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ルナマリアの魔法によって、結界をはっているから、一角兎は外に逃げ切る事が出来ず、狭い空間の中、逃げ回っている。
魔法に詳しくないジュリアスでも、結界の魔法が難しく、高等な魔法だと分かる。
(ルナマリアは凄い魔法使いなんだ…)
流れる汗を、ジュリアスは手で拭った。
(そんな魔法使いが、ルナが、俺になら絶対に出来るって言ったんだ。俺はーーー盗る!)
もう一度、ジュリアスは一角兎に向かった。
短剣を投げつけ、それを避ける方向に、走り、手を伸ばす!!
「ーー盗った!!!」
手には、一角兎の髭が、しっかりと握られていた。
「おめでとうジュリアス」
それを見届けたルナマリアは、杖をかざし、結界の魔法を解いた。
髭を盗られた一角兎は、涙を流しながら一目散に逃げ、姿が見えなくなった。
「怖がらせてごめんねー髭は大切に使うねー」
そんな一角兎に向かい、手を振りながらさよならする。
「さ、街に戻ろっか」
「…おお」
ジュリアスは、大切そうに、手にある一角兎の髭を握りしめ、そんなジュリアスを見て、ルナマリアは優しく、微笑んだ。
「ーーーおい!」
そんな感動な最中、水を差すように現れる、悪党パーティの皆様。
「この前のガキ共じゃねぇか!街で見ねぇと思ったら、こんな所まで来てやがったのか」
「ねぇ、あいつの手に持ってるの、一角兎の髭じゃない?!」
ジュリアスの持っている髭に気付き、はしゃぐ魔法使いと僧侶の女達。
「なんだぁ?落ちてるのでも拾ったか?」
「…」
物欲しそうな視線から逸らすように、ジュリアスは一角兎の髭を背に隠した。
「ジュリアスが盗ったのよ」
盗ったとは微塵も思っていない発言に、ルナマリアが本当の事を言うも、悪党パーティは大きな声で笑い飛ばした。
「は!スリの腕は多少あるみてぇだが、そんなただのガキが、一角兎の髭なんて盗れる訳ねーだろ!」
「貴方達もジュリアスなら盗れると思っていたから、彼をパーティに勧誘しに来たんじゃないの?」
前回、街で絡んで来た時、彼等はジュリアスを探していて、仲間に勧誘していた。
「は!そんなガキ1人で盗れる訳ねーだろ!俺等が力を貸してやらなきゃな!」
「え?どこにそんな自信が?頭大丈夫ですか?」
「てめぇはこの前からいちいち馬鹿にしやがってーー!!」
ルナマリア本人は馬鹿にしているつもりは一切無く、本気で不思議で、逆に心配しているのだが、勿論、伝わる筈が無い。
「あんな兎はな、餌で釣って、怪我でもさせて弱らせてから盗るんだよ!」
「一角兎は討伐禁止。保護対象ですよー」
弱ってしまえば、他の魔物に襲われてしまい、死んでしまうかもしれないし、充分に餌がとれなければ、髭が生えないかもしれない。
そういった部分も含めて、保護対象。
傷付ける事も禁止されている。
「阿呆か。これだからガキは」
武闘家の男は、ルナマリアの発言を鼻で笑った。
「バレなきゃ何してもいーんだよ!髭さえ持っていけば、金は手に入るんだからな!」
「そうそう。大切なのは結果よ。過程は関係無いの」
魔法使いの女も、武闘家の男に続く。
「流石。優秀な方々は違いますね」
「は!やっと理解したか!」
剣士の男は、やっと優秀と認めたルナマリアに気を良くし、ジュリアスに目線を移した。
「お前は前から理解してんだろ?てめぇも、俺らには及ばねぇが、優秀だ。散々、人から盗みを働いてるって聞いてるぜ」
「……っ」
真実を突き付けられ、言葉が出ない。
「俺等の仲間になれーーーお前なら立派な盗賊になれるぜ」
「……俺は……」
「駄目だよ」
黙り込むジュリアスと悪党パーティの間に、ルナマリアは立った。
「ルナ…!」
「ああ?てめぇには関係ねぇだろーが!」
「無いかもだけど…」
チラリと後ろを見ると、苦悩の表情を浮かべる、ジュリアスの姿。
「……貴方達が優秀なのは、充分、分かった。きっと、才能がある」
ルナマリアは、持っていた杖を、悪党パーティに向けた。
「あ?お前、魔法使いか?」
「ねぇ、やっぱりこいつ、捕まえましょうよ!」
「女で、魔法使い、子供!こりゃあ高値で売れるぜ!」
好き勝手に騒ぐ悪党パーティの面々。
ルナマリアを人身売買の商品にする為、悪党パーティの魔法使いも、杖を構えた。
「ーーーでも、ジュリアスに才能は無いよ」
ただ、ルナマリア本人は、武器を構えられた事等気にも止めていない様子で、淡々と告げた。
将来がどうあれ、今の彼は、貧困街の仲間を救う為に、生き残る為に、悪の道に足を染めていた。
今のジュリアスは、本当は、犯罪なんてしたくないように、苦しんでいるように、ルナマリアには見える。
「将来最低最悪のド屑野郎に成り果てるとしても、ジュリアスに貴方達は相応しくない。彼には、本当は悪党の才能は無いんだよ」
「いや、お前の言ってる事も大概だからな!誰が最低最悪のド屑野郎だ!!!」
ジュリアスは聞こえてくるルナマリアの暴言に、思わず後ろからつっこんだ。
「は!ガキ1匹が俺等相手に勝てるとでもーー」
「破壊魔法」
ルナマリアが呪文を唱え、魔法を放つと、一瞬で悪党パーティは地面に這いつくばった。
***
「お姉さん、こいつ等捕まえて下さい」
ランプの街、冒険者ギルドにて、職員のお姉さんに縄で縛っている悪党パーティを差し出すルナマリア。
「え、えーと?どうゆう状況?」
まだ小さな女の子が、ここらで悪名高いパーティを一網打尽にして捕らえている姿に、目をパチクリさせる。
隣にいるジュリアスは、縄でひとまとめにされている悪党パーティを憐れむように見ていた。




