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現に、グリフォンの時は国の滅亡までは考えていなかった。
「もー駄目だよ神楽」
そんな怒りMAXの神楽に、ルナマリアは頬っぺたをぷくーと膨らませた。
「私は、神楽を助けに来たんだよ?神楽からお仕事奪っちゃったら、助けに来た意味無くなるよ」
『しかし!ルナマリアが虐められるのは我慢ならん!そんな国ならば滅びた方がマシじゃ!』
溺愛が強過ぎるーー!!
と、隣でハラハラしながら見守る瑞月。
怒りの収まならない神楽に、ルナマリアは、ふっ。と微笑むと、彼女の手を優しく握り、
「神楽ーーーもし、私が神楽からお仕事奪っちゃったりなんてしたらーーー」
遠くを見つめた。
「ーーー女神様に、怒られそう」
『ーーー』
ルナマリアの言葉に、そうかもしれない。と、神楽は怒りのオーラを取り下げた。
「大丈夫だよ。ルナ、あの子たちよりは強いと思うし」
「!魔法使い…!」
ポウっと、魔法で小型の杖を出してみせると、瑞月は驚きの表情を浮かべた。
『それは分かっておるのじゃが…』
「…っ、あの!」
話の行く末を見守っていた瑞月が、グイッと、ルナマリアの服の袖を引っ張った。
「…図々しいお願いだと…思うんだけど……皆を…傷付けないで欲しいんだ…!」
その表情は、とても悲しみに染まっていて。
「皆、本当に……優しかったんだ」
今現在、困っているのにも関わらず、魔法使いのルナマリアや、怒りに狂った神楽から、ファンクラブを守ろうとしている。
「僕の事は……もう、放っておいていいから……」
チラリと、瑞月はグリフォンを見た。
呼応するように、悲しい鳴き声を出すグリフォン。
仲良くしたい相手と、仲良くする事も出来ない。
それは、とても、悲しいこと。
「ーー私、瑞月をほっといたりしないし、ファンクラブを傷付ける気も無いよ?」
首を傾げながら、平然と言うルナマリア。
「!で、でも、虐められたら、その…魔法で…」
「ちょっとはするけど、別に傷付け無いよ」
やり返すんでしょ?と言う前に、否定する。
「推しに対する愛って純粋だよね。推しを見てると、癒されたり、明日への活力を貰えたりするんだよねー推し活の為に大金を注ぎ込んだりもしたなぁー」
「お、推し活?何それ?」
意味の分からない単語に戸惑う瑞月を無視し、ルナマリアは彼に笑いかけた。
「瑞月は皆から愛されてるんだねー」
「!」
ルナマリアの言葉に、過去、優しかったファンクラブの面々を思い出し、瑞月は目に涙を浮かべた。
「大丈夫。ルナが助けてあげる」
そんな瑞月の涙を、ルナマリアは優しく拭った。
***
「きゃあああ!!!」
「嫌ぁあああ!!!」
次の日から早速、ファンクラブの強襲?に合うルナマリアだが、難無くそれを回避する。
汚水をかけられそうになれば、それを魔法で跳ね返し。
落とし穴に落とされそうになれば、魔法で浮いて通り、不思議に思って近寄ったファンクラブが穴に落ち。
服を切られそうになれば、強力な保護魔法で逆にハサミをズタボロにし。
ルナマリアの持ち物を盗もうとすれば、口に苦味のあるお茶 (健康にはとても良い)を放り込む罠の魔法をかける。
因みに、魔法だと気付かれないように、小型の杖を使ったりと、上手く隠している。
「……ルナマリアって、凄いんだね」
多種多様な魔法を使う事は勿論、精神的にも、虐めによるダメージが来そうなのに、ルナマリアは気にも止めていない。
瑞月は素直に賛辞を送った。
「そー?昔、職場で虐めてきたお局さんと戦った事あるから、強くなったのかな?」
「お局って何なんだろ…」
ルナマリアから意味の分からない単語を聞くのに慣れてきた瑞月は、聞いてもスルーされる事を理解し、1人、ルナマリアと反対の方向を見ながら考え込んだ。
虐めを上手に避けて数日、今日は2人、瑞月の通う学校に来ていた。
「楽しみだなー」
どこか和の雰囲気のある校内を、2人で歩く。
前世では学校に通っていたが、今世では学校に行く事自体が初めてで、ルナマリアは校内を見渡しながら、ワクワクしていた。
「毎日通ってたら僕は飽きちゃうけどね……最近は、つまんないし」
ポツリと呟く最後の言葉は、ファンクラブの暴走による障害が原因だろう。
友達と自由に仲良く遊べない。
仲良くすれば、自分のせいで、友達が虐められる。
そう思えば、自分から声をかける事も出来ず、距離をとるようになった。
聞くと、グリフォンの所にも、どうしてるか気になって、陰から様子を見るだけのつもりだったらしい。
「その点、ルナマリアだと安心する」
笑顔を浮かべる瑞月。
彼女は全ての虐めを跳ね除ける。
向こうも意地になっているようで、ルナマリアにターゲットが変更され、グリフォンに対する虐めは思惑通り無くなった。
(でもこれだと、瑞月を救った事にはならない)
今もまだ瑞月は自由じゃない。
(未来、最低最悪のホラー系ストーカーイケメン男に成り下がるとしても、こんな可愛い子を見捨てる訳にはいかないよね!)
何よりグリフォンが可哀想!
(そう言えば、瑞月の辛い過去設定なんだっけ?)
確か、ストーカーがいて、監禁されて、頭おかしくなって、誰も信用出来なくなって、魔物喰になってーー
(そうだ。監禁されるんだった…)
今まで出会ったフラン、ジュリアスも、皆。
何故、こんなにも辛い過去を背負わされないといけないのだろう……。
ゲームでは、ただの過去のトラウマで、ただの設定。
それで流せていたのに、今、生まれ変わって、出会ってしまうと、これは本当に現実でーー。
(悲しい…)
でも、分かっていても、止める事の出来ない自分は、なんて無力なのだろう。と、自分の実力の無さを、ルナマリアは心の中で悔やんだ。
(だからこそ、今位は助けてあげなきゃ!)
そして、持ち直した。
(瑞月にも、ヒロインに選ばれた暁には、魔王を倒して貰わないといけないもんね!)
うんうん。と1人納得する。
「ルナマリア?大丈夫?また少しおかしくなってる?」
「でもお願い!ベット下に隠れるのだけは止めてーー!」
(大丈夫!気にしないで!)
「……うん、おかしくなってるね」
また心の中と発言がごっちゃになり、おかしな事を言ってるようになったが、瑞月はスルースキルを手に入れた為、言葉を流す事に成功した。




