表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/103

4







いきなり目の前で頭を抱え、苦悩するルナマリアに、フランは心配そうに声をかけた。


(…うん、でも仕方ない!だって現実問題、ゲームの世界に転生するなんて思う訳ないし、気付かなくても仕方ないよね!)

ルナマリアはポジティブに捉えた。


「頭でも打った…?」

覗き込むように見上げるフランの顔は幼いながら美形そのもの!


「流石キャラデザは満点!!」

(大丈夫だよ!)


「え、何?キャラデザ?」

プチパニックなのか、心の声と発言が逆になる。


「ご、ごめんごめん。ちょっと、気が動転?高揚?してて」

ルナマリアは目の前のフランを見ながら、彼の、ゲームでの設定を思い返した。



名前はフラン=アドリアス。

攻略キャラの1人で、幼い頃、魔物が村を襲撃し、自分一人だけ助かってしまう。という、とてつもなく暗い過去を持ち、魔物への憎しみと、自分1人だけ生き残ってしまった負い目を背負った故の、ネガティブ思考強めキャラ。


戦闘シーンには魔物を前に理性を失い、発狂しながら戦うとゆー誰得?みたいな演出を組み込まれた残念イケメン。


(更には恋愛シーンでも、いちいちネガティブ発言を挟んでくるんだよね)



『僕なんて君には相応しく無いよ………僕は、死んだ方が良いんだ……』



ルナマリアは悲しい目をフランに向けた。

「え?何?怖い怖い」

コロコロと変わるルナマリアの変化に、そろそろフランは恐怖を覚え始めた。


(ゲーム開始時点では、確か16、17歳位?だったかな)

この時点で、ゲームより前の時代だと理解する。


(今は何か、普通の男の子っぽい)

ルナマリアの事を心配するし、顔色も明るいし、何より、いちいちネガティブ発言しない。


「ーーーフラン、お願いがあるの」

「な、何?」


既にルナマリアに1歩引いてるフランは、恐る恐る尋ねた。


「このまま、良い子に育って欲しい」

「え?何目線で?」

初対面の、自分より歳下の女の子に言われる台詞では無い。



相手にするのが怖くなったのか、フランはルナマリアを放って、薬草探しを再開し始めた。


(フランは、ネガティブで戦闘時発狂する残念イケメン男だったけど、確か、剣の腕は一流だった)

魔物への憎しみから剣技を極めた彼は、ヒロインに選ばれると、ヒロインと一緒に魔王を倒す。


(ヒロインが誰を選ぶかは分かんないけど、魔王は倒して貰わないと困る)



魔王を倒さないと、この世界リアリテは滅びるというバットエンドが待っている。


(ゲームの世界なら他人事だけど、当事者になってみると、ほんと酷いエンディングを用意してくれてるよね…)


平和で、堕落したぐーたら生活を送る為には、魔王を倒して貰う事は必須。


(うん。今フランに死なれたら困る!)

彼にはヒロインに選ばれた暁には、魔王を倒して貰わないといけないんだから!


トン。と、ルナマリアはフランの肩に触れた。

「フランは皆の希望だよ」

「ーーは?」

全く意味の分からないフランは、いよいよ本格的に恐怖を感じた。


そんなフランの気持ちをよそに、ルナマリアはラフラーレンを助けつつ、フランの事も守らないと!と、無理しない程度で頑張る事を決めた。




「これだけ集めたらもう大丈夫?」

あれから、ルナマリアはフランの薬草摘みを手伝い、彼と共に村に戻った。


「うん。これだけあれば、2、3日は大丈夫そう」

フランは籠いっぱいの薬草を前に、笑顔を浮かべた。


「ありがとうルナマリア。正直、初めは君の事凄い変な奴で、近寄ったら駄目な奴だ。なんて思ったけど」

「わー正直ー」

嘘偽りの無い少年の言葉を、ルナマリアは笑顔で受け止めた。



「ルナマリアも、何が困った事があったら言ってね」

「!なら、皆が困ってる魔物について教えてくれない?」

「魔物…」


フランは悲しい表情を浮かべながら、話し始めた。


魔物は大きな猪のようなもので、牙や爪が鋭く、その巨体では考えられない程、素早いスピードで動き、家や畑だけで無く、人や家畜までも襲う。


「村にはまだ、妖精様の加護があって、深くは入り込んで来ないんだけど……」

度重なる魔物の襲撃に、加護が弱まり、最近は村の中にまで侵入してくるようになった。


(ラフラーレンの加護か)


久しぶりに会ったラフラーレンは弱っているように見えたから、それは事実。


(ラフラーレンに元気になってもらわないと)


ルナマリアはフランにお礼を言うと、家に来ないか?と言うフランの誘いを断り、湖の方に戻った。


「ラフラーレン、戻ったよーーー」

『あ、おかえりルナマリア!』


戻った先には、これでもかとお菓子や飲み物が並んでいた。


「……まだ元気そうだね」

『だって久しぶりにルナマリアに会ったんだもの!元気にもなるよー!!』

その言葉通り、笑顔満点のラフラーレンだが、湖には、先程と同様活気が無い。


「ラフラーレン、1度女神様の所に帰ったら?」

女神様のいるあの神聖な場所は、傷付いた妖精達を癒す場所。


だが、ラフラーレンはルナマリアの提案に、首を横に振った。



『今私がここを離れたら、湖は枯渇しちゃうし、村も、全滅しちゃう……最後まで、ここを守らなきゃ』



その言葉には、ラフラーレンの決意を感じる。


『でもね、私はルナマリアに危険な目にあって欲しくないの』





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ