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一通り笑い終えた後、モモは数十杯目になるお酒を片手に、ルナマリアを見た。
「ねぇ、なら、一緒にこれに出場しなぁい?」
すぅと、モモは1枚のチラシを差し出す。
「何これ?ーーリゾート大会??」
チラシには
第1回、海の上の楽園リゾート大会!
素晴らしいバカンスをお過ごしの皆様!
皆様を盛り上げる素晴らしい大会をご用意しました!
腕自慢の皆様、頭脳派の皆様、可愛い動物が好きな皆様!
どうぞ奮ってご参加下さい!
大会をご覧の皆様には、美味しいお酒や料理をご用意さております。
大会の様子を見ながら、是非!楽しい時間をお過ごし下さい。
観客席満員御礼!
チーム戦!最低3名~!
出場者求む!豪華賞品有り!!
ーーーと、書かれていた。
「実は、私達、ちょっとした用事があってこの島に来たんだけどぉ、この島の偉い人達に、この大会に出て欲しいってお願いされたのぉ」
モモは、チラシに書かれた、出場者求む!の文字を指差しながら、言葉を吐く。
「参加者が足りて無いんですか?」
「そーなのよぉ。実は参加予定だった人達の何人かが、船の運行がstopしちゃってて、来れなくなっちゃったみたいでねぇ。観客のほーは、同じようにキャンセルが出ても、ここで足止めを食らってる人達がいるから、満員みたいなんだけどぉ」
要約すると、大会を開催したいが、参加者の数が足りない。
「中止にしないんですか?」
「もーチケットは売り切れ御礼みたいよぉ。初めての大会だから、対応が後手後手になってるのも、影響があるのかしらぁ」
払い戻しなりなんなりすれば良いと思うのだが、関係者は大会を無事に開催したいらしい。
「んー。大会かぁ…」
(正直、凄く面倒臭い)
ぐーたらを好むルナマリアには、大会に出る選択肢は無い。
「面倒臭いと思ってるでしょぉー?」
「はい、とても」
モモの問いに、ルナマリアは素直に頷いた。
「やぁん、正直♡でもそんなルナマリアちゃんに朗報」
モモは今度は、チラシの豪華賞品の文字を、指さした。
「この大会の豪華賞品は、なんと船の優待チケット」
「優待チケット?」
「そぉよぉ。このチケットを持っていたらぁ、船に優先して乗せてくれるのん」
「船に…乗れる?」
「ええ」
船の運行再開の目安は経っていない。
でも、このチケットがあれば、今、運行している船に乗る事が出来る!
「…………うー。やります」
ルナマリアは長い沈黙の後、がっくりと肩を落としながら、了承の言葉を吐いた。
面倒臭いし、参加したくないが、背に腹はかえられぬ。
「決定ねぇん」
モモはルナマリアの返答にニッコリと微笑んだ。
「ん?どおした!大会に出る事にしたのか?!うん!共に頑張ろうな!!」
途中から食べる事に必死になり過ぎて、話半分に聞いていたカザンは、話がまとまった所で、ルナマリアの肩に触れながら、素敵な笑顔を浮かべた。
*****
第1回 海の上の楽園リゾート大会当日ーーー。
街の海沿い、砂浜で、大会は行われていた。
「……やっぱり棄権して良いですか?」
人、人、人、人。
想像以上に多い観客に、ルナマリアはポツリと呟くように、モモとカザンにたずねた。
「やぁねぇルナマリアちゃん。冗談が好きなんだからぁ」
「うむ!やる気が出てきたな!」
モモは分かっていて躱しているのか、カザンは話を聞いていないのか、当然の様に、棄権して良いですよ。の言葉は返って来ない。
「軽い気持ちで引き受けるんじゃなかった…」
今は後悔しか無い。
「ふふ。海の上の楽園での記念すべき第一回目の大会だし、観光客はこの島から出られない人が殆どだもの」
観光でここ、海の上の楽園に来たは良いものの、魔物の活性化により、この島から出る事が出来ず、留まっている人が大勢いる。
そんな中で、大会が行われるのは、何もする事が無く、暇を持て余している富裕層にとっては、絶好の暇潰し。
「いーじゃないん。ルナマリアちゃんも、この大会で勝てば、無事にこの島から出る事が出来るわよん」
「まぁそうなんですけど…」
あんまり目立つ事は好きでは無い。
「てか、大会って、一体何をするんですか?」
何の説明も無いまま、大会当日。
ルナマリア自身も、深く考えていなかった。
「えーと、確かぁ」
『では!始めます!第一回目海の上の楽園リゾート大会!まず初めはーーービーチバレーです!!!』
司会者のマイクから聞こえる声に、ルナマリアは唾を飲んだ。
「ビーチ…バレー…!」
何となく大会だと言われたので、試合か何かと思っていたのだが、まさかのビーチバレー。
益々ルナマリアは帰りたくなった。
「参加者は2名からか!よし!ルナマリア君、行こう!」
「いや、ちょっと待って下さい!私、無理ですよ!」
当然の様に自分の参加が決定されているか言い方のカザンに、ルナマリアは慌てて拒否する。
「私、体を動かす事は苦手で…」
「大丈夫だ!俺がカバーするぞ!」
「いや、そもそも、何で私何ですか?モモさんだってーー」
同じ魔法使いで、体を動かすタイプでは無いといえ、同じ土俵だ。
ルナマリアだけが参加に選ばれるのは、納得いかない。
「私は無理よぉ。もぉ歳だしぃ」
初めから参加する気の無いモモは、どこからかお酒を調達して来たようで、既に飲んでいた。
「歳って、まだ20代ですよね?なら全然ーー」
「ん?何を言ってるんだ?!モモはこう見えてごじゅうーー」
ボンッッッ!!!
カザンが言い終わる前に、モモによって、カザンの体に魔法の炎の球がぶつけられる。
「ふふ。駄目よぉカザン。女性の年齢を勝手に周りに言いふらしては♡」
笑ってはいるが、目が笑っていない。
「はっはっはっ!そうだったな!」
カザンは火の球をぶつけられようが、冷たい目を向けられようが、何も気にしていないように豪快に笑った。




