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神楽は妖精の中でも力が強く、人間のサイズまで大きくなる事が出来た。
「無理しなくていーよ?妖精サイズのが楽なんでしょ?」
『折角ルナマリアが来てくれたのじゃ、精一杯のおもてなしは当然じゃ!』
ルナマリアの前に置かれた、お茶やお菓子。
他にも妖精や精霊と一緒に暮らしてるようで、それぞれがルナマリアを歓迎し、談笑した。
『ルナマリア、女神様に追い出されて、今、色々な所を回っておるそうじゃの』
「うん、そーだよ」
追い出されて早2年。
何時になったら、戻ってぐーたら生活を送るのを許してくれるんだろう……。
『お世話になった者達全員?そんな事しておったら、ばあばになってしまうぞ』
移動手段の発達していないこの世界では、基本徒歩。
街から街まで移動するだけで、大層な時間がかかる。
「そっかぁ…どーしよーかなー」
『第一、戻った所でまたぐーたらしておったら、女神様に追い出される気がするが……』
事の本質を分かっていないルナマリアは、んー。と、どうやったら早く皆の元に行けるかなー?と頭を悩ませていた。
「そうだ神楽。何か助けて欲しい事は無い?」
『助け…か』
ルナマリアの問いに、考える素振りをする。
「考えるって事は、あるんだね。何でも言って。私に出来る範囲なら、助けるよ」
『……では、妾の友人の話を聞いてやってくれぬか?』
「神楽の友人?うん、いいよ」
ルナマリアは二つ返事で了承した。
そのまま、その日は神楽の家に泊まり、今迄の野宿の疲れを癒した。
出来ればこのまま暫く、ぐーたらしたい所だが、朝起きて、何とか体を動かす事に成功した。
寝ぼけ眼のまま、神楽に誘導され、彼女の友人の元に向かう。
そこは、和の国の裏手にある、お寺の中。
(お寺…)
歴史の感じられる、古いお寺。
だが、その中には入らず、神楽は寺を通り過ぎた。
ここまで来ると、ルナマリアにも、この奥にいるものの正体が、気配で分かる。
(ーーー魔物)
小さいけれど、確かに感じる。
『紹介しよう。こやつが、妾の友人、魔物のグリフォンじゃ』
寺の裏手、普通の鳥の巣のサイズとは違い、大きめの巣の中にいる、魔物にしてはまだ小さな、鳥の魔物の子供。
グリフォンは挨拶をするように、翼をバタバタと揺らした。
「…………」
微動だにせずグリフォンを見つめるルナマリア。
「……か……」
『か?』
「可愛いーーー!!!!!」
ぎゅーーっと、グリフォンに抱きつくルナマリア。
そんなルナマリアの様子に、神楽は安心したように、息を吐いた。
『あまり心配はしとらんかったが……やはり杞憂じゃったな』
「心配?」
グリフォンに抱きついたまま、目線を神楽に向ける。
『人間は魔物全てを敵対してならん。害の無い奴もおるというのに……』
「一角兎もそうだもんね」
貴重な薬の原材料、髭の持ち主で、温厚な性格も有り、保護対象、討伐禁止となっていた。
『この国の連中は、そういった魔物との共存を望んでおるーーー筈なのじゃが……』
「何か問題があるんだね」
『キィ、キィ』
「お喋りしてくれるの?嬉しいな」
ルナマリアの腕の中で、声を発するグリフォンに、ルナマリアは笑顔を浮かべると、その手を離した。
パタパタと翼を使い、宙に浮く。
『オネガイ、ボク、ノ、オトモダチ、タスケテ』
「うん、分かった」
『早いな!』
即答で承諾する。
『こちらから頼んでおいてなんだが、少しは考えんで良いのか?』
内容を聞きもせず即決するルナマリアに、神楽の方が心配になる。
「?どうして?」
そんな神楽の心配を他所に、ルナマリアは不思議そうな表情のまま、ハッキリと答えた。
「大切な友達、神楽の友達の頼みだもの。聞き入れない筈無いよ」
『ルナマリア!!』
感極まり、涙を流す神楽。
「でも、私に出来る範囲だけどねー」
あはは。と笑うと、ルナマリアは再度、グリフォンを見つめた。
「大切な、お友達なんだね。助けるよ」
ルナマリアの言葉に、グリフォンも、薄らと涙を浮かべた。
『ーーグリフォンの友達の名前は瑞月と言うての』
「ぐふっ!!!」
たどたどしい言葉しか話せないグリフォンに変わり、神楽が説明をする最初の一文で、ルナマリアはまるでクリティカルヒットを受けたかのように、吐血 (表現)した。
『どうしたのじゃルナマリア!』
「…うん、大丈夫…続けて……」
はぁはぁと、心臓を抑えながら答えるルナマリアの表情は青白く、心配になるレベルで、神楽は慌ててルナマリアの背をさすった。
(関わらないようにしようと決めたばっかりだったのに!!)
瑞月は攻略対象の1人の名前。
(たまたま同じ名前の可能性もまだある……諦めないでおこう)
よし。と、気持ちを持ち直し、顔を上げる。
『ほ、本当に大丈夫なのか?』
「うん。大丈夫だよ。ごめんね、続けて」
(本当は承諾した事を早速後悔してる!断りたい!!)
でもあれだけ良い事を言った手前、断れない。
『では続けるが……瑞月はまだ子供じゃが、和の国でも才色兼備と名高い優秀な男児じゃ』
弓矢を使い狩りをするのも、8歳とは思えん程の腕前。
そこに、この国特有の魔物使としての素質。
「魔物使…」
魔物使は、魔物との意思疎通や、調教が大切な職業。
(飼育員さんみたいなもんか?)
ルナマリアは前世での水族館のイルカのショーを思い浮かべた。
『ーー何より、顔が良くてな』
「分かる…!」
力強く言う神楽の台詞に、ルナマリアも強く賛同する。
『ん?ルナマリアはもう瑞月に会ったのか?』
「ううん、未体験。ほんとごめん、続けて」
心がパニックで、つい心の声が出てしまうのを、反省する。
『可愛らしい顔立ちもあって前から目立っておったのじゃが、最近になって、あれに異様に付き纏う者達がおって、困っておるのじゃ』
「付き纏う?」
「直接、瑞月に危害は加えておらんのじゃが、不気味での…その上、瑞月と仲良くしていたグリフォンを敵視しおって、酷い事をしてくるのじゃ」




