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そろそろ家に到着する所で、何やら騒ぎが聞こえた。


「あ!レン君!」


近所に住むおじさんが、レンの姿を見るやいなや、駆け寄る。



「どうしたんですか?」

「大変なんだ!君のお母さんが!!」

「ーー」

ルナマリアは、レン達の家に視線を向けると、バッと走り出した。



「っ!」

家の中は、散乱された家具と、傷付き倒れている、母親。

周りには、心配そうに集まる住人の姿。


「母さん!!」

その惨状を見たレンは、真っ青な顔で、母親に駆け寄った。


「どうやら、魔物が入り込んだみたいで…」

(ーー魔物?有り得ない)

住民達が、状況を説明するが、ルナマリアは心の中で否定した。


(魔物なら、村に入り込んだ時点で、私が気付かない筈が無い)


「母さん!母さん!」

「酷い傷だ…。今の所、命に別状は無いが、このままだと…」

母親の怪我は、とても酷く、意識も無い。



回復魔法(ゲートオープン)



ルナマリアは、魔法で杖を出すと、母親に向かい、迷う事無く呪文を唱えた。

たちまち綺麗に癒える、傷。

血の気の引いた顔に、赤みが戻ると、母親はゆっくりと、瞼を開けた。

「ここは…」

「母さん!母さん!良かった…!」

わぁっ。と、歓声が上がる。


「ルナマリア…魔法使いなのに…回復魔法も、使えるんですか?!」

レンは驚きの表情で、ルナマリアを見上げた。


そう。

私が魔法使いと明かしても問題無いと思ったのは、普通、魔法使いは、回復魔法を使わないから。


回復魔法が使えるのは、僧侶が基本。

だから、魔法使いだと明かしても、期待させる事は無いと思った。


「使えるよ」

でも、そんな事を言っている場合では無くなった。

今、魔法を使わなければ、母親の命に関わる。

別に出し惜しみするつもりは無い。


「本当に助かりました……!ありがとうございますルナマリア。君は、命の恩人です」

涙を流し、母親を抱きしめながら、お礼を言うレン。


「いや、ほんと良かったよ」

「お嬢ちゃん、すげーな」

周りにいた住人達も、次々と賞賛やお礼の言葉を口にする。


「うちの町の僧侶じゃ、こーはいかねーよ」

綺麗に治った傷を見て、感心したように言う近所のおじさん。


「僧侶?この町、いるんだ」

僧侶も魔法使いも、希少価値が高く、町に在中していない事も多く、攻略対象の1人、フランの住む村にも、僧侶はいなかった。


「いるっちゃいるけどなぁ…そりゃあもう我儘放題で…」

住人達は顔を見合わせて、ため息を吐いた。


「たった1人の僧侶だからってやりたい放題だよ」


その中で、怪我を治す事の出来る僧侶は、医学の発達していな市民達の間では、重宝される。


「治療費だって、すっげー高額を要求して来るしよぉ。あそこにいるゲンさんだって、事故で足を怪我して……足元見やがってよ。もー、一生借金返済だよ」

ルナマリアは、紹介された、僧侶に足の治療を受けたゲンさんに視線を向けた。


「…治療を受けた?」

傷は閉じているのだろうが、杖無しで歩けるようにもなっていない

その姿は、どう見ても、完治しているようには見えない。


(魔法が雑い、弱い、下手)


ルナマリアは杖を、そのまま、ゲンさんにも向けた。


回復魔法(ゲートオープン)


目映い白い光とともに、綺麗に完治する足。



「おぉ…!」

痛みが完全に消えたのか、ゲンさんは杖を手放すと、その場でジャンプして見せた。

「痛くねぇ!歩ける!歩けるぞ!」

足に触れ、事故にあっていない前の状態に戻った事を、実感する。


「本当にありがとう!ありがとう!」

涙を流しながら歓喜し、ゲンさんはルナマリアの手を握った。


「ーーって、悪ぃ!魔法使いのお嬢ちゃんよ……俺、今、町の僧侶に借金してて、支払える金がねぇんだ…!」

「あ!私の所も…まとまったお金が無いので……必ず、後で支払います!」

ゲンさんもレンも、萎縮するくらい頭を下げて、お金の事を口に出すので、ルナマリアは戸惑いながらも、ハッキリと口にした。


「お金要らないよ」

「え?!」

「要らない」

聞き返されたので、再度ハッキリ答えると、町の住人達は、目に涙を溜めながら、わぁーー!と歓声を上げた。


「女神様だ!女神様がいらっしゃるぞ!」

「ありがたや、ありがたや」

「え?え?ルナ、人間だけど…」

皆してルナマリアを神様の様に称え上げ出したので、ルナマリアは更に萎縮した。




「………」

「ル、ルナマリア、大丈夫?」

あれから皆に揉みくちゃにされつつ歓迎を受けたルナマリアは、疲労困憊+眠たげな表情を浮かべていた。

「眠たい…」

ルナマリアは基本体力が無い上に、現時刻はもう23時。


普段のルナマリアならとっくに就寝時間である。


「ゲンさん、もう一生普通に歩けないと思っていたから…嬉しかったんだと思います」

その気持ちは住民達も同じだった様で、皆、自分の事の様に喜んでいた。

その結果が、中身が25歳とは言え、現10歳の女の子を遅くまで宴に付き合わすことになった。

因みに母親は就寝している。


「……」

ルナマリアは、ピタッと動きを止め、レンを見つめた。


「ルナマリア?」

「ごめんね。回復魔法は使えるけど……お母さんの病気までは、治してあげられなくて……」

申し訳無さそうに言うルナマリアに、レンは一瞬、驚いた後、笑顔を浮かべた。


「そんな事、気にする必要は有りません。ルナマリアのお陰で、母さんは助かったんです……本当に、本当に感謝しています」

手を握り締めるレン。

ルナマリアはその手をジッと見た。


(ーー魔物じゃない)


母親は、背後から何者かに襲われたとしか覚えておらず、事件後、その場にいた他の住民達から、人型の魔物の姿を見たと証言が有り、魔物の仕業だと決められた。

ただし、その証言した住民達は、魔物の姿を見たと発言した後、その場からいなくなり、証言した住民達は、普段、レン達の家の方に来る事が滅多に無い人達だった。









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