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『諦めろ。ルナマリアにはお主のあざとさは効かん』
横から見ていた神楽が、出会った当初にも言った言葉を、再度呆れながら吐いた。
「いやいや、可愛いとは思ってるよ?」
(でもごめん!恐怖が勝つ!!!)
脳裏には、ゲームでヒロインのストーカーと化した瑞月の、ベット下からの不気味な笑顔が、恐怖としてこびり付いている。
「むー」
瑞月は自分の可愛さを良く理解しているようで、上手くそれを利用して生きてきた所もあるのだろう。
大概は可愛くおねだりすれば何とかなる。と思っている節がある。
『悔しいのならば、お主も学園に行けるよう、ちゃんと努力するのじゃな』
下手に才能に満ち溢れていたのと、魔物使になるのを戸惑っていた部分が重なって、瑞月は真面目に訓練をしていなかった。
「学園…優秀な人が通う学校…」
ここ和の国でも、リアリテ学園は有名らしい。
ポツリと呟くと、瑞月はルナマリアを見上げた。
「ルナマリア、学園に行くんだね」
「?うん」
注意 通うとは言っていない。
「……分かった!僕、必ず、立派な魔物使になる!それで、ルナマリアを僕にメロメロにしてみせる!」
「メロメローー新種の魔物の名前?」
『ルナマリア、鈍さもそこまで行くと病気じゃ』
熱く燃える決意を口にする瑞月を前に、全く意味の分からず、見当違いな事を口にするルナマリアと、何も伝わっていない瑞月を不憫に思う神楽。
行く末を静かに見守る、ファイティン、トロン、グリフォンの姿があった。
ジージー〜ー
ーーーーーー設定変更します。
瑞月
過去
その可愛さ故、魔物使にストーカーにされる。
ストーカーに仕えていた魔物の魅力にかかり、監禁され幼少期を過ごすも、魔物使の素質があり、助けに来た友人グリフォンが殺されてしまった怒りで覚醒し、自身に魅力をかけていた魔物を逆に調教する事に成功した。
だが、誰の事も信用出来なくなった彼は、そのまま魔物を喰らい力を得る禁断の職種、魔物喰いになった。
禁断の職種ゆえ、その希少さから、学園への入学を認められるーーー
→→→→→→→→→その美幌故、魔物使にストーカーされる。
ストーカーに仕えていた魔物の魅力により操られていたファンクラブによって、孤独な日々を過ごしていたが、魔法使いルナマリアにより、平穏な日常を取り戻し、齢8歳にして、友人グリフォンとの魔物使に成功する。
優秀なその実力から、学園への入学を認められるーー
ホラー系ストーカー男→→→→→→あざと腹黒可愛い系
魔物喰→→→→→→魔物使
イケメン→→→→→イケメン。変更無し。
ジージー〜ー
ーーーーーーーー設定変更完了しました。
***
和の国を経ち、数ヶ月ーーー。
結局あれから数日程、のんびり神楽の家で過ごしていたルナマリアは、このまま神楽の家にいれば、二度と自分が動かなくなる事を察し(ぐーたら生活大好き)、皆に別れを告げ、旅に戻った。
道中、何人かの妖精や精霊に出会い話をしたり、困った魔物を退治したり、野宿して、食事して、普段通りに過ごす。
「ふぅ」
疲れた。と、本日の野宿となる場所を決め、魔法で火を起こし、テントを張る。
まだ日は明るいが、なにせルナマリアは体力が無い。
他の冒険者よりも時間がかかる為、3日でつく道のりが、1週間かかったりもする。
1人だと自分のペースでのんびりする為、余計である。
「おいで、私の守護神獣ーーファイティン」
テント等の用意が全て整った所で、ルナマリアはファイティンを召喚した。
「ファイティン、久しぶり」
『うむ。元気そうで何よりだ。我が主よ』
あまり顔を見せ合わないのも良くないと思い、時折こうやって、ルナマリアはファイティンを召喚している。
「ファイティン、それ止めてよ。私、主なんて柄じゃないのに…」
『何を言う。主は主だ』
何を言われようとも、主呼びを止めるつもりは無いらしい。
そもそも、ルナマリアは当初、ファイティンとも誰とも、契約するつもりは無かった。
瑞月も言っていたが、自分の命で傷付くのを見たく無いし、そもそもが命令なんて柄じゃない。
だから、ファイティンに契約したいと言われた時も、断っていたのだが、ファイティンは諦めなかった。
生真面目な彼は、1度主と定めたルナマリアに、契約されずとも付き従った。
それはルナマリアを深く困惑させ、最終的に契約にまで持ち込んだ。
何故なら、契約するまでずっと付き纏われると思ったからだ。
それなら、自分が呼んだ時だけ来てくれる方が良い。
(どうせ一緒に戦うなら、そっちの方がルナも守りやすい)
ーーとの考えにまで至った。
(その経験があったからこそ、瑞月に言えたんだけどね)
どうせ戦う事になるのなら、一緒に戦う。
魔物使になる事を迷っていた瑞月に送った言葉。
『主、肉でも狩るか?』
「ありがたいんだけど…いいのかな。ファイティンって本当は凄く偉いんだよね…?」
前回の和の国の皆の反応から、改めて神獣が凄い存在である事を認識したルナマリアは、そんな凄い神獣であるファイティンに、ただの自分の食事の調達をさせる事を躊躇してしまう。
『構わぬ。気にする必要は無い。それに何度も言うが、足に我を使ってくれても構わぬのだぞ?』
ファイティンはそう言い、体のサイズを馬くらいの大きさに縮めると、背を差し出した。
彼の意思で、大きさを変化させる事が可能らしい。
確かに、ファイティンに乗れば、今よりも早く、楽に移動する事は可能になる。
「んーん。それはいいの。ゆっくり自分のペースで歩くから。勿論、必要な時は呼ぶよ」
ファイティンに乗って移動すれば大変楽だが、他力本願が過ぎる気がするし、のんびり旅をしたいのも本音。
何より、偉い神獣様をそう何度も呼び出すのは本意では無い。
(女神様に殴られそうだし……)
女神様はルナマリアがぐーたらする事に大変厳しい。
自分の事は自分でする。大事。
(それに歩かなくなったら、いよいよ、私の体力死んじゃう)
ただでさえ無い体力の灯火が消えてしまう。




