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そのまま、放心状態になったミスティアお嬢様は、チンピラ2人組に連れられ、屋敷に戻った。


余談だが、チンピラ2人組は、ルナマリアを見ると怯えた子羊の様に震え上がり、脱兎の如く走り去った。





***


「…疲れた…眠たい…」

「ルナマリア、大丈夫?」

あれから、前回と同じ様に、感激した住民達により宴が催され、10歳の女の子を23時まで連れ回す運びとなった。


瞼をこするルナマリアに、レンは心配そうに声をかけた。


「大丈夫……それより、ちゃんとお薬は効いた?」

「はい。問題ありませんでした」

あれから、擦り傷やかすり傷などの軽傷の人達を、レンが錬金術で作った薬で治した。


「皆、喜んでくれて良かったね」


医療の発達していないこの世界で、怪我を治してくれる薬は、高価で貴重な材料を使用する物以外はほぼ無い。

それが、錬金術という技術で、作りさえすれば、誰でも使用出来る薬になるのは、画期的な事だった。


「はい。でも皆さん……必要無いって言ったのに、お金まで頂いて……」

レンは薬のお礼にと、住民からお金を渡されていた。


「貰ったらいーよ」

「でもーー」

「皆、レンの頑張りを知ってるもん」


町の住民なら、レンが毎日、どれ程努力しているかを知っている。

毎日朝早くに起き、家事をし、仕事をこなし、睡眠時間を削って勉学に励む。

だからこそ、お金を渡したのだ。

生活の足しになるように、母親の治療費にあてられるように。



「縦髪お嬢様みたいに法外なお金を貰ってる訳じゃないんだから、良いと思うよ」


あれに比べれば、質も良くて値段も安い。

とてもホワイト。


「はい…」

「ところで、ミスティアお嬢様の事、どうするの?」



レンの母親を、魔物の仕業に見せ掛けて、大怪我を負わせた。

実行犯はチンピラだろうが、ミスティアお嬢様も関わっている事は明白。


「そうですね…母さんを酷い目に合わせた事……明日、お屋敷に行って、ちゃんと話をしてこようと思います」

「私もついていくよ」


ミスティアお嬢様の目的はそもそもがレンだし、1人で行かせるのは不安。


「本当に……ルナマリアには何から何までお世話になってばかりで……」

「最初に私を助けてくれたのはレンじゃない」

あの日、横着して鑑定魔法を怠り、毒の果実を食べたルナマリアを、レンは助けてくれた。

母親も、そんなルナマリアを、快く家に泊めてくれた。


「ありがとう、レン」

「……こちらこそ」

笑顔でお礼を告げるルナマリアに、レンもまた、笑顔を浮かべ返した。




(それにしてもーー)

眠気限界MAXのルナマリアは、用意されているベットに入ると、瞼を閉じた。

そのまま、眠りにつく前に、ルナマリアは、ふと、ずっと気がかりだった事を思い返した。


(ゲームで、レンの過去に魔物に襲われるなんて過去の設定、あったっけ…?)


ゲームで、そんな話は聞いた事も無かった気がする。

レンの辛いトラウマの過去は、最愛の母親の死と、借金と、ミスティアお嬢様の身代わりとして生きる。

ーーーうろ覚えだけど、そんな設定だった。



第一、あんな凶悪な魔物、ルナマリアがいなかったら、町が滅びていてもおかしくない。

でも、ミスティアお嬢様もレンも、普通に学園に入学していた。



(ゲームと話が少し変化してる…?)


んー。と少し考え込むも、ルナマリアはすぐに考えを放棄した。


(止めよう。クソゲーだし、制作陣がただただ、過去をストーリーに入れ忘れただけの可能性がある…!)


眠気+疲れも手伝って、ルナマリアは気がかりを忘れる事にし、一瞬で眠りについた。








***



次の日ーーー。

ミスティアお嬢様の洋館。



「何ですの……これ……」

ミスティアお嬢様のピンクのテーブルの上に並べられたのは、沢山の督促状。


「最近、治療に町の奴等が来なかったんで、その分金が入って来ず、借金してたんすよ」

「な…なっ…!」


チンピラの1人が、どこかげっそりとした表情で事実を告げると、ミスティアお嬢様は紙を握り潰しながら、手を震わせた。


「い、急いで治療をーー!」

「無理っすよ!あんなすげー魔法使いがいるんすよ?!」


ミスティアお嬢様と違い、チンピラ2人組はルナマリアの戦闘を目の当たりにしており、最早、恐怖の対象になっている。


「な、なによ!どうせあの小娘は冒険者なのよ?!冒険者なら、いずれはこの町から出て行くの!それなら、最後には私に縋るしか無くなりますのよ?!」


昨日、僧侶としての自信を木っ端微塵にされ、何も考えられずぼう然と退散してしまったが、1晩経ち、彼女なりに考えを改めた。


首都アールレンに行くのは諦める!

学園に通うのも諦める!


(でも、この町での私の地位は変わりませんわ!)

誰に何と言われようと、僧侶の魔法を使えるのは自分だけ。


「確かに…!それもそうっすね!流石お嬢様!」

ミスティアお嬢様の言い分に、チンピラ2人組も納得し、拍手する。


「あの小娘がいる間は、仕方無いから大人しくしますが、居なくなったら、覚えてなさい!この私を!除け者にした罪を、町の奴等に思い知らせてやりますわ!」

医療費を限界スレスレまで値上げして、全員を死ぬまでこき使ってやる!と、ミスティアお嬢様は高笑いをした。




ーーーピンポーーーン。


ガタガタガタガタッッン!!!!

チャイムの音に、3人は怯えた様に動揺し、物陰に隠れた。

「こぇーよぉー!」

「しっ!黙りなさい!」

3人はそのまま、居留守を使う事を決めたーーー。







「ーーー出てこないね」


ミスティアお嬢様の洋館の前。

チャイムを鳴らしても誰も出てこず、ルナマリアとレンは、佇んでいた。


「どうする?吹き飛ばす?」

魔法で杖を出す素振りをしながら、物騒な提案をするルナマリア。


「と、とりあえず止めておきましょうか」

そんなルナマリアを、レンは笑顔で宥めた。

「いーの?」

「今の所、証拠も彼等の失言だけですし……」

母親を襲った犯人である事に間違いは無いのだが、証拠は無い。








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