おまけ 2
『なら何故その魔物が怪我をした?!その魔物は、温厚で攻撃等仕掛けない!お前の方から手を出したに他ならない!』
「えー…」
攻撃なんて仕掛けて無いし。何なら怪我を治したのに。突然の言いがかりに不満しか無い。
尚も攻撃を仕掛けて来ようとする魔王に(仕方無く)応戦する為、ルナマリアは杖をかざした。魔王は強い。ラスボスなんだから当然。
いつも飄々と敵を倒しているルナマリアだが、今回ばかりは、内心、冷や汗をかいた。
(強い…!私一人で勝てるかな……?てか、何で私がこんな所で魔王と敵対しなきゃならないの?!何?もしかして、私はこんな所で死んでいく運命のモブキャラだった?)
自身の名前のキャラがゲームに存在していないので、ルナマリアは最近、ゲーム内で自分はモブキャラだと認識していた。
『死ね』
本音全く戦いたくないルナマリアを他所に、魔王は次の攻撃魔法をルナマリアに放った。
「ーールナマリア!」
その魔法がルナマリアに到着する前に、光を宿した剣で、魔法を打ち破る。
「フラン!」
「大丈夫か?怪我は無いか?」
「うん。ありがとう」
『援軍か……小癪な』
キィンッッッツツツ!!!金属音が激しく鳴る。
魔王に向けたジュリアスの短剣が、魔王の剣によって軽く防がれた。
そう。魔王は魔法だけじゃなくて、剣も使える。剣技の腕も確かで、大変強い。
「ちっ!」
ジュリアスは舌打ちすると、素早いスピードで距離を取った。本能的に、これ以上攻め込むのは危険と判断したのだろう。
「ジュリアス!」
「ルナに怪我1つ負わせたら許さねぇ…!」
「ルナマリア、ご無事ですか?」
「レン」
隣に来たレンは、心配そうに、ルナマリアに怪我が無いかを確認した。
「私は大丈夫だよ」
「そうみたいですね、良かったです」
手には錬金術で作った薬が握られていて、怪我をしていたら治療してくれるつもりだった事が伺える。良かった。ゲームの中のレンなら、駆け寄るどころか、距離をとってうんちくを垂れるだけに違いない。少しは成長されてる様で良かった!
『次から次へとーー人間共が、有象無象に湧き出て来るなーー!!』
お怒りの魔王様は、今度は一際大きい魔法を使おうと、手に魔力を集め出した。
この場にいる実力者達なら、一目で分かる。使おうとしている魔法が、とても、強烈である事。
(私の守護の魔法でーー!!)
杖を構え、一応、全員に守護の魔法をかけたが、心許無い。それ程、魔王は強いのだ。
(こんな所で、攻略対象達を殺させる訳にはいかないーー!ヨウナと一緒に、世界を救って貰わなきゃいけないんだから!)
更に、攻撃の魔法で応戦しようと、ルナマリアは杖を構えた。
「?!グリフォン、そこを退いて!」
ビュンッ!と、風を切る音と共に、グリフォンがルナマリアの前に降り立った。
「ルナマリア!大丈夫?!」
「瑞月!グリフォンを退けて!」
このままでは、魔王の攻撃がグリフォンに直撃してしまう。
「グリフォンが勝手に行ったんだ!グリフォン!退いて!危ないから!」
魔物使は本来、調教を使えば、強制的に命令を聞かせる事も出来るが、瑞月はそれを望まず、対話による信頼関係で、魔物達を従えていた。
「グリフォン!」
『キュル、キュル!』
昔、瑞月とグリフォンは、ルナマリアに救われた。グリフォンは、その恩を忘れていなかった。
「止めて!お願い、退いて!」
今から瑞月が調教しても、もう間に合わない。
(嫌だーーー!!!!)
ルナマリアはギュッと目をつぶったーーーが、思っていた衝撃は来なかった。
「あ、れ?」
目を開けて魔王の方を見ると、そこには、いつの間にかルナマリアの元からいなくなっていたパンダの魔物を抱っこしている魔王の姿があった。
『キュイ!キュイー!!』
パンダの魔物は、魔王の腕の中で、何かを訴えている様に鳴いた。
『…………そうか。すまない』
パンダの魔物が何を言ったのかは分からないが、先程までの殺気が、魔王からは消えていた。
『そこの人間』
「私?」
『我の部下を癒してくれたそうだな、礼を言う。そしてすまなかった』
どうやら、誤解を解いてくれた様で、素直に謝られ、お礼を言われた。
「いや、謝罪で許せるか?!こっちは下手すれば死んでいたかもしれないんだぞ?!もしくは大怪我だ!」
フランが大きな声でツッコミを入れた。
でも分かるよ。それはそう。最悪マジで死んでた。最初の攻撃だけで、私が守護の魔法使うのちょっとでも遅れてたら、瀕死だよ。
『深く反省している。まさか人間に、魔物の怪我を治す奴がいるなんて思いもしなかったんだ』
「君は人間が嫌いみたいだが、人間も、魔物を嫌うのは仕方無い事だ。魔物の多くは、人を襲う」
大多数の魔物は、人を襲ったり、街を壊す。家族や仲間、自分が傷付けられたり、生活を壊された人達からすれば、魔物は憎悪の対象になる。
フランもまた、ルナマリアが設定を変えなければ、自分の故郷を滅ぼされた魔物を恨み、根絶やしにしようとしていた。
『全ての魔物がそうは無い』
「それは……そうだが」




