?誰?)
心当たりがいない。
ルナマリアは手紙の封を切ると、中を見てーーーバタンっと手紙を閉じた。
「なぁに?誰からだったの?」
「ーー女神様からでした」
頭を抑えながら答えるルナマリア。
「女神様ん?ルナマリアちゃん、崇拝する人でもいるのん?」
勿論、本物の女神からの手紙だとは思いもしないモモは、比喩の表現だと思い、ルナマリアに尋ねた。
(女神様の手紙を3年無視……いや、それもお見通しだったな…)
《拝啓 アホ娘
どうせこの手紙をお主が読むのは、届いて3年後とかじゃろう。
良いか?
今、魔物が活性化しておるのは、お主も流石に知っていおるだろうが、それに合わせて、も1人厄介な奴も動き出してきおっての。
魔王じゃ。
お主には、魔王の監視と、出来るなら奴を止めて欲しいと思っておる。てか、やれ。
どうせ学園に入学したらぐーたら出来ないとかほざいておるのじゃろーが、知らぬ。
出来る力がある者がそれを行使しないのは怠けじゃ。
しっかり働け。
By女神》
(駄目だ。詰んだ…)
ルナマリアは全てを諦めた。
「………………入学します」
「あらん。良い心境の変化ねん」
モモは笑顔で、ルナマリアの心境の変化を歓迎した。
明日は入学式ーー。
ゲームが始まる日ーーー。
ヒロインにライバル冒険者、フラン達攻略対象者に、残りの攻略対象者。
そこに何故か巻き込まれる、モブでも何でも無い筈の私ーー。
(それとも私も、クラスメイト①の立場だったのかな?)
何にせよ、クソゲーと名高い《リアリテに舞い降りた聖女》の舞台が、今、正に、始まろうとしているーーー。
***
入学式、当日。
ついに、ゲーム《リアリテに舞い降りた聖女》が始める日ーーー。
リアリテ学園女子寮。
女子の制服に身を包んだルナマリアは、全身鏡の前でクルリと一回りした。
紺のブレザーに、胸元には赤いリボン。
チェックのスカートが可愛い。
(前世はセーラー服だったから、新鮮)
あれから、全て(ぐーたらのんびり旅)を諦めて入学を決めたルナマリアは、持ち前のポジティブさを発揮し、気持ちを持ち直す事に成功していた。
(決まっちゃったものは仕方無いし。どうせなら楽しくのんびりやろー)
寮は基本2人1部屋だが、ルナマリアは入学の返事が前日になってしまい、ゴリ押しで部屋を用意してもらった為、小さな一人部屋が用意された。
特別に思えるかもしれないが、部屋は最上階の5階で、エレベーターは無い。
毎日の階段の昇り降りは、結構大変。
「よいっしょ」
だが、ルナマリアは扉を開けず、出窓を開け、よじ登った。
「飛行魔法」
魔法で杖を出し、呪文を唱えると、そのまま、ゆっくりと地面に下降した。
「到着」
飛行魔法を使えるルナマリアにとって、5階の階段は問題にならず、一人部屋はとても快適と言える。
(出来るだけ目立たないように、ヒロインと攻略対象の行く末を見守ろー)
女神様からの直接のお達しがあったので、逃げる事は出来ない。
ルナマリアは段々、自分もゲームに登場していたクラスメイト①だったのでは無いかと思うようになっていた。
「ルナマリア、おはよー」
女子寮の下、1人立っていたルナマリアに、男子寮から出て来た瑞月は、笑顔で駆け寄った。
その後ろには、フランの姿もある。
「瑞月、フラン」
「おはようルナマリア」
フランも、ルナマリアに笑顔を向けた。
男子寮は女子寮のすぐ隣。
男子の制服もブレザーで、男子はネクタイ。
瑞月はその中にカーディガンを着用し、フランは少し着崩していて着用していた。
「おはよう。2人はやっぱり相部屋なんだ」
「やっぱり?」
「良く分かったね!」
ゲーム内でも、フラン、瑞月は同部屋。
部屋の様子までは描かれていなかったけど、1部ファンからはバーサーカー部屋と呼ばれていた。
魔物を憎みに憎みまくり、奇声をあげ殺戮しまくるフランと、魔物を次から次へと喰い尽くす瑞月。
「どうした?」
考え事をしていたルナマリアにフランが声をかけると、ルナマリアはとても悲しい目で、2人を見た。
「ううん。怨霊に満ち溢れてそうな部屋だと思って…」
殺された魔物達の怨念や恨み辛みが集まり、夜な夜な啜り泣く声が聞こえて来るかもしれない。
「そんなおどろおどろしい部屋になんてしてたまるか!」
「ルナマリア…僕達の事、一体何だと思ってるの?」
フランも瑞月も、ルナマリアの言葉を即、否定した。
「ほんと、ルナマリアって変わってないよね」
「えーそう?」
学園の本校までの道のりが分からないと発覚したルナマリアを連れ、並んで歩く3人。
「そうだな。昔からよく訳の分からない事を言っていたしな」
フランも瑞月の意見に同意する。




