55
「フラン、考え出したら、負けだよ」
「何にーー?」
何故かキメ顔でドヤるルナマリアに、フランは意味が分からず、聞き返した。
あれから、何故かフランは私のギルドの依頼の確認もついてきて、そのまま、一緒にギルドを出た。
「ルナマリアはずっと旅を続けてたのか?」
「うん」
出会った時はまだ8歳。
ルナマリアが最初に出会った、攻略対象の1人。
「そうか。俺も、あれから剣の訓練をし、旅に出たんだ」
一人称が僕から俺に変化してるし、喋り方も少し大人っぽくなっているし、時の流れを感じる。
「どこかで会えるかも。と思っていたんだが、結局、今まで会えなかったな」
「世界は広いからねー」
フランの村を滅ぼされてからの経緯は、ゲームでも詳しくは紹介されていなかったから知らないが、悲しく辛く、大変だったに違いない。
←注意 実際はルナマリアにより設定変更済み。
「フラン…頑張って来たんだね…」
村の悲惨な出来事←誤解。や、今迄のフランの旅路←悲しくも辛くも無い。を思うと、ルナマリアはとても悲しい気持ちになり、フランの手を両手で涙を流しながら握りしめた。
「…頑…張っては来たんだけど、え?何だ?怖い怖い」
ルナマリアの誤解と心情を知らないフランからすれば、ルナマリアの普通では無い対応に、戸惑うしか無かった。
「ぐず。ごめんね、気にしなくて良いから」
「いや、情緒不安定過ぎて心配だよ!」
涙を拭いながら気にしなくて良いと口に出すルナマリアに、フランは思わず、つっこんだ。
「でも本当に、思ってた以上に元気そうで安心した。本当に、久しぶりだね、フラン」
ゲームのスチル絵よりも遥かに健康的に見えるし、表情も明るい。
「ーーああ。ルナマリアにまた会いたくて……その、頑張って来たんだ…」
「?そーなんだ」
悲しいかな、前世でも今世でも、色恋沙汰とは完全無縁の人生を送ってきた所以か、ルナマリアがその手のアプローチに気付く事は全く無い。
「私もフランともう1度会いたい思ってたから、良かった」
正確には、遠くから、入学式の様子を見守る形が良かったのだが、もう会ってしまったものは仕方無い。
(これ以上は見付からないようにしよう!)
「ル、ルナマリア、俺はーー」
「うん、何?」
顔を真っ赤にし、何かを告げようとするフランの言葉を、ルナマリアはきょとんとしながら、待った。
ーーードッッッガシャガッシャーーーーン!!!
「!なんか凄い音…」
フランが言葉を発する前に、大きな物音が聞こえ、ルナマリアは視線をそちらへ移した。
「…ふぅ」
大きなため息を1つ吐くと、フランもまた、視線を物音の方へ向けた。
「何だ?喧嘩か?」
そのままルナマリアを庇う様に、前に立つ。
「わぁ…。小さかった頃とは違うね。立派になった」
あの頃は、震えて怯えていた、少しルナマリアよりも背の高い男の子だったのに、今ではルナマリアの身長よりも遥かに高いし、堂々と背中を向けている。
「光栄だな」
(めっちゃイケメンやん!!)
何故これをそのままゲームの設定にしない?!
もし生き返る事があるなら、絶対に制作会社にクレームの電話を入れる。
ガッシャーーーン!!!
街の路地の方で、ガラスを突き破って壁にぶち当たる男。
「ーーいいか?今日からここは、俺等の縄張りになる。痛い目見たくなかったら、悪どい商売なんてやってんじゃねぇ」
その少し後、肩まである長い金色の髪、茶色細長の瞳、整った顔立ちのイケメンが出て来ると、睨みを聞かしたまま、男に向かって言い放った。
(あーーもう回収オワタ)
ルナマリアは、見知った金髪イケメンに心当たりが有り、ピシッと体が停止した。
わらわらと、横から仲間と見られる黒ずくめの男達が、ボロボロになった男を抱えて連行して行く。
「おい、待て!何をしている?!」
フランは男達に向かい、叫んだ。
「ああ?」
睨みをきかせ、ドスの効いた声で振り返る金髪イケメン。
「その男の人に何をしている?!その人を離せ!」
「ーー正義の味方気取りのヒーローか」
金髪イケメンは、部下と思われる黒ずくめに手で合図すると、そのまま黒ずくめの男達は、男を連行して行く。
「待て!」
「止めておけ、下手に関わるな」
制止しようと動こうとするフランの動きを、金髪イケメンが立ち塞がり、止めた。
「あの人を放ってはおけない!」
フランは背中の剣を抜くと、そのまま構えた。
「…ちっ。鬱陶しい野郎だな…」
重々しい空気が辺りを包む。
そんな一触即発の空気に耐えかね、ルナマリアはひょこっと、フランの後ろから顔を出した。
「ジュリアス…だよね?」
「!ーールナ!?」
こちらも、スチルに変化があって、前はオールバックのイカつい、髪型に、裏社会の住民です!っていう、安っぽい真っ黒なスーツだったのに、今は黒は黒でも、なんか……高級っぽい?靴も時計も。
でも、安定で悪役街道を渡り歩いているようで、そこはゲームの内容と一致する。
「ルナマリア?知り合いなのか?」
「うん。昔ね」
言っても無駄だろうけど、一応言っておこう。
「駄目だよ。悪い事しちゃ」
「ちっ違う!」
ルナマリアの言葉に、フランの時とは違い、焦る反応を見せるジュリアス。
「何が違うの?」
「っ。あ、あいつは、ここら辺で人身売買を生業にしてる奴等の一味で、それを俺は、とっ捕まえただけだ!」
言葉を詰まらせながらも、ジュリアスはハッキリと告げた。
「あっにきぃー!あのボケナス男!ギルドの連中にしょっぴいて貰いやしたぜーー」
トタタタと、先程男を連れて行った連中の1人が、駆け足で戻って来ると、笑顔でジュリアスに伝える。
「遅せぇ!」
「えー?!オイラだけでもめっちゃ急いで戻って来たんすよ?!兄貴がまた誤解されて因縁つけられてねーかって心配でー!」
「うっせぇ黙ってろ!」




