表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/103

35





「落ち込まないんだね」

「はい。勿論。失敗は成功の元ですし。何より、別の物体を作れた事には変わりありませんから」

ただの薬草が、青い結晶へと姿を変え、性能も変化させた。


「…うん。良いね」

ルナマリアもまた、笑顔を浮かべた。


失敗はしたが、レンが錬金術師としての能力がある事は立証された。

何より、初回でこれだけ出来る事は、まず無い。

レンには思った通り、才能がある。

そして、努力をし、失敗を恐れない向上心がある。


「レンは、きっと凄い錬金術師になれるよ」


「ありがとうございます……素晴らしい魔法使いのルナマリアから言われると、自信になりますね」

眩しい程素敵な笑顔を向けられる。


(何でこの人、攻略対象じゃないんだろ……)


イケメンで頭も良くて、性格も良く、母親思いで、努力家。

絶対!他の誰を差し置いてもこっちだろ!!

と、叫びたくなるのを、我慢する。


「ルナマリア?」

「あ、何も気にしないで。生きていたら運営に抗議の電話入れてるだろーなって思ってるだけだから」

「運営…?」

意味の分からない言葉に、レンはただ首を傾げた。




「ーーちょっと!!!」


「?」

するとそこに、怒りの籠った声が、聞こえてきた。


振り向くと、ガラの悪そうな男の人を2人を両脇に携えた、クルクル縦髪ロールの、レンと同じ歳位の女の子がいた。


見るからに不機嫌そうなその女の子は、ルナマリアをキッと睨みつけると、ズカズカと許可も取らず、レンの家の敷地内に侵入する。



「こんにちは、ミスティアお嬢様」

どう見ても無礼な態度なのに、レンは笑顔で彼女を迎えた。


(お嬢様……めっちゃそれっぽい!)


クルクル縦ロールなんて、本当にThe!お嬢様!って感じがヒシヒシと伝わる。


(そして何故か敵視されてる…)


悪徳パーティの面々といい、前回の清香(きよか)先生といい、何故こうも初対面から敵意を示されるのか……。

もし本当の10歳の多感な歳頃の女の子だったら、深く傷付いているところだ。


(それにしてもーーミスティア?)

レンは彼女を、ミスティアお嬢様と言った。

ルナマリアは、この名前に聞き覚えがあった。


(…………あれ?なんか……凄い動悸がしてきた……)

まさかのまさかのまさかのまさかの、お約束の展開でも待っているのかーーー。




「久しぶりねレン、お母様の調子はどうかしら?」

バサッと、扇子を広げ、尋ねるミスティア。


「最近は調子良く過ごしていますよ。ご心配おかけして申し訳ございません」

「……そう。それは良かったわね」

言葉とは裏腹に、ミスティアの表情は険しい。


「でも病が治った訳では無いのでしょう?それならば、早く私の家に、養子として来た方が良いのではなくて?そうしたら、お母様の治療費を立て替える事を承諾するわよ」


(養子……)


「ありがたい申し出ですが、当の母が、それを望んでおりません」


(ミスティア……ミスティア……)


聞いた事がある。

それはもう、嫌でも脳裏に刻み着いた、名前の1つ。


そう。残念イケメン男の1人


シル=ミスティア!!!


ガクッッッ!!!!

膝から崩れ落ち、その場に倒れ込むルナマリア。


「ルナマリア?!大丈夫ですか?!」

いきなり倒れ込むルナマリアを心配し、慌てて駆け寄るレン。

「はぁはぁはぁ…だ、大丈夫」

どう見ても大丈夫では無いくらい、動悸息切れが凄い。


「辛い…全部が辛い…!折角!折角真っ当なイケメンに出会えたと思っただけに!ショックが大きい!!」

「な、なんですのこの子…」

急に倒れ込んだと思ったら、おかしな事を口走るルナマリアを怪訝そうな顔で見るミスティアお嬢様。


そうだ。

確かゲームでシルは、ミスティアの家に養子に入って、名前も変えたって言ってた!!

昔の名前は捨てたとかで、最後まで教えてくれなかった。



「やだやだやだやだ」

「ルナマリア?大丈夫?」

「いや……ちょっと頭おかしいんじゃないですの?その子」

ぶつぶつと独り言を呟くルナマリアは不気味だが、それでも心優しくルナマリアの心配をするレンに対して、ミスティアは引き気味に突っ込んだ。



(まさかレンが…最低最悪ヒモお荷物残念イケメン男だったなんて!!!)

言われてみれば、面影はある。

見た事ある。

でも名前が違うから考えもしてなかった。



顔を上げ、レンを、瞳に涙を溜めながら見つめる。


「どうして…どうして…あんなヒモ男なんかに……!」

「ヒ、ヒモ??」


必死に訴えがているのは分かるのだが、意味が分からず、レンはただただ心配し、背中を優しく摩る。

その優しさも、今のルナマリアには追い討ちだった。


顔を覆い隠し、しくしくと泣く。

優しいレンは心配そうに見守っているが、ミスティアお嬢様とその取り巻き2人は、あからさまに、様子のおかしいルナマリアを見て1歩どころか5歩くらい引いていた。


「な、なんだかお取り込み中の様ですし、今日はこれで失礼しますわ!でも、考えておいて下さいませ!」

捨て台詞を吐き、足早にその場から去った。





「ルナマリア?本当に大丈夫ですか?」

暫くして、涙が止まり、多少落ち着いた様子のルナマリア。


「大丈夫。取り乱して本当にごめんなさい」

ショックが大き過ぎて盛大に取り乱してしまった事を、25歳、大人の女性として反省する。

取り繕うように、ルナマリアはコホンと咳払いをした。


「平気なら良かった」

眩しい笑顔。

その笑顔が、今は辛い。

「レン……錬金術、頑張ろう!」

「???はい」

急にガシッと手を強く握り締めて来て、前のめりに応援するルナマリアを不思議に思ったが、レンは素直に頷いた。


(ヒロインの為にも!ただのヒモ男にはさせない!)



何故ならば、彼を鍛えないと、ヒロインが世界を救う為の時間が、大変大変大変かかる!!!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ