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「ラフラーレン…」

『だから、私が力尽きる前に、この村を出て欲しい。ルナマリアは、人間で初めて出来た、私の友達。最後に会えて、嬉しかったよ』


ラフラーレンの覚悟は強く決まっていて、ルナマリアはこれ以上何も言えなかった。



それから数日。

ラフラーレンを元気にする方法も見付からず、そろそろ村から出ていけオーラを放つラフラーレンから逃れる為、ルナマリアは当てもなく湖から村に向かった。


(んー。このままラフラーレンを置いて行く事なんて出来ないし、何か良い方法無いかなー)




「「あ!」」

考え事をしながら歩いていると、また、籠を持ったフランと出会った。


「フラン、駄目だよ。勝手に出たら危ないよ」

「だ、だってーー」


聞く所に寄ると、食料調達の為村から出ていた人達が、魔物襲撃にあい、怪我人が多数出たらしく、その為にも、もっと薬草が必要になったらしい。



(でも駄目だよ!危険な事しないで!)

「なんて良い子ーーそれがどうしてあんな残念な男にっっ!」


「何?!何が!?」

またも心の声が逆でダダ漏れになっており、フランは怯えながら尋ねた。


(いけない…また心の声が)


「じゃあまた私も一緒に行くよー」

気を取り直して体裁を保つルナマリア。


「だ、駄目だよ!危なー」

「フランが言っちゃ駄目な台詞だよー」

自分を棚に上げて、何を言うか。と、ルナマリアはフランを睨んだ。


結局、口でルナマリアに勝てず、フランはルナマリアと一緒に薬草集めに向かった。


(……そう言えば、(ルナマリア)なんてゲームに登場したっけ?)


記憶を遡るも、ルナマリアの名前の登場キャラが浮かばない。


(モブキャラだったのかな)



ゲーム《リアリテに舞い降りた聖女》は、何せ主要キャラクター以外の扱いが雑い。

ほぼ顔なしの名前だけ登場が主体。


(敵キャラでは唯一魔王だけがあったな)


何故なら隠し攻略キャラだから。

ただし、私は未プレイ。


(クソゲー過ぎて隠しキャラまで攻略する気が一切起きなかった)


でもこんな事になるのなら、ちゃんと攻略するべきだったと、今更ながら後悔。



「…ルナマリアって変わってるよね」

「え?ほんと?」

ルナマリアは自身の顔や服にさっさと触れる。


「?私、可愛いでしょう?」

「そうじゃなくて!」


生まれ変わった自分の容姿は、贔屓目無しに見ても可愛いと自負している。


「性格だよ!急に変な事言うし、笑うし、なんか、怖いし…」

初対面の自分より歳下の女の子に急に訳分からん事ばかり言われたら、それは当然の反応だろう。


「えーそーかなー?」

全く自覚の無いルナマリアは、頭を傾げる。


「フランは凄い優しくて格好良くて可愛いよ」

(現時点では)

ニッコリと笑顔を浮かべながら、精神年齢25歳のルナマリアは、未来は残念な事になるのを嘆きつつ、歳下の可愛い少年を褒める気持ちで賛辞を述べた。


「そ!そんな、事無いよ!」

年頃の男の子らしく、顔を真っ赤にして否定する所も可愛らしい。


(本当に残念。このまま育てば、凄いイケメンの、性格の良い好青年キャラになるのにーーー)


そこまで思った所で、ルナマリアは何かに気付き、思考を停止した。



「ルナマリア?」

急に真顔になるルナマリアに、首を傾げるフラン。



「……ラフラーレンの加護が破れた」


(村が危ない…!)


ルナマリアはバッと、村に向かい走り出した。





「うわぁああああ!!!逃げろ!魔物だ!!」

「きゃああああ!!!」



ルナマリアの言葉通り、魔物が村の中まで入り込み、村を襲っている。


「魔物…!」

後ろから付いてきたフランは、村の惨状に顔を真っ青にした。


(これが魔物…)

初めて対峙する魔物の姿に、ルナマリアの体は震えた。


(ゲームでは何回も倒したけど、実際目の当たりにすると迫力が違うね)



『グルルルルル!!!!!』

想像より大きな、家ほどある体、鋭い牙に、殺意の籠った目。



「ルナマリア!逃げよう!」

フランは震える手で、ルナマリアの手を握る。


「待って」

だが、ルナマリアはそんなフランの手を離した。


「ルナマリア?!」


あろう事か、魔物の方に向かうルナマリア。


「危ないよ!逃げようよルナマリア!」

必死で止めるが、ルナマリアは聞き入れず、魔物が向かっている方を指さした。


「助けなきゃ」


ルナマリアが指差す方には、村の住人の母親と娘の姿。

このままでは、魔物に襲われてしまう。


「ーーっぅ」


その光景を見たフランは、自身の拳を握り締めると、地面に落ちてた石を拾い、ルナマリアの前に立った。


「ルナマリアは逃げて。僕が、魔物を引きつけるから、その隙にーー!」

「フラン…」

まだ幼く、自身だって怖いだろうに、村の仲間や、ルナマリアの事も、助けようと動くフランの姿に、ルナマリアは感動した。



「えい!!!」


フランの当てた石が魔物の目の付近に当たり、魔物はギロリと、フランを睨み付けた。

体の向きが変わり、フランに向く。


「今の内に逃げて!」

フランは母親とその娘に向かい、声を出し、2人は一緒に駆け出した。





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