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とは言え、盗賊(シーフ)としてのスキルは身に付けた。


(一角兎はそんなに強くないみたいだし、道中に出てくる魔物との戦闘は、私がカバーすれば良い)


「ジュリアス、そろそろ本番に行こう。行ける?」

「!」

ルナマリアの問いに、ジュリアスの顔が強ばり、緊張が覗く。

無理は無い。一角兎の採取は、一人前の大人の盗賊(シーフ)でも難しい。


「大丈夫だよ。絶対盗れるから」

だが、相も変わらず、ルナマリアの返答は絶対的な肯定。


ルナマリアはジュリアスの傍まで行くと、小さい子供にする感覚で、頭をポンポンと撫でた(実際は、ルナマリアの方が身長が低いので、背伸びをした形になっている)


「頑張ろうね」

ニコッと笑顔を向ける。

「ーーー!!!わ、分かってるから触んな!」

顔を真っ赤に染めたジュリアスは、そのままルナマリアの手を払い除けた。





山道山頂。

道中出て来る魔物を軽快に倒しつつ(ほぼルナマリア)、2人は無事に目的地まで辿り着いた。


「疲れたぁ…」

「……ルナ、体力無ぇな」

ゼーハーゼーハー息を吐くルナマリア。

一方のジュリアスは、元々のスリで逃げ回っていたからか、体力はある。



「…普通の女の子みたいな所あるんだな…」

変な奴。が大前提だが、実力は大人顔負けの魔法を使う完全無欠の魔法使いだと認識していたので、弱い部分が垣間見えた事に、ジュリアスは少し安堵し、しみじみと呟いた。


「えー…私、普通の女の子してるつもりなのに…」

前世25歳社畜OL。

生まれ変わって8年で、合計すると33歳…。


「滲み出る大人っぽさが隠れてないかな?」

「そーゆー意味じゃねぇ」

心配そうに尋ねるルナマリアに、ジュリアスはスパっと答えた。

時折会話が噛み合わない事があるが、一緒にいて少し慣れたようで、一言言い、スルーする。


「とりあえず、その一角兎ってヤツを探さねーと…」

辺りを見渡すも、姿は見えない。

臆病な魔物で、滅多に人間の前に姿を現さないのなら、2人の気配を感じ、もう既に逃げた後なのかもしれない。

「時間かかりそーだな」

「?見付けたよ」

「は?」

長期戦を覚悟するジュリアスに対し、あっさりと発見の報告をしてのけるルナマリア。


こっちこっちと手招きされ向かった先には、呑気に草を食べるピンクの一角兎の姿があった。


「マジでいたよ…」

一角兎に見つからないよう茂みの陰に隠れながら、本当に一瞬で見付けたルナマリアに最早、恐怖すらジュリアスは覚えた。


「何かね、一角兎も種類がいて、ピンクは一角兎の中では1番難易度が低いらしいよ」

低いと言っても、一角兎自体が高難易度なのだが、これよりも上がいて、黄金の一角兎が最高難易度らしい。

「良く知ってんな」

「思い出したからね」



ゲーム、《リアリテに舞い降りた聖女》のジュリアスルートで、ヒロインと2人で力を合わせて黄金の一角兎の髭を採取するイベントがあった。


(クソゲー過ぎて記憶が曖昧な上に、ジュリアスルートはトラウマが強いし、そもそもがそんな何年前のゲームの内容なんて事細かに覚えてないから、今まで思い出せなくても、仕方ないよね)


うんうん。と、自分を肯定する。

「ジュリアスなら、いつか黄金の一角兎の髭も、盗れるようになるよ」

「…俺が…?」

(ヒロインとね!)

心の中で呟くと、ルナマリアは杖を出し、以前と同じように、一角兎が逃げれないよう、結界をはった。



「応援してる。頑張って」

「ーー分かった」

笑顔でジュリアスを送り出すと、ルナマリアは魔法でポットとコップを取り出し、お茶を飲み始めた……。


「よし…!」

一角兎の前に出ると、気合いを入れる為に、拳を叩く。

結界を張ってくれているから、一角兎がこの場から逃げ出す事は無い。

何度でも何度でも、盗むチャレンジが出来る。


(俺は盗るーー!)


人から金目の物を盗った後に湧き出る罪悪感とは違う、達成感があって、こんなに前向きに、盗みを働ける事は、初めてでーー。


悪い事をする以外、生きる道が無いと思っていた俺に、初めて、悪い事をしなくても、生きていける道を示してくれた。


(感謝してる…!その期待に、俺は答えてみせる!)



「頑張れー」

強い決意を持って挑もうとしているジュリアスに反して、ルナマリアは完全リラックスモードで応援した。



「くそっ!」


聞いていた通り、普通の兎の魔物とは比べ物にならない程の素早い逃げ足。

時折、逃げる目的でこちらに攻撃もしてくるが、攻撃自体は強く無いし、直接的で、避けやすい。


「いってぇ…」

だが、戦闘に不慣れなジュリアスは、一角兎の使う雷の魔法を、何度も食らってしまう。

微量な威力なので、対した事は無いが、あと一歩の手が届かなくなる。

苦戦し、何度も挑むジュリアス。



(やっぱり初期設定が違うよね)

その傍ら、戦闘の様子をお茶を啜りながら見学しているルナマリアは、あと一歩まで追い付き、一角兎に攻撃をさせている事を感心した。


温厚な一角兎は、滅多に攻撃をしない。

逃げ足が早い事もあり、そのスピードで攻撃をしなくても逃げられるからだ。



(一角兎が攻撃してくるって事は、それだけ、一角兎は追い詰められているって事になる)


人間相手で培い、魔物相手に少し特訓を重ねたとは言え、こんなに早く盗賊(シーフ)としての能力が上がるとは……。


(流石ヒロインに選ばれたらヒロインと一緒に魔王を倒すメンバーの1人!初期設定がケタ違い!想像以上だね)


これだけ才能があれば、ヒロインと出会うリアリテ学園の入学条件は難無くクリア出来る。

フランと同じく、ジュリアスにもまた、ヒロインに選ばれれば、この世界(リアリテ)の滅亡を回避する為に、魔王を討伐して貰わないといけない!


(ルナがぐーたら生活する為にも、頑張って貰わなきゃ!)




「っ!くそ!ーーーあと少しだったのにっ!!!」

上手く雷の攻撃を避け、もう一歩まで追い込む。

ゼェゼェと息が荒くなり、汗が流れる。

(本来なら、こんなにチャレンジ出来ない……)






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