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ジュリアスは黙り込んだまま、何も答えない。
(確か、ジュリアスは、貧困街出身だっけ)
ルナマリアは、ジュリアスのゲームでの設定を思い返した。
貧しい貧困街育ちで、生きる為に盗みを働き生活していて、その手癖の悪さに目を付けた悪党に勧誘され、そのまま悪の道に進む。
スリや暴力などで身に付けた盗賊としての素質を認められ、学園への入学を認められるーーー
(ーーーいやよく入学させたなこんな奴!!!)
ってツッコミは、クソゲー制作陣にお願いしたい。
「……」
ルナマリアは、ジュリアスをチラリと見た。
ボロボロな服に、痩せ細っている体。
貧困街出身っていうのは、ゲームの設定で知っていたけど、実際目の当たりにすると、過酷な中で幼少期を過ごしていたのだと理解する。
(でもだからといって、他人のお金を盗るのは駄目だよね)
「本当は、こんな事したくないんじゃないの?」
ジュリアスは、謝罪の言葉を口にし、今も、苦悩しているのが、表情で見て取れる。
「っ!お前に、何が分かる!俺等はーー生き延びる為には、悪い事しなきゃやってらんねぇんだよ!」
貧困街出身というだけで、差別し、雇って貰え無い。
綺麗事ばかり並べた説教なんて、彼にとっては耳障りなだけだった。
「ーーーどうして?そんな事しなくても、ジュリアスなら充分生きていけるよ」
「ーーは?」
何故悪い事しないと生き残れないの?と、不思議そうに、全然そんな事しなくても生きていけると、平然と答えるルナマリアの台詞に、ジュリアスはつい、呆気にとられた声を出した。
「いや、いい加減な事ばっか言うなよな!大体、お前みたいな子供が分かりきった事いいやがってーー」
「ジュリアスも子供じゃん」
ぎゃーぎゃーと怒鳴るジュリアスの声に、ルナマリアは耳を塞いだ。
「ーーおい!」
「「!」」
そんな言い争いをしている2人に、呼びかける声。
「あ、さっきの悪党パーティさん」
「あぁ?!しばくぞてめぇ?!優秀な冒険者だっつてんだろ!」
声をした方を振り向くと、そこには先程ギルドで難癖をつけてきた、ルナマリア命名悪党パーティ一行。
「はい。存じてます」
何故か自信満々に答えるルナマリア。
悪党の才能があると捉えた上での命名であり、それが彼等の言う優秀の正解だと信じて疑っていない。
「もーいいじゃない、そんな小娘ほっときましょうよ。小娘に用は無いんだから」
悪党パーティの一味、魔法使いのお姉さんが、怒っている剣士を宥めるよう声をかけた。
「ーちっ。まぁいい。おい、お前!」
悪党パーティが用があるのはジュリアスらしく、彼はジュリアスを指さした。
「お前に用がある。こっち来い」
「……何の用だよおっさん」
睨み付けながら尋ねる。
「口の聞き方に気をつけろガキ。いいのか?俺等は、この辺を牛耳るマフィアの一員だぜ?」
「!」
マフィアの単語に、ジュリアスの顔色が変わる。
「マフィアの一員はギルドに顔出しとかするのNGですよー」
2人の間から口を出すルナマリア。
「俺等の仲間になれ。なぁに、悪いようにはしねぇさ。金だってくれてやるよ」
「……金……!」
「ああ。貧困街には仲間がいるだろ?そいつ等の為にも、金が必要だろ?」
ジュリアスは、考え込むように、下を向いた。
「うわ!いかにも悪党!って感じですねー」
「うっせぇなさっきから!いちいち横やりいれてくんじゃねぇ!」
1回目はスルーしたが、2回目は我慢出来なかったようだ。
ルナマリアに向かい再度怒鳴りつける。
「だって困るんですよー」
そう言うと、ルナマリアは俯いているジュリアスの前に立った。
「私が彼をパーティに誘おうと思っていたのに」
「!お前ーー」
ジュリアスは俯いていた顔をばっと上げた。
「ああ?ふざけてんのか」
武闘家の男も、ルナマリアの言動に、拳をパキパキと鳴らし始め、魔法使いも、杖を構えた。
「ねぇ、綺麗な顔してるし、こいつ売っちゃいましょうよ」
僧侶が名案のように言う。
「そりゃ良い!少し位痛い目に合わせても構わねぇ。捕まえるぞ」
「人身売買は禁止ですよー」
禁止事項のオンパレードですねーと、険悪な雰囲気なのにも関わらず、ルナマリアの様子は変わらない。
そんなルナマリアの態度に、悪党パーティ達の苛苛は募るばかりで、剣士は剣を抜き、そのまま、ルナマリアに向かった。
「怒っちゃった…」
「おい!何ボーっとしてんだ!早く逃げーー」
ジュリアスがルナマリアの腕を掴んだ瞬間ーーー
ピカッーーーーー!!!!!!
路地に設置されていたランプが、一切に強い光を放つ。
「!何だこれ!急にどーなってやがんだ!」
眩しくて、目が開けられない程の光に、剣士は動きを止め、腕で目を隠しす。
「ねー!こっち、凄いランプ光ってるよー!」
「ほんとだわ。何かしら?」
一通りの少ない路地の急なランプの発光に、気付いた街の住人が、ざわざわと集まって来るのが聞こえた。




