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ラフラーレンを手に、ルナマリアは笑顔で告げた。
『ルナマリアぁ!いつの間にかこんなに立派になって!!』
その言葉に感激したラフラーレンは、ハンカチを手に涙を滝のように流した。
そのままお菓子やお茶のおかわりを勧めてくるラフラーレンを残し、ルナマリアは村に戻る為に来た道を歩いた。
(出来る事何も無いし……魔物の情報集めでもしよ)
テクテクと歩む。
根源となる魔物を倒せば手っ取り早いのだろうが、どうやら、魔物は大変強いらしく、危ないから絶っっっ対に近寄ったら駄目!
!と、ラフラーレンにきつく言いつけられてしまった。
(そんなに強いなら、私にはどうしようも出来ないし…)
神聖な森は女神様の加護が有り、魔物が入り込めないようになっている。
神聖な場所から1度も出た事が無いルナマリアは、魔物と対峙した事が無かった。
「はぁ…どこかに勇者様でも現れないかなー」
前世でよくある、王道の勇者が現れるのを、ルナマリアは空を見上げながら呟いた。
そんな中、道筋に、小さな男の子が1人、村から籠を片手に出て行こうとしているのが見えた。
(こんな所から?)
村の出入口とは違う。
人目につかないように外に出ている。
ルナマリアは男の子の出て行った方を見た。
(慣れてるから…初めてでは無いんだろーけど…)
村人やラフラーレンの話では、今は魔物が活発化していて、危ないと言っていた。
「……うー」
見つけてしまった以上、見過ごす事が出来ず、ルナマリアは男の子の後を追った。
横顔を見た男の子は、綺麗な薄紫色の髪に、美しい青い瞳。
まだ幼いながら、端麗な顔立ちをしていてーーールナマリアは、何故か、見覚えがあった。
(あれ?どこで見た事があるんだろ…?)
森に捨てられてから、1度も人間と関わった事が無い筈なのに…と、記憶を辿る。
んー。と頭を悩ましていると、前から声がした。
「ねぇ」
「わ!」
考え事をしてると、いつの間にか付いて来ているのがバレていたようで、男の子は立ち止まり、ルナマリアに声をかけた。
「ビックリしたー」
「君、村の外に出ちゃ駄目じゃないか!危ないよ?女の子なんだから!」
「私?」
自分を差し置いて、ルナマリアの安全を心配するその言葉に、ぽかーん。と口を開くも、すぐに気が付いた。
(そっか。小さい男の子って思ってたけど、私も今小さい女の子なのか!!)
25歳の前世の記憶を持つ、見た目8歳の少女。
目の前の男の子は、今の自分より少しだけ歳上に見える。
「……君も危ないよ。まだ小さいんだから」
「ぼ、僕は男の子だから!」
少しムキになって答える少年に、ルナマリアは子供だなー。と思いながら、話を続けた。
「怪我しちゃったら、お父さんもお母さんも悲しむよ?」
「うっ…」
良心的な心はちゃんと持っている様で、男の子は言葉を詰まらせた。
「…………お、お父さんもお母さんも……魔物の対応で大変そうで……だから、何かお手伝い出来ないかと思って……」
男の子の持っているカゴの中には、薬草が摘まれている。
(こんな小さな内から、自分から動くだなんてーー!!!)
なんて偉い子なんだ!!
と内心感心し、自分の低堕落ぶりを自覚する。
「小さいのに立派だね」
キラキラの目を向け、賛辞を送る。
「え?何?どーゆー事?」
明らかに自分より歳下の女の子に言われる台詞では無く、男の子は戸惑った。
「私、ルナマリア。貴方は?」
「……フラン。フラン=アドリアス」
「フラン?あはは。フランって聞いた事あるー!確かーー」
そこまで言って、思い出した。
バッ!と、フランの顔を見る。
(フラン…フラン=アドリアス!知ってる!私、ゲームで見たんだ!)
それは前世で、自分がプレイしていた、乙女ゲーム。
私は前世、病気にかかり、最後ずっと入院生活を送っていて、死ぬ直前までずっとゲームばっかりやっていた。
その中で、最強最悪のクソゲーと呼ばれていたRPG要素有りの乙女ゲーム!!
ヨウナと呼ばれるヒロインと、そのパートナーが、愛を育みながら、世界の敵である魔王を倒すとゆう、定番のストーリ!!
ストーリー自体はまずまずなのに、
そのパートナーとなる肝心の男性キャラが、全員くそ!!!
それぞれが辛い過去を持ち、闇堕ちしてて、ダメ男全開。
どうやって恋に落ちろと…との声多数。
キャラデザが良いイケメン達だけに、もう少し何とかならないのか!!との声が上がった残念イケメン乙女ゲーム!!!
(クソゲー過ぎて、あらかたCLEARした後、すぐ止めちゃったから、うろ覚えで、全く気付かなかったけど……)
確かゲームの名前はーーーリアリテに舞い降りた聖女ーーー
(まんまこの星の名前じゃん!何故気付かなかった私……)
私、ゲームの世界に転生しちゃったんだ!!!
「だ、大丈夫?」