モモ・カザン47
どうして?
どこから間違えたのだろう?
初めて回復魔法を使えた時、皆は凄い喜んでくれて、チヤホヤしてくれて、嬉しくてーーー
チヤホヤされるのが当たり前になって、欲しい物が増えて、もっと、高みを目指すようになってーー
努力なんてしてこなかった。
1度も。
なのに、レンの優秀さに勝手に嫉妬して、手に入れようとして、失敗して、全てを失った。
(ああ……もう駄目ですのね……)
全部間違えてしまった今、全てを失ったのだと、ミスティアお嬢様は悟った。
「ーーミスティアお嬢様、大丈夫ですか?」
落胆し、俯いている頭上から、心配そうな声が、かけられた。
それは、心配される資格なんて、最も無い人物の声で、ミスティアお嬢様は、ゆっくりと顔を上げた。
「レン…」
心配される覚えなんて無い。
自分は、レンの母親に大怪我を負わせ、養子にして名前を変えさせ、借金を背負わせ、永遠に自分のスケープゴーストにさせようとした。
「何ですの…?落ちぶれた私を見て、嘲笑いにでも来ましたの?」
「いえ」
首を横に振るレン。
「ミスティアお嬢様、私は、貴女が羨ましかったです。僧侶の才能を持って産まれてきた貴女が」
「レン…」
「ミスティアお嬢様、きちんと罪を償って、今度は素敵な僧侶になって下さい。昔のようにーー」
僧侶として、回復魔法を初めて使えた頃ーー誰かが喜んでくれる姿を見る事が、嬉しかった。
「うっゔっ」
ミスティアお嬢様は、ポロポロと涙を流すと、ゆっくりと、レン、そして町の住民達に向かって、頭を下げた。
「本当に……申し訳ありませんでしたわ……」
しばらく、深く頭を下げたまま、謝罪の言葉をミスティアお嬢様は繰り返した。
ジージー〜ー
ーーーーーー設定変更します。
レン=カターナ
過去
頭脳明晰で天才と謳われる。
病弱な母の為に幼い頃から仕事をこなしつつ、勉学と両立させてきた秀才。
大怪我を負った母親を助ける為、治療費に多額の借金を背負うも、息子の足枷になりたくない母親は自殺してしまい、深い心の傷を追う。
借金だけが残り、借金元の養子となり、僧侶のお嬢様のスケープゴートになる。
お嬢様を優秀だと判断した学園に、僧侶のお嬢様の付き人として学園に入るが、本当に優秀なのはレンの方だと見抜かれ、途中編入となるーーー
→→→→→→→→→頭脳明晰で天才と謳われる。
病弱な母の為に幼い頃から仕事をこなしつつ、勉学と両立させてきた秀才。
道で倒れていたルナマリアを助けたことから、才能を見出され、知識と魔力で様々な道具を作る錬金術師となり、多くの人を救う。
その後、錬金術で得たお金で無事、治癒薬を手に入れ、母親の病気は完治。
錬金術師として学園への入学を認められ、母親の後押しも有り、学園へと入学するーーー
借金ヒモ男→→→→→→心優しいお兄さん
学者→→→→→→錬金術師
シル=ミスティア→→→→→→レン=カターナ
イケメン→→→→→イケメン。変更無し。
ジージー〜ー
ーーーーーーーー設定変更完了しました。
***
3年後ーーー。
ルナマリア13歳。
「眠たい…ずっと、寝てたい…」
重たい瞼を何とか擦り開け、前を見る。
小さなボートにゆらり揺られ、周り一面に広がるのは、真っ青な海ーーー。
「潮の匂いがするねー」
呑気な事を言っているが、ルナマリアは今、絶体絶命のピンチに陥っている。
遡る事、数時間前ーーー
「船、乗れないんですか?」
ルナマリアは、小さな港町にて、足止めを食らっていた。
「ああ。最近、ここいらで海の魔物が活発化しててよ。船が何台も立て続けに大破されてて、船の数が足りてねぇんだ」
船は大切な物資を運ぶ足でも有り、人の往来を繋ぐ足でも有り、大陸と大陸を繋ぐ大切な架け橋。
残った船は、船を守る為の冒険者を雇ったりして運行しているが、何分、数が足りない。
「悪ぃが、優先しなきゃなんねぇ案件が山ほどあるし…」
「そうですよね」
町からすれば、物資の郵送が大切だし、以前から予約していた乗客達を優先するのは当然で、パッと現れたルナマリアを乗せる事が出来ないのは当然だ。
「どうしようかな…」
船員との会話が終わり、当ても無くフラフラと船着場を歩く。
妖精や精霊達に、恩を返す旅を続けて、早5年。
次の土地に向かおうとしたら、船の欠航という足止めを食らった。
(船の再開まで待とうかな)
ただ、いつ再開になるか、目安が無い。
(他の街からなら、船出てるかな?でも、ここら辺って言ってたし……)
八方塞がり。
そんな中、ルナマリアは、船着場にあった、小さなボートを見付けた。
「ボート…」
(これで行けないかな)
この広い大海原、こんな小さなボートで行こうとする事は大変無謀なのだが、ルナマリアは深く考えていなかった。
(何とかなるか)
ーーー勿論、何とかなる筈は無かった。
今ルナマリアは、大海原の中、周り一面海景色で、迷っていた。
端的に言うと、上記に繋がる絶体絶命。
ただ、当の本人は、呑気に海の陽気を楽しんでいる。
「どーしよーかなー」
為す術が無い。
ルナマリアは諦めて、ゴロンとボートの上、寝転がった。
『ーーねぇ、そこにいるのはルナ?』
誰も居るはずの無い海の上から、自分を呼ぶ声。
「遂に幻想が聞こえてきちゃった…」
『ルナ!ルナだよね?僕!ウルミだよ!』
「ウルミ…?」
ルナマリアは起き上がると、ボートの外、海の上を見た。
可愛いカメの甲羅を背負った、手のひらサイズの男の妖精が、嬉しそうに笑顔を浮かべている。
「本当にウミルだ。久しぶり」
『ルナー!!!会えて嬉しいーよー!!!』
勢い良くルナマリアに抱き着くウルミ。
「こんな所でウルミに会えるなんて思わなかったよ」




