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母親を襲ったのは魔物の仕業だと、誰かが意図的に情報を操作した可能性がある。
(……このままにはしておけない。かな)
犯人も目的もまだ分からないが、母親に怪我を負わせる事が目的なら、また、同じ事をしてくる可能性がある。
未来、母親が死んでしまう事が決まっているとしても、病気で亡くなるのと、故意的に怪我を負わされ、亡くなるのとでは、内容が全く違う。
レン達には、倒れていた私を救ってくれた恩がある。
「ーーレン、話があるの」
ルナマリアは少し迷った後、レンにも、母親が襲われたのは魔物では無い可能性がある事、誰かが、意図的に情報操作したかもしれない事を話した。
「そんな…どうして…」
信じられないと、戸惑うレン。
「多分、間違い無いと思うよ。大体、人型の魔物って凄い強いらしいし、知能もあるし、襲われてこの程度で済むなんて思えない」
ルナマリア自身、まだ人型の魔物には出会っていないが、とても強敵だと、妖精や精霊達から散っっ々忠告を受けた。
そんな魔物が、襲った母親1人殺さず、怪我をさせただけで、そのまま町から立ち去った。
目的が無いし、意味も無く思う。
「誰がこんな事をしたのか、心当たりとか無い?」
「有りません…」
母親が魔物の仕業に見せ掛け襲われる心当たりなんて、よっぽどの事だ。
「犯人は、必ず見付けないといけないと思うよ」
どんな理由があろうと、人を傷付ける理由にはならない。
「そうですね…。でも、本当に心当たりが無くて…」
ルナマリアから見ても、母親もレンも、人に恨みを買うように見えない。
「んー。じゃあ一旦放置して、いつも通りの生活送ろっか」
「え?いつも通りで良いんですか?」
平然と答えるルナマリアに、レンは思わず尋ねた。
「うん。私がいる間は、お母さんには守護魔法をかけるよ」
魔法で杖を出すと、即、呪文を唱え実行する。
「大丈夫…なんですか?」
「?うん。相手、そんなに強いとは思えないし」
心配そうなレンに、ルナマリアはハッキリと答える。
強力な力や魔法をぶつけられたら、魔法は解けてしまうが、現場を見た限り、犯人にルナマリア以上の実力があるようには思えない。
「ち、違います!ルナマリアの力を信じていない訳では無くて、犯人探しをせずに、普段通り過ごしていいのかと思いまして……」
「魔物の仕業って証言した人達をとっ捕まえて、尋問して、吐かせてみる?」
ルナマリアの考えが正しければ、魔物の仕業だと証言した町の住民達が怪しいのは一目瞭然なので、彼等を吐かす事が出来れば、犯人に繋がる有力な情報が出てくる。
それ以外、今は手掛かりが無い。
「そ、それは出来ません…。皆さん、悪い人達じゃ無いんです」
そう。
証言した住民達が極悪非道な奴等なら、捕まえて吐かせるかもだけど、どうやらそうでも無いらしい。
元より、このやり方は、根っから優しいレンには不向き。
ジュリアスなら平気で初めから尋問を選択するだろうけど……意外と瑞月もしそう。
「でしょ?だから、犯人を泳がせてみるよ」
目的を達成出来なかったのだから、犯人はまた、何かを仕掛けてくる。
「…分かりました」
レンは神妙な趣で、頷いた。
「ふわぁ」
話し込んでいる内に、すっかり深夜帯で、ルナマリアは手で口を隠しながら、大きな欠伸をした。
「すみませんルナマリア。もう遅いですもんね。早く寝ましょう」
「…うん」
話終えて一気に睡魔が襲って来たのか、ルナマリアは瞼を擦りながら頷き、レンに誘導されるままベッドに横になると、一瞬で眠りについた。
***
数週間後ーー
ミスティアお嬢様の洋館。
ピンクのテーブルに並べられた、ネックレスや指輪などの装飾品の数々。
ミスティアお嬢様はそれ等を指につけたり外したりを、上機嫌で繰り返した。
「増えましたねーお嬢様のコレクション」
いつものお付の2人が装飾品を見ながら声を上げると、ミスティアお嬢様は更に満足気に微笑んだ。
「ふふ。そうでしょう?集めた治療費で購入したものよ」
綺麗なピンクの宝石のついた指輪を見せるように、ミスティアお嬢様は手をかざした。
「でも駄目ね。都会に行くのにこの程度では」
「駄目なんすか?」
「駄目よ。都会の人達に笑われてしまうか」
「お嬢様、アールレンに行った事あるんすか?」
この世界リアリテの首都、アールレンに行った事の無い、取り巻き2人は、風の噂程度にしか、アールレンの事を知らない。
「無いわ」
「なのに何で装飾品がこの程度なら笑われるって分かるんすか?」
ミスティアお嬢様の話からすると、装飾品も買えない貧乏人は、首都アールレンに行ったら小馬鹿にされる事になる。
「何言ってるの?都会よ?田舎臭い奴等がいたら、笑い者にされるに決まってるじゃない」
ミスティアお嬢様の都会に対するイメージは大変偏っているようで、心底真面目に言っている。
「そーなんすか?」
「貿易とかも盛んって聞くし、色んな人が行き来してるってイメージだったんすけどなー」
ミスティアお嬢様のガラの悪い取り巻き2人は、敬語があまり得意では無いらしく、所々おかしい。
「ふん。学も無い、何の才能も無い貴方達の意見なんて何の参考にもならなくてよ」
「ひっでー」
「ま、金さえ貰えりゃあ、俺等は馬鹿なんで何でもしますよ。犯罪でも。ね」
「…そうね。そこは、とても便利ですわ」
お気付きだろうが、
魔物に見せ掛け、母親を襲った犯人は、この取り巻きの2人。
人型の魔物の姿を装い、殺さない程度に怪我を負わせ、ミスティアお嬢様に借金している住民達を脅し、嘘の証言をさせた。
それらは全て、レンが、この町で唯一の僧侶であるミスティアお嬢様に、回復を願い出る為ーーー。




