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「待たせてごめんねグリフォン……僕も、一緒に戦うから、僕と、魔物使してくれる?」
『キュイ!キュイーー!!』
瑞月の誓いの言葉に呼応するように、グリフォンは声高く叫んだ。
ピカッッーーー。
2人を青い光が包む。
《グリフォン、魔物使契約しました》
「嘘…!嘘っ!」
計画が全て狂い始め、乱暴に頭を搔く清香先生。
史上最年少の魔物使の誕生だった。
「くっ!トロン!もう一度ーー!!」
「もう止めよう」
清香先生の言葉を遮り、瑞月は、トロン自身に向かい、悲しそうに、声をかけた。
「こんな事、君も望んでないよね?君は無理矢理調教されてるだけ……逃げて来ていいんだよ」
『……ニ…ゲ…ル』
「!止めなさい!逃げる事は許さないわ!またお仕置きされたいの?!」
『…ヤ…ダ……モウ、コンナコト、シタクナイーー!』
「トロン!!」
ピーーーーー!!!!
大きな音と共に、青い光が、今度はトロンと瑞月を包む。
《トロン、魔物使解除しました》
《トロン、魔物使契約しました》
天の声が響くとともに、瑞月の元に向かうトロン。
そのまま、今度は瑞月を後ろに、清香先生に向き合った。
「おー凄ーい。流石攻略対象者」
レベチ半端無いな。と、ルナマリアは拍手を送った。
魔物使として開花した瑞月は、無理矢理従えていたトロンを解き放ち、自らの意思で、瑞月と再契約した。
「こんな…!有り得ない…!私の調教が破られるなんて…!」
「どうして?初めから、清香先生は瑞月より何も優れてなかったじゃない」
ショックを受けて放心気味の清香先生に向かい、悪意無く本心を告げるルナマリア。
「はぁ?!私は教師よ!?瑞月君の先生なの!今まで、私が瑞月君を育ててきたのよ?!」
「うん。出来の悪い教師がいるんだなぁ。って思ってたよ」
益々火に油を注ぐ発言をする。
「清香先生も本当は分かっていたでしょう?自分が瑞月より優れていないこと」
清香先生は、ファンクラブには、トロンの姿を見せ、直接、魅力をかけていたのに、瑞月にはギリギリまでしなかった。
「貴女は瑞月の力を恐れていた。トロンを瑞月に直接会わせたら、トロンは貴女では無く、瑞月を選ぶと思ったから」
魔物使として、魔物とのコミニケーションに優れ、好かれる才能。
そして、魔物使として、自分の調教を打ち破る力。
清香先生は魔物と上手くコミニケーションをとり、好かれる人格が圧倒的に無い。
「貴女は初めから、瑞月より魔物使として全てが劣っているーーー貴女は瑞月の教師には相応しくない」
ハッキリと、これ以上無い程、ルナマリアは清香先生に油を注ぎまくった。
「…は……ははは」
不気味な笑い声をあげる清香先生。
「?どうしたんだろ?」
ルナマリアは、急に様子のおかしい笑い方をする清香先生を不思議に思い、首を傾げた。
「いや……これ以上無いくらい挑発してたよルナマリア」
無意識に、ただ純粋に話していたとしたら、恐ろしいと、瑞月は思った。
「許さない許さない許さないーー殺してやるわ」
ガッシャァアーーーンンンッッッッ!!!!
盛大に窓ガラスが割れる事が響くと、教室内に、沢山の魔物が入室して来た。
ふとグラウンドを見ると、外にも魔物がいるのが見える。
「こんなに大勢の魔物を……!」
魔物使している。
和の国の魔物使の学校の教師として、恥じない実力の持ち主だと示すように。
ルナマリアは、集まった魔物達を見渡すと、初めて、険しい表情を浮かべた。
「この魔物達……悪意がある。人を襲う魔物ね」
「え?!」
魔物使は、人間と友好関係を結べる、穏やかな魔物としか魔物使しない。
出来ないはずだった。
悪意ある、人を襲う魔物を、強制的に支配下に置いている。
調教に関しての実力が強い。
「そうよ!こいつ等、人を襲いたいらしいから、人を襲う時には最適な魔物よ!」
人を襲う魔物と、利害が一致している。
だからこそ、魔物使出来た。
でも、それは魔物使としては失格。
悪意のある魔物とは、魔物使として優れている瑞月も、コミニケーションが取れず、調教を解く事は出来ない。
「本当に教師として相応しく無い方ですね」
ルナマリアは今度は、悪意を持って、言葉にした。
「黙れ黙れ黙れ黙れ!ここであんた達を皆、殺して!瑞月君だけ!連れて帰る!2人だけでずーーーっと!過ごすのよ!愛してるの!瑞月君だけ!」
「いや、ほんと年齢考えた方が良いですよ?」
瑞月は8歳。清香先生は30代。
これだけでもう犯罪だ。
「黙れ!愛に歳の差なんて些細なものなのよ!」
「瑞月怯えてますよー」
清香先生的には、魅力で、虜にした状態で、相思相愛プレイを楽しみたかったのだろうけど、今はもうそれは出来ない。
いや、上の文面を見ただけで、恐怖しか無い。
本当に瑞月が魅力されなくて良かった。
こんなの、ただのトラウマまで一直線コースだ。
(将来、もっと辛い事が起きて、ホラー系ストーカー男になってしまうんだから、今くらい、助けてあげないとね)
「ちょっと!ルナマリア!起きてる!?」
魔物に囲まれ、危機一髪の状況の筈なのだが、ルナマリアはのほほんと考え事をしてる様子で、瑞月はルナマリアの体を揺さぶった。
「起きてるよー」
「そんな呑気にしてる場合?!このままじゃ僕達……」
魔物使に目覚めたとは言え、この状況を打破することは、瑞月では不可能。
顔面蒼白で震える瑞月に、ルナマリアは優しく微笑みかけると、頭を撫でた。
「大丈夫。お姉さんに任せなさい」
「瑞月君に馴れ馴れしく触るんじゃねーー!!!」
怒号とともに、一斉に襲いかかる魔物。
ルナマリアは、そっと、祈るように手を組み、瞳を閉じた。
「おいで……私の守護神獣ーー《ファイティン》」
魔法陣がルナマリアの周りに浮かび上がり、白い光とともに、ルナマリアの前に現れる、車ほどの大きな、綺麗な存在。
虎のような綺麗なオレンジと黒い線の艶やかな毛並みに、体つき。
青い鋭い瞳に、鋭い牙。
その風格だけで、只者では無いと理解出来る。




