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「ちょっと、まずいわよ」
「くそ!覚えとけよ!」
住人達が近寄って来るのに気付くと、悪党パーティ達はそそくさと、絵に書いたような捨て台詞を吐いて退散した。
徐々に落ち着く、ランプの光。
「な、何なんだよ一体……」
ジュリアスも訳が分からないと困惑の表情を浮かべる中、1人、ルナマリアだけは、近くのランプに触れると、小さく、お礼の言葉を呟いた。
「ありがとう、ランロリア」
ルナマリアがこの街に会いに来たランプの精霊ランロリア。
ルナマリアだけは、ランロリアが自分を助ける為に、ランプを光らせてくれたのだと分かった。
返事をするように、ランプの光が揺らぐ。
「さ、行こうジュリアス」
「何の話だよ…」
何事も無かったように笑顔で手を差し出すルナマリアに、ジュリアスは怪訝な表情を浮かべた。
「私、一角兎の髭の採取の依頼を達成しようと思うの。手伝って」
「……パーティに誘おうと思ってたって話かよ……」
コクンと、ルナマリアは頷いた。
「あのなぁ…言いたい事は山ほどあるけどよ…とりあえず、一角兎の採取がクソ難しい事知らねぇのかよ!それを、俺と、お前で盗る?んなもん、無理に決まってんだろ!」
目の前で自分を勧誘するルナマリアは、自分と同じ位の年頃の、少女で、自分はーーー何の力も持たない、ただの、子供。
自分で自負してる。
「あいつ等もお前も、何で俺なんて勧誘してんだか。俺は、ただ街で盗みを働く小悪党だってのにーー」
「必要だからだよ」
即答するルナマリアを、ジュリアスはキッと睨みつけた。
「うるせぇ!馬鹿にすんな!俺が何も出来ねぇ子供だって事くらい!俺だって知ってんだよ!」
「?じゃあなんであの悪党アホパーティが勧誘にわざわざ来たの?」
悪党パーティから悪党アホパーティにルナマリアの中でLvupしている。
「んなもん知らねーよ!俺には!俺には、何の力もねーよ!この貧困街で産まれただけで!俺は人生の負け組なんだよ!俺はーー汚い事でもしなきゃ生きていけねーんだよ!!」
「しつこい」
「いってぇ!!」
スパーン。と、いつの間にか出した杖をかざし、ルナマリアは威力の低い魔法をジュリアスの頭にぶつけた。
「何すーーって、お前!魔法使い!?なのか…」
むすー。と、不機嫌な顔を浮かべながら、ルナマリアはジュリアスを見上げた。。
「いーい?ルナはさっきから本当の事しか言ってないの。話が進まないでしょ?話をちゃんと聞きなさい!」
小さな女の子が、まるで歳上のお姉さんのように、説教をする。
その姿に、ジュリアスは目を見開いた。
「ーーふ、あはははは!」
急に腹を抱えて笑い出すジュリアス。
「お前、変わってんな。子供のくせに」
「お前じゃないわ。私の名前はルナマリアよ」
一通り笑い終えた後、ジュリアスはルナマリアを見た。
(……さっきのマフィアの奴等に、良いようにこき使われるよりかはいいかーーー)
「俺はジュリアス……いいぜ。1度だけ、信じてやるよ」
何故か俺の可能性を信じて疑わない、このヘンテコな魔法使いを。
「ほんと?良かったぁー勧誘成功!」
「言っとくけど!本当に1度だけだからな!お前をーールナを信じた訳じゃねーからな!俺は俺を信じたんだ!!」
喜ぶルナマリアに対して、ジュリアスは顔を真っ赤に染めながら、反論した。
「分かった」
怒涛の反論を何も気にせず笑顔で受け止めると、ルナマリアは、さっ、行こう!と、背中を向ける。
一緒にそのままついて行こうとした所で、ジュリアスはある事に気付いた。
「ーーってかーールナ、俺の名前、最初から知ってたのか?」
自己紹介をする前から、名前を呼ばれていた。
「うん」
平然と頷くルナマリア。
「なんでーー?」
「何で?んーーー記憶にこびりついてたからかなぁ」
(強烈なトラウマとして…)
遠い目をするルナマリアに、ジュリアスは意味が分からんと、頭を捻った。
***
一角兎が出没するのは、ランプの街を出た、山の上。
「わー、高ーい」
ある程度まで登り、山から街を見下ろす。
「ルナ、落ちるなよ」
断崖絶壁の、落ちれば絶対に死ぬ高さにも関わらず、平然と身を乗り出すルナマリアに、ジュリアスは呆れながら忠告した。
「はーい」
気を取り直して、山登りを再開する。
道は意外と作られていて、まだ歩き易い。
「一角兎の髭は貴重だからな。取れるもんなら取って欲しいってのが街の奴等の本音だろ」
だからこそ、少しでも一角兎に続く道のりを行きやすくした。
「有難いねぇ」
トコトコとそのまま歩き続ける2人。
暫くして、ルナマリアはピタッと立ち止まった。
「おい、急にどうした?」
「魔物がいるよ」
ルナマリアの指さした方には、低Lvのただの兎の魔物が2体。
(こいつ…俺は全く気付かなかったのに…)
魔物を探知した。
「良く気付いたな」
「一応冒険者なんです、ルナ」
胸を張って自慢げに答えると、ルナは魔法で杖を出した。
「結界魔法」
兎の魔物に向かい、杖を構え、呪文を唱えると、白い光が魔物とルナマリア、ジュリアスの周りを包んだ。
「な?!?!何してんだ?!」
急に見た事も無い魔法に包まれ、驚きの声を上げるジュリアス。
「逃げられないようにしようと思って」
「逃、逃げられないように…って、何魔法だよコレ…すげぇな。こんな魔法使えんのか」
平然と息をするようにやってのけるルナマリアの魔法。
「この魔物もすばしっこいよね」
一角兎の姉妹種で、一角兎より素早くは無いが、そこそこのスピードを持ち、一角兎程高値で買取してくれないが、兎の髭もそこそこ売れる。




