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「なっ!馬鹿にしやがって!」
相変わらず直球で思った事を口にしてしまうルナマリアに、ナンパ男達2人は顔を真っ赤にしながら、怒鳴った。
そのまま、ルナマリアの胸ぐらを掴もうと手を伸ばすーーー
「やめたまえ!!」
ーーー前に、まるで正義のヒーローが登場するかの如く、大きな声で待ったがかかった。
声の主は、体格の良い、剣を背負った30代の顎髭を生やした男性。
「か弱い女の子に寄ってたかってなんだね君達は!止めるんだ!」
仁王立ちで大きな声を出す筋肉ムキムキ髭男。
「な、なんだよこのおっさん」
自分達よりガタイの良い男の登場に、急に弱腰になるナンパ男。
「か弱い女相手じゃないと強く出れないなんて、ダサ…」
「うるせぇ!」
「止めないか!!」
ルナマリアに対し怒鳴るナンパ男達に、再度手をかざしながら怒号を飛ばす筋肉ムキムキ髭男。
「っくっそ!」
悔しそうに顔を歪めるも、ナンパ男達はそのまま引き下がり、酒場を後にした。
「大丈夫だったかな?!」
「はい。助けて頂いてありがとうございました」
ルナマリアはぺこりと頭を下げながら、お礼を言った。
「もぉおっそーい。モモを待たせるから、また面倒事になっちゃったじゃなぁーい」
グラマラスお姉さんは、筋肉ムキムキ髭男に向かい、お酒の入ったグラスを笑顔で傾けながら声を出した。
「すまない!訓練が押してしまってな!!」
(…常、声が大きいな…)
普通の会話にも関わらず、声がでかい。
「第一、君に助けなんて要らなかったよねーぇー?」
グラマラスお姉さんは、ルナマリアに笑顔で尋ねた。
「私、モモ。こっちの五月蝿いのはカザンよぉ。さっきは助けてくれて、ありがとぉー」
「私はルナマリア。よろしく」
握手に差し出された手を、ルナマリアは握り返した。
「ふふ。助けてくれたお礼に、奢るわよー」
「私、何もしていないので、気にしないで下さい」
結局、ナンパ男達を追い払ったのはカザンで、ルナマリアは火に油を注いだくらい。
「やぁねぇ。助けてくれようとしたその心意気が嬉しーのよ。それとも、嫌かしら?無理強いは良くないものね」
先程のナンパ男を引き合いに出して尋ねるモモ。
「……いえ。それなら、お言葉に甘えます」
そう答えると、ルナマリア達はカウンターから、3人で座れるテーブル席に移動した。
「俺はこの肉とあの肉とそしてあっちの肉もそっちの肉を貰おうか!!!」
席に着くなり、海鮮が売りな酒場にも関わらず、肉料理を大量に注文するカザン。
「ちょっとぉーカザンは自分でお金払いなさいよぉー」
豪快な頼みっぷりのカザンに動じる事無く、微笑んでいるモモの様子から、これが通常運転の頼み方なのだろう。
「ああ!任せてくれ!ルナマリア君!君も好きな物を注文してくれ!!」
「はーい」
「ふふ。お酒は飲む?」
「いえ、ジュースでお願いします」
前世ではお酒を嗜んでいたが、今世ではまだ13歳。
いくらこの世界では合法と言われても、何となく、気が引けて飲まないようにしている。
テーブルに料理が運ばれて来ると、カザンは勢い良くがっつき、モモはお酒を中心に、チビチビとアテを食べる。
ルナマリアはメニューと睨めっこした結果選ばれた、海鮮パスタとパンを頬張った。
「美味しー」
(パスタなんて久しぶりに食べたな)
スプーンとフォークを使い、器用に食べるルナマリアを見て、モモはグラスを傾けた。
「ルナマリアちゃんって、13歳に見えないくらい、しっかりしてるわねぇー」
「あはは。そうですかー?」
(実年齢25歳ですからね)
「ああ!それに!小さな女の子が人助けをしようとするなんて、立派な事だぞ!」
骨付き肉を両手に持ちながら、カザンは賛辞を送る。
「だが!何かあったら危険だ!これからもう少し大人を頼るようにしなさい!」
外見、13歳の非力そうな女の子に見えるので、カザンは心配を込めて忠告したが、モモはそれを、ふふふ。と笑った。
「見る目が無いわねぇカザン。ルナマリアちゃんは冒険者ーー魔法使いよ。あんな貧弱な男達なんて、相手にならないわよねぇ?」
「!」
「なんと!そうだったのか!」
ルナマリアは純粋に驚いて、モモを見た。
ルナマリアは、普段魔力を持っている事を見破られないように、隠して過ごしている。
それなのに、モモはそれを見破った。
「……驚きました。見破られたのは初めてです」
だからこそ皆、魔法で杖を出すルナマリアの姿を見て初めて、魔法使いだと驚く。
「ふふ。私も一応魔法使いなのよ」
「魔法使い…」
じっとモモを見ると、確かに、魔力を感じる。
でも、上手く隠しているのか、全体の魔力量までは判別出来ない。
それも、ルナマリアには初めての事だった。
「改めて言っておくけどぉ、ルナマリアちゃんを魔法使いだって見抜けたのは、魔力探知とかじゃないわよー?ルナマリアちゃん、とても上手に隠してるものぉ。魔力を持っているのは分かったけど、それ以上は無理よ」
店員を呼んで、追加のお酒を注文する。
「モモが分からないなんて、凄いな!」
「でも、それならどうして分かったの…?」
微量の魔力程度なら、魔法使いじゃなくても、レンの様に、一般人でも持っている事がある。
「ふふ。女の勘よ」
モモは店員の持ってきたお酒を受け取ると、一気にグイッと飲み干した。
「女のーー勘!」
まだルナマリアは1度も発動した覚えの無い、女特有の能力!
「女は凄いもんだな!がっはっはっはっ!」
カザンは大きな口を開けて、豪快に笑い飛ばした。
「ところで、ルナマリアちゃんはどーして海の上の楽園に来たの?バカンス?」
「いえ。実はーーー」
ルナマリアがここに来た経緯を説明すると、モモもカザンも、声を出して笑った。
「あはは!結構無謀な事するのねぇ」
「うむ!全くだ!だが危険だぞ!次からは気をつけるんだ!」




