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瑞月は、そんな男に、笑顔を向けると、他の住民には見えないように、顔を男に近付け、先程とは打って変わったイカつい表情で、ガンを飛ばした。



「あぁ?テメェのその腐れ切った〇〇〇(ピー)で〇〇〇(ピー)されるとか舐めてんか?テメェの〇〇〇(ピー)切り落とすぞコラ」


「ひぃ!」

凄まれ、一目散に退散する不埒な男。


どうやら、自分で自分に擦り寄る不埒な輩を退散させる位に強く、腹黒く成長したようだ。

これなら以前の様なストーカー被害に悩まされる事は無いだろう。



「結局、危険は無いという事だな」

「……ちっ。人騒がせな野郎だな」

フラン、ジュリアスも共に、武器を鞘に戻した。


「あーあ。グリフォンに久しぶりに会いたかったのに」

攻略対象は恐怖の対象だが、グリフォンやトロンは違う。

瑞月は、魔物への混乱を落ち着かせると、人混みから離れようと、足を動かした。

その道中、聞こえたのは、グリフォンの名前。



「どうしてグリフォンの名前をーー!!ルナマリア!!!」

ガバッッ!!と、勢い良くルナマリアに抱き着く瑞月。


「「!なっ」」

「会いたかった…!」


フラン、ジュリアス双方は、それを見て怒りをあらわにしたが、グスッと、涙を溜めて言うこの瑞月の台詞に、今度は、嘘偽りも感じられず、グッと堪えた。

感動的な再会に見えるが、ルナマリアは違う。


ゾッ。

抱きしめられながら、また背筋が凍る。


イケメンが甘い言葉を吐いて抱きついるにも関わらず、鳥肌が立つなんて、最早呪いにしか思えない…。


それはそうと、お姉さんとして、きちんと教えておかないといけないことがある。


「瑞月、了承も無く勝手に抱き着いたりするのは、セクハラになるから、気を付けてね」

「セクーーハラって、何?」

ルナマリアは少し落ち着いた瑞月の頭を撫でながら、ド正論をぶつけた。




「ルナマリア、この人達、誰?」

ジトーと、フラン、ジュリアスを睨み付ける瑞月。


「フランとジュリアス」

簡潔に名前を言って紹介を終えるルナマリア。


「そうじゃなくて!関係!何でこの人達と一緒にいるの?!もしかして、一緒に旅してたの?!」

「まさか。昔会った事があるの。瑞月と一緒」

「一緒…」

お互い、出会っただけで、何かを察知したのか、瞬時に理解した。



ルナマリアに自分と同じ様に好意を抱いているとーー!!




「あのさ、君達、帰らないの?」

ルナマリアは、一向に帰ろうとしない3人に向かい、そろそろ疲れてきて、直球で尋ねた。

「?それは俺達の台詞だ。ルナマリア、まだ帰らないのか?」

「どゆこと??私は宿をーー」


「お話し中失礼します。ルナマリアでは有りませんか?」


丁寧な穏やかな口調。

聞き覚えのあるその声は、ルナマリアが出会った、最後の攻略対象。


「レン」

「やっぱり…お久しぶりです」


緑の髪に、黄色の瞳。

最後に出会ってから6年。14歳だった彼は、もう20歳。

あの時も大人びていた印象だったが、今はもっと落ち着いてるように見える。


「レンも感じが少し違う…」

ゲームではもっと暗い感じだったし、ミスティアお嬢様に仕えるために執事のような服装をしてた。

それなのに今は、きちんとした身なりの、医者の様な白衣を羽織っている。


「あれから6年経ちましたから」

会話は全く噛み合っていないのだが、奇跡的に繋がる。


「また新しい男…」

瑞月はげんなりした表情を浮かべた。


(お母さんはもう、亡くなってしまったのね…)


見ず知らずの私にも分け隔てなく優しくしてくれたレンの母親の事を思い出すと、涙が溢れる。


「ルナマリア?」

「っ。お母さんは……」

「ああ。母は故郷にいますよ。行ってらっしゃいと、背中を押して貰ったんです」


この会話も本来、全く噛み合っていないのだが、奇跡的に噛み合ってしまっている。



(亡くなってしまったお母さんは故郷に……!行ってらっしゃいと言ってくれたと思う事にしたのねー!)

(母の事が心配だから町から出ないと言っていたことを、覚えていたんですね)

もう一度言う、正確には全く噛み合っていない。



「初めまして。私は錬金術士、レンと申します。あなた方は?」

レンは、ルナマリアの傍にいたフラン達に向かい、軽く頭を下げると、自己紹介をした。


流石常識人。


「錬金術士…貴方が!」


この世界で初めての錬金術士なだけあって、その存在は冒険者達の間でも知れ渡っており、フランがいち早く反応する。



「俺はフラン。職業は剣士だ」

「フラン……お噂はかねがね伺っております。とても優秀な剣士だとか」

「いや、俺はまだまだ修行中の身さーーーこれからよろしくな」

「はい」

フランとレンは、笑顔で握手を交わした。


そして、これからよろしくの意味を、ジュリアスも瑞月も理解する。



「僕は瑞月。職業は魔物使(ティマー)。さっきは(ルナマリアに余計な虫がついたと思って)ちょっと取り乱しちゃったけど、仲良くしてね」

笑顔で挨拶するも、これが本心かどうかすら最早疑ってかかってしまう。


魔物使(ティマー)。和の国が主体の、魔物を仕えし職業ですね。今までは余り国外から出るイメーシが無かったので、その職業が知れ渡りだしたのも、つい最近の話です」

人間辞書の如く説明をするレン。


ゲームでの設定、戦闘中に魔物の雑学ばかりを話し、戦闘に一切参加しない悪夢が蘇る。



「……盗賊(シーフ)、ジュリアス」

ジュリアスは簡潔に、職業と名前だけを無愛想に告げた。



「ジュリアス。とても優秀な盗賊(シーフ)だと伺っています。無愛想で怖そうに見えて、貧困な子供達にこっそりお菓子を配ったり、クリスマスにはーー」

「おい!止めろ!!どこからだ!その情報源は?!」



先程と同じ様に人間辞書の力量を発揮している所を、ジュリアスが怒鳴って制止した。


「貴方の部下からですが?」

「くそっ!あいつら、今度会ったら殺す…!」






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