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神楽が怒りを爆発させてしまうと、和の国ツキナリ自体が滅んでしまう可能性があるからだ。
(ルナマリアを虐めたら、自分達が住んでる国が危なくなるって、声を大にして言いたい…)
知っている瑞月からしたら、ルナマリアが虐められているのを見るだけで、また別の意味でハラハラしている。
『そうか。ならば安心じゃ』
神楽の悩みを解決する為にそもそも始めた事なのだが、最早ルナマリアの安全が第一になってしまっている。
『キュイ、キュイ。ミヅキ、オカエリ』
パタパタと、翼を使い、グリフォンも瑞月の肩に止まり、お出迎えする。
「ただ今グリフォン」
瑞月は微笑むと、グリフォンの顎を撫でた。
グリフォンは今、念の為に神楽の家に避難している。
『何か収穫はあったのかぇ?』
神楽の権力を使い、学校にまで行ったのだ。
「うん。清香先生が犯人」
「え?!」
ハッキリと断言するルナマリアに、思わす、瑞月は驚愕の声を上げた。
『確かかぇ?』
「うん」
迷う事無く断言する。
「ど、どうゆうこと?先生が、犯人?てか、犯人って何?」
「清香先生が主導して、瑞月の周りを虐めさせてる。目的もまだ分からないし、もうちょっと泳がせてみようかな」
淡々と話す。
ルナマリアには、最後に犯人を明かした方が面白いとか、そんな発想は一切無い。
感じるままに言い、感じるままに言わない。
結論は言うが、そう思った理由については語らず、ぶつぶつと1人、考え事をしているようだった。
「そんな…清香先生が犯人だなんて…」
信頼していた先生が犯人と断定され、ショックを受ける瑞月。
『ルナマリアはああ見えて感覚が優れておる。妾達には分からぬ何かを感じ取るのじゃろう』
「……」
全面的にルナマリアを信頼している神楽は、ルナマリアの話を信じているが、瑞月は、まだ信じれない。いや、信じたく無かった。
(先生が犯人な訳無い……!何時だって、僕の話をちゃんと聞いてくれたし、優しくしてくれたー!)
瑞月はぎゅっと手を握りしめながら、清香先生がそんな事をする人では無いと証明する。と、心に秘めた。
『ルナマリア、瑞月に清香が犯人である事を伝えるのは時期早々じゃったのでは無いか?』
瑞月帰宅後、入浴を終えたルナマリアが髪を魔法で乾かしている最中、神楽はお茶を啜りながら、ルナマリアに伝えた。
『しっかりしてるとは言え、まだ8歳。信頼しておった教師が犯人など、ショックも大きいじゃろう』
「うー。ごめんなさい」
素直に謝罪するルナマリア。
最近現れた訳の分からない女の子より、長い付き合いのある教師の方を信じるのは当然だ。
別れ際の瑞月の表情は、思い詰められていたように見えた。
「犯人を最後まで引っ張って、お前が犯人だ!って王道の展開にしたら、何で最初に言わないの?って責められる気がしたから、今言った方が良いのかと思って……」
漫画やドラマでは最後まで犯人の正体を引っ張るのだが、ルナマリア的には、いつも何故最後まで犯人を明かさないのか?と常々疑問に思っていた事も起因する。
「あー!人の心が分からなくてごめんなさい!」
『いやまぁ…いずれ知る事にはなるし、遅かれ早かれの問題じゃから、そこまで気に病む事では無いが』
顔を伏せ落ち込むルナマリアに、グリフォンは心配そうにクチバシで髪をといた。
神楽の言いたい事は分かる。
もう少し確証を得て、ルナマリア以外の誰が見ても分かる証拠を集め、そこで明かすべきだったのかもしれない。
『証拠は集めれそうか?』
「んーー」
彼女は巧妙だ。頭が良い。
自分に疑いがかからないように、緻密に行っている。
「正直、問題の解決だけなら、すぐ出来るんだけど」
『出来るのか……』
「ただ、今のままだと、清香先生を犯人と断定出来ない。目的が何か分かんないけど、また同じような事を繰り返すかもだし、全員を救えない」
確実な証拠が無い。
「やっぱり、カメラが1番かなー」
ルナマリアは、以前ジュリアスの時にも悪徳パーティを捕まえる為に使った、水晶の録画機器を取り出した。
映像はこの上ない証拠になる。
「もう少し泳いで貰うしかないかぁ」
『ルナマリア、あまり無理をするのでは無いぞ』
じゃないと、この和の国を滅亡しかねないーー。
心配そうに言う神楽の言葉からは、物騒な副音声が聞こえる。
「大丈夫だよ神楽。
例え瑞月が最低最悪のホラー系ストーカーイケメン男になるとしてもーーー」
『お主は何を言っておるのじゃ?』
ゲーム設定の未来の瑞月のルナマリア命名の通り名に、神楽は意味が分からず、怪訝な表情を浮かべた。
「ーーールナマリアが助けてあげる」
真剣な表情で、ハッキリと覚悟を告げる。
『ほんに……そんなお主だからこそ、皆、好きになるのじゃろうな』
そんなルナマリアに、神楽は笑顔を浮かべた。
場所は変わり、学校ーーー。
瑞月達の前で見せていた表情とは違う、険しい顔付きで、学校に用意された自身の教室に、清香先生は佇んでいた。
「ルナマリアちゃん…!」
ギリッと、強く唇を噛む。
その目は、憎悪に埋もれていて。
「許さない許さない許さない」
ドンッ!と、力強く黒板を殴る。
「瑞月君は私の物よっ…!私だけの可愛い子…!誰にも渡さない…!もう少し…!もう少しで、私だけの物になるのよ!誰にも邪魔させない…!」
そう言うと、清香先生の前に、物言わぬ1匹の真っ黒な、悪魔の形をした魔物がどこからとも無く現れた。
「っ!いーい?!早くあの小娘を何とかしなさい!」
命令口調で、強く指示する。
「瑞月君の視界に映させないで!この学校から!この国から!ーーいえーーー」
清香先生は、何の感情も無い声色で、命令した。
「殺しなさい」
今までの行動は、悪意はあるが、命を脅かすものでは無かった。
その先を、超えてしまった。
ルナマリアの思惑通り、だが、彼女が想像した以上に、酷い方に、犯行は暴走する事になったーーー。




