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イケメン達は攻略対象で見て来たが、将来の姿を思うと悲観するしか無いので、純粋な気持ちでイケメンを堪能出来るのは今回が初めて。
(本来はこーゆー人が、乙女ゲームの攻略対象だよね)
そこまで思うと、ふと疑問が出てきた。
「レンは、学園からお誘いが来たら、学園に通うの?」
「学園?」
このクソゲー《リアリテに舞い降りた聖女》の舞台となる、リアリテ学園は、性別年齢職種肩書きなど全て問わず、優秀な人材を集め、育成する為の学園。
この世界では最高峰の学校で、入学出来れば最高の肩書きだし、将来安泰と言われてて、この学園を目指してる人も多い。
これだけ優秀なら、学園に誘われてもおかしくない。
でも、ゲームに、レンと名前のつくキャラはいなかった。
(モブなら分かんないけど)
何せこのクソゲーは主要キャラ以外の扱いが雑い。
サブキャラですら、顔なし名前だけなのだから、モブに至っては、名前も顔も声も無く、生徒①の扱いは当然だ。
でもそれならそれで、声を大にして言いたい。
どうして最低最悪残念イケメン男を攻略対象にし、正統派のレンを攻略対象にせず、モブにしたのか!!!
意味が分からない。
「私は、学園には行きませんよ」
「行かないの?」
あの裏社会で悪事ばかり働いていたジュリアスも、学園に通ったと言う肩書き欲しさに入学をしていたのに。
「母さんを残しては行けませんからね」
「あ…」
レンの母親は病弱で、体が弱い。
数日過ごしただけだが、彼女は一日の殆どをベットで過ごしていて、重い病気なのが伺えた。
父親も幼い頃に亡くなった様で、今はレンが、こうやってギルドの仕事をこなし、生活費を稼いでいる。
「ルナマリアが来てから、母さんの調子が良いんです」
笑ってそう答えるレン。
「…そっか」
ルナマリアがこっそり回復魔法を唱えているから、一時的に体力が回復しているだけで、病が治っている訳では無い。
「ルナマリア」
悲しい表情を浮かべているルナマリアに気付くと、レンは彼女の頬に優しく触れ、笑顔を向けた。
「貴女が悲しむ必要は有りません……優しいですね、ルナマリアは」
「!」
前世も含め、イケメンに至近距離でこんなふうに慰められた経験の無いルナマリアは、思わず顔が真っ赤に染まる。
(駄目だ!前世でも彼氏いない歴年齢+残念イケメン男としか関わって来ていないせいか、免疫が無い!)
悲しい話だ。
だが、これが正しい乙女ゲームの世界だと、ルナマリアは思った。
(レンがヒロインに選ばれて、魔王を倒す英雄になれば良いのに……)
ヒロインの安息の為にも、切実にそう思わずにはいられない。
「やっぱり、2人で採取すると早いですね。ここら辺は探し終えましたし、他の場所に移動しましょう」
現地点での採取は、あらかた採り終えた。
「じゃあルナがーー」
探索の魔法をかければ、ある程度、山菜の生息している場所が分かる。
魔法使いである事を何となく今まで黙っているが、明かしてしまっても、何も問題が無い気がしてきた。
レンも母親も人徳者で、きちんと病気と向き合っている。
変な期待を持たせたく無くて黙っていたが、彼等なら、きちんと理解している気がするし、そもそも、魔法使いなら、隠す必要も無い事に気付いた。
ルナマリアは、魔法で、今までのとは違い、普段使いの大きい杖を取り出した。
「!ルナマリア……魔法使いだったんですか?」
「うん、そう」
そのまま、ルナマリアは杖を上に掲げ、呪文を口にする。
「探索魔法」
光が、ルナマリアの体から放たれ、地面を一瞬で流れると、杖から光の線が、一定方向に向かった。
「あっちだって」
「……素晴らしいですね。これなら、10歳で旅をしているのも頷けます」
「ありがとう」
褒められたので、素直に感謝を述べる。
ルナマリアの案内で、新しい薬草を採取する場所へ向かう途中、クルリと、ルナマリアは振り向き、レンをじーと見た。
「ルナマリア?」
「やっぱり……レン、魔力あるね」
「え?」
レンから、魔力特有の気配を感じる。
「そうですよ。良く分かりましたね」
「少量だけど、感じるよ」
魔力を探知出来るのは、ルナマリアだけの特権では無いが、難しい上に、魔力の量が少ないと見逃される事も多い。
追記
因みにルナマリアは、同じ魔法使いにも見破られないように、上手に魔力を隠しています。
「その通りです。あるのはあるのですが、とても少ないので、あって無いような物です」
実際、今まで生きてきた中で、魔力を使用した事は1度も無いと、レンは話した。
確かに、魔法を放てるか?と問われれば、きっと撃てない。
魔法使いにはなれない。
「魔法使いにならなくても、魔力の使い道なんて幾らでもあるよ」
「え?」
そう言い、ルナマリアはさっき採取した薬の効果のある赤い花と、山菜を両手にそれぞれ持った。
「ーー形成」
呪文とともに、両手に持った赤い花と山菜を合わせる。
一瞬、空間が歪むと、2つの材料が合わさり、1つに形成された。
「な、何、これ…」
こんな魔力の使い方を見た事が無いレンは、目を丸くして、形成された物体を見た。
「…何だろ…」
何故か、形成した筈のルナマリア本人も、苦い顔で物体を見る。
元の赤い花と山菜の緑を混ぜた黄色の結晶。
「ルナマリアも分からないんですか?」
何をしたのか理解出来ていないが、この現象を起こしたのは間違いなくルナマリア。
なのに、本人にも、出来上がった黄色の結晶が何かが分からないらしい。
「鑑定魔法」
ルナマリアはその結晶に向かい、鑑定魔法を使用すると、申し訳無さそうに俯いた。
「ごめんなさい……失敗しました」
「失敗?」
「爆竹になっちゃった」
「ーーー爆竹にですか???」




